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ウーサー=キングス天狗の鼻が折れる

 余りに鮮やかなウサギさん達の手並みに、唖然としているのは最上級のギフトを受け取った女の子二人だった。


「前より強くなってない?」


「ウ、ウサギってこんなに戦えるんですね。私達いらないんじゃ?」


「……そんなことないよ? ウサギさんも頑張るけどよろしく」


「任せてよ!」


「わ、わかりました……」


 若干どや顔だったことは、否定できないボクである。


 この二人からのこの評価はとてもうれしい。


 さてこのパーティの実力はどのくらいのものか、期待感は大きいが、自分達がまだ子供だということは忘れてはいけないと思う。


 今回は低層を軽く巡って、ギフトの成長が可能か否かその辺りの検証をメインにするべきだろう。


 そのくらいに考えていた。


 ただ軽い気持ちでオファーを出したボクらのパーティはしかし、少々予想以上だった。




 とある部屋で、本日最大記録のボアの突進を正面から受け止めたのは、剣聖サリアちゃんだった。


 盾から発生した光の壁は、自分の体よりはるかに巨大なボアの攻撃を受けても一ミリだって後退しない。


 それどころか力任せに押し返してはじき返す。


「―――シッ!」


 更に剣を構え、駆けだしたと思ったらいつの間にかボアは真っ二つだ。


 その間守りが薄くなり、迫っていたアリのようなモンスターを、ウサギさん達は何とかしようとしたのだが―――そんな暇は一切なかった。


 返す刃で一撃。

 

 明らかに剣の刃渡りよりも広い範囲のモンスターが切り裂かれて、押し返す。


 モンスターの突撃部隊はたった一太刀で全滅である。


「よし! こっち終わった! まだ奥にいる!」


 そんなサリアちゃんの叫びで、ウサギさん達は陣形を立て直した。


 アリ達は、言葉通りに奥からぞろぞろと湧いて出てきていてガチガチと顎の音が迫って来ている。


 しかしすでに時間は十分に稼がれていた。


 きっちりと、言った通りの時間でパーティーの大砲はやるべきことをやり終えていた。


「……詠唱終わりました。行きます」


「よし! 引く!」


 瞬間、吹き荒れた吹雪がすべてのアリを凍てつかせた。


 一瞬で氷塊になった敵モンスターを確認して、サリアちゃんとリーナさんはパンと手を合わせた。


「すごい威力だ! さすがは大魔導士だね!」


「……す、すごいです! 本当に時間を稼いじゃうなんて! 普通なら絶対撤退でした!」


 笑いあう二人はだいぶん打ち解けてきたようだった。


 これはウサギさん達の力か、いや、それ以外でもウサギさん達の活躍は計り知れないのだけれども……でも、残念ながらウサギさん達はダンジョン内でとても優れた戦闘能力を発揮できるわけではないらしい。


 見敵必殺。


 ウサギさんではもう完全に剣聖の初動についていけませんでした。


 そして大魔導士の魔法の威力はちょっとプチではどうしようもありませんでした。


 敵を見つけて来たというのに、戦闘に一切参加する暇もなかったウサギさん達は後で励ますとして、頼もしすぎる最上級ランクギフト持ちは、子供でもとんでもなかったです。


 いや、子供だからこそ3日も会わなければ別人レベルの成長速度で、ウーサー君は商人だなって思いました。


「……頼もしすぎる」


 というわけで、ほとんど何もすることがなく観光みたいにぶらぶらとダンジョンを進む。


 ウーサー=キングス、この日初めてウサギさんの限界を感じた、ほろ苦い一幕である。


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