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とある有名な暗黒騎士

 暗黒騎士ザイン。


 この町で唯一の暗黒騎士である彼は、その実力と共に恐れられている、高名な冒険者である。


「……ザインだ」


「すげぇオーラだな……近くにいるだけでビビっちまう」


 闇の神のギフトにより、纏う漆黒のオーラの前では、生半可な覚悟では、彼の前に立つ事さえ出来ない。


 そんな彼がギルドに姿を見せるだけで、冒険者たちはざわつく。


 しかし今日は、そのどよめきはいつもと少し違っていた。


 なぜなら彼の後ろには、妙にかわいいウサギが一匹付き従っていたからである。


「アレは何だ? かわいいな」


「リュック背負ってるぞ……かわいいな」


「普通のウサギとちょっと違うよな?……かわいいな」


 確かにかわいい。


 しかしウサギが抱えているものは全然かわいい物ではなかった。


 暗黒騎士以上に禍々しいオーラを放つ、角の欠片。


 それを受付のカウンターに置くと、ザインは言った。


「ダークドラゴンの討伐部位だ。クエスト終了の受理を頼む」


「は、はい! ザイン様! 今すぐ査定させていただきます!」


 受付嬢は、暗黒騎士の放つオーラに気おされながらもすぐに仕事に取り掛かっていた。


 ひそひそと飛び交う声の中では様々な憶測が飛び交う。


「やっぱり……生贄とかじゃないか?」


「なにそれかわいそう」


「非常食って可能性もある」


「なにそれかわいそう」


 何にしても暗黒騎士とウサギの組み合わせは、可哀そうな結末しか連想させなかった。


 受付嬢も同じようで、待ち時間の間やはり気になるのはカウンターに手をかけて、ぶら下がっているウサギだった。


「あ、あの……そのウサギさんは一体どういう?」


 よく聞いた! 冒険者ギルド内の人間の心は一つになった。


 すると暗黒騎士は、ウサギの頭を撫で得意げに答えていた。


「この子は……私の相棒だよ」


「あ、相棒ですか?」


「ああ。とても頼りになる相棒だ」


 なんだそれ!? どういうこと?


 ギルドの半分くらいはそう思った。


 そして相棒の後に括弧でなにか別の読み方が入るんじゃないかと疑う。


 そして半分くらいがかわいいから癒し枠かなとも。


 混乱するギルドに、新たな冒険者が入って来た。


 三人組の冒険者は、『暁の風』。


 実力派の冒険者で数々の難しいクエストをこなしている彼らもまた、なぜかウサギを連れていたのだ。


 お前らもかよ!?


 声にこそ出さなかったが、集まる視線がこの驚きを雄弁に語っていた。 


 混乱は続く。


 ただちょっとだけ、彼らは暗黒騎士よりも威圧感はなかった。


「ウサギ流行ってるのかな……」


「結構荷物持ってるな……聞いてみるか?」


「ザインには聞けないが……あいつらにならまぁ少しは」


 ツッコミよりも、好奇心が勝れば動くものも出てくる。


 偶然の一手が、思わぬ効果的な一手になることもある。


 そんなことは全く思っても見ないウーサー=キングスあずかり知らぬ一幕である。


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