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ウーサー=キングスとコックの冒険者

 ボクはさっそく厨房に行ってフジさんという人を探してみた。


 腕にウサギさんを抱えて、我が家を散策すること数分。


 ウサギさんがヒクヒクと鼻を動かす方向へ歩いてゆくと、目的の人物はコックらしく厨房で料理をしていた。


「おや、ぼっちゃん。どうしました?」


 フジさんは、白髪の髪を後ろで縛った髭のナイスミドルだった。


 しかし元冒険者と言われると確かに体格もいいし、凄味があるようにも感じる。


 しかし気後れしていても仕方がない。ボクはふんわり触感のウサギさんに勇気をもらいフジさんに話しかけた。


「……実は頼みたいことがあって」


「ほう……おやつのリクエストですかな?」


「……そうではなく。武器の使い方を教えて欲しいんだ」


「ふむ?」


 ボクはかくかくしかじか事情を説明した。


 まぁウサギさんに戦い方を教えて欲しいなんて言うのは普通ではないお願いである。


 そう言う意味では、雇用関係にあるフジさんは適役にも思えた。


 自分の髭を触り、ウサギさんを覗き込んだフジさんは、ニカリと笑って今度はボクの頭を撫でた。


「なるほど。面白い話ですな。ウサギたちには私達も助けてもらっていますから。協力しますよ」


「……ありがとう。ウサギさん触らせてあげます」


「そうですか? ならば遠慮なく」


 武骨な手をソフトタッチに包み込む毛皮と、気持ちよさそうに目を細めるウサギさんのコンボは最強だ。


 フワフワフォームのウサギさんは、何人も虜にしてしまえる極上の触り心地である。




「ふむ。では剣から」


 ヒュンヒュンと手慣れた様子で剣を振るフジさんに、ボクは目を丸くした。


 年齢をまるで感じさせない動きのキレは一種の美しささえ感じた。


 集まってきたウサギさんたちも、彼の剣技をジッと見つめてピンと二本足で立ったまま直立不動だった。


「そんなに見られては緊張しますな。ホッ!」


 ザザンと一撃で、丸太の的を半ばから切り裂くフジさんの剣技は、玄人のそれだ。


「……おー」


 そのあまりの鮮やかさにボクも拍手。素人のボクですら普通とは違うとわかった見事なお手本だった。


「武器も剣以外も一通り、まぁ使い方くらいは教えられますわい」


「……すごい」


「まぁ昔取った杵柄ですよ」


 正直思ったよりも達人だった。


 ついでにボクも見学させてもらって、今まであまり興味がなかった武技についても興味が出てしまったほどに、フジさんの技能は卓越していたと思う。


 そしてそんなフジさんにボクのウサギ達は、高評価をいただけたようだった。


「ふむ。ウサギと言えど、筋がいい。いつもの仕事ぶりを見ていると力もあるようですし、ぼっちゃんは良いギフトを与えられたのかもしれませんな」


「……最高のギフトですよ?」


「そうですか。うむ、確かにその通りだ。ならばこちらも気を引き締めねばなりませんな」


 張り切ったフジさんはハッキリ言って教え方もうまかった。


 一通り武器の扱いを見てもらったウサギさんたちは明らかに、動きに軸のようなものが出来たようにも見える。


 これで料理までうまいと言うのだからどんだけだよっとボクは戦慄を覚えた。


 これは撫でるだけじゃなくて、別の報酬も考えた方がいいかもしれない。


 秘蔵のカフェメニュー。ウサギカフェ特製生クリームたっぷりウサギさんドーナツレシピなんてどうだろう?


 人間為せば成るものだと、驚きを覚えたウーサー=キングス驚きの一日である。


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[良い点] 鳥獣戯画めいてベネ
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