ウーサー=キングスとニンジンの秘密
この町に真の期待のホープ大魔導士が生まれた。
その活躍は、町の噂でも伝え聞いていたが、一番それを実感するのは、この表記だろう。
ウサギ(プチ魔法使い)
「プチ魔法使い」
我がうさキングの書の中に魔法使いはこうして生まれた。
ボクは喜び、相応の準備を整えて魔法使いウサギさんを召喚した。
現れたウサギさんに、大急ぎで仕立てたウサギ用魔法杖に大きなつばの帽子とマントをかぶせれば魔法使いウサギさんは完成である。
「……おー」
まさに魔法使い。さすがはママン。いい仕事である。
一目で魔法使いだとわかるこの姿はぜひ保存しておきたい。
ボクは魔法も見てみたいなとさっそく庭に的を用意して魔法使いウサギさんに試し打ちをさせてみることにした。
「……炎を」
魔法使いと言えばという感じでリクエストすると、ウサギさんは杖を構えて口をもごもごと動かしている。
え? しゃべってる? いや、声は出てないみたいだ、かわいい。
しかし音が出ずとも呪文は作用しているようで、手のひらサイズの炎の玉がポコンと生まれた。
「……おー」
極めてとろ火だ。
プチだからだろうな。これはキッチンで役立ちそうだ。
なにちゃんと魔法だっただけ素晴らしい。
ボクには出来ないことをウサギさんは習得して見せたのだから、世界の理に反逆するような成果だと思う。
心なしか魔法使いウサギさんも、得意げな表情をしていた。
「……プチがとれるように頑張ってみて」
そう言うと、気にしていたのかショックを受けていた。ゴメン。
でも是非とも頑張って欲しいから、応援したいところだった。
ボクはねぎらえないかと考える。そしてウサギさんが好きなものを思い出した。
「……そうだ。あのニンジンも試しておかないと」
うさショップからから出てきた黄金のニンジンは明らかに呼び出したウサギさん達の注意を引いていた。
わざわざポイントを消費して出てきたのだから何かあるとは感じていたが、まだ試していなかったんだった。
ボクはとっておいたゴールドニンジンをウサギさんに差し出してみた。
ピスピスと鼻を動かし、魔法使いウサギさんはシャクリとニンジンに食いつく。
「……! 食べた!」
しかしそれはボクにとって衝撃だった。
おいしそうに食べてる。それが見てわかると言うのが実にいい。
ボクの能力で出てきたウサギさんたちは基本的に食事を必要としない。
そしてニンジンを食べたウサギさんには変化が起きた。
全身の毛が金属化していた。
しかもゴールデンである。
「……育った?」
というわけではないだろう。
ボクは慌てて魔法使いウサギさんの項目を見ると、その文字は金色に光っていた。
「……ニンジンブースト中?」
そしてその横には、カウントダウンする数字がある。
時間にして一分あるそれは、どんどん数を減らしているらしい。
これはまさか? ボクは再び魔法使いウサギさんに命じた。
「……炎を出して」
魔法使いウサギさんは再び魔法を行使する。
しかし明らかに、炎が大きい。
勢いも最初の比ではなく、飛び出した炎の塊は火柱になって的を燃やしてしまった。
「……」
家のウサギさん……すんごい。
ボクは腰を抜かしかけたが、それよりも喜びが勝っていた。
どうやらあの金色のニンジンを与えることで一時的にパワーアップすることが出来るようだ。
ニンジンパワー恐るべし。そういえば昔から体にいいと教えてもらっていた気がしたが、まさかここまでとは思わなかった。
「……よし。今度からニンジンは残さず食べよう」
ウーサー=キングス、好き嫌いが一つ消えた今日はニンジン記念日である。




