94:メーグリニアへの対処
本日は5話更新となります。
こちらは一話目です。
「それで? メーグリニアを見つけたのはいいが、これからどうするんだ?」
「そうですね……相手が深さ500メートル近い深海に居ることを考えると、通常兵器ではまず届きません。なので、地上まで誘い出すか、引きずり出すか、潜って対処をするかの三択にはなるでしょう」
ジョハリスとメモクシの連絡を受けたらしく、『クールコカトリス』以外の船が動き出しているようだ。
本体がメーグリニアの監視に専念しているので、横目でチラリと見るぐらいだが、メーグリニアが居る深海から飛び出せそうな位置の空中、そこを狙い打てるように軍艦が動いているように思える。
なお、空中から深海にまで攻撃を届かせる兵器自体は存在しているらしい。
ただ、そのような兵器は深海に作られた犯罪組織のアジトを破壊するだとか、大きな建造物を破壊するためのものであり、人間サイズの生物を狙い撃てるようなものではない。
また、命中させる事が出来ても、仕留めたかどうかの確認が難しく、確実な殺害を狙いたい現状ではあまり使いたい手段ではないようだ。
「潜っては無いだろ。潜水艦の類じゃ返り討ちにあうだけだ」
「ええ、自分でもないと思います。そもそもフラレタンボ星系はSwの都合で潜水艦の運用が難しいと聞いていますし……」
「準備、要るか?」
「……。しておいてください、サタ」
「分かった」
となると、まずは空中まで引きずり出さないといけない訳だが……良い手段が参加部隊から出てこないようなら、俺が対処するしかないか。
と言うわけで、俺はメーグリニアの監視を続けつつも、深海仕様に人形の改造を施していく。
そうは言っても、人形が使う環境安定modやシールドmodの出力や範囲、やり方などを弄って、深海でも問題なく動けるようにしていくだけだが。
「ヴィー様。やはりメーグリニアを海上にまで引きずり出す手段が思いつかないようです」
「そうですか。引きずり出した後については?」
「メインプランは待機している艦砲による一斉射撃。それで駄目ならば衛星砲などの大気圏外用装備を使うようです。ただ、大気圏外用装備については、出来るだけ使用は控えたいようですね」
「それは当然の反応ですね。大気圏内で使うには影響が大きすぎるからこその、大気圏外用装備なわけですから」
メモクシがヴィリジアニラに報告を挙げる。
なるほど、深海から海上にまで持ち上げれば、俺の本体であってもただでは済まない火力を浴びせられる。
海上から大気圏外まで持っていければ、撃てる攻撃は更に強力なものに出来る、と。
やはり問題はどうやって深海に居るメーグリニアに仕掛けるか、だな。
一応、待てばメーグリニアは海上に上がってくるだろうと誰もが思ってはいる。
が、それは行動の主導権をメーグリニアに渡した形での戦闘開始になる。
相手が強力な念動力を使える宇宙怪獣であることを考えると、先手を譲るのはリスキー以外の何ものでもなく、碌なことにならないのは確実だろう。
少なくとも帝国軍の宇宙船が一隻落とされるくらいは覚悟するべきだろう。
「ヴィー。俺の準備は完了した。後、とっておきについては、大気圏外でも駄目だった時に使おう」
「分かりました。覚えておきます」
であれば、やはり最善はこちらから仕掛ける事。
そして、その仕掛け方は相手に悟られないように奇襲するのが正しい。
俺ならば……うん、出来るな。
「サタ。四つのプランに分けて考えましょう」
「具体的には?」
「1、奇襲からそのまま仕留める。これで終われば何も言う事はありません」
ヴィリジアニラがプランを提示し始めると同時に、メモクシとジョハリスが各所への連絡を始めている。
根回しをしてくれるようだ。
「2、奇襲で仕留めきれなかった場合には、メーグリニアを海上に引きずり出すことを優先してください。手段は問いません」
「分かった」
「3、艦砲射撃で駄目だった場合には、大気圏外にまで無理やり押し上げてください。この場合、『クールコカトリス』も『パンプキンウィッチ』に戻して、囮になります。メーグリニアの執着を考えれば、他の船よりも追って来る可能性は高いと思います」
「出来れば2で終わってほしい話だな」
「そうですね。ですが、4、大気圏外装備でも駄目だった場合には、可能な限り惑星フラレタンボ1から離した上でとっておきを撃ちましょう」
「だな」
四つのプランと言うか、段階と言うか……見方によっては戦力の逐次投入にも見えてしまうが、その前段階では使えない武器を使って撃滅しますという話だからな。
他に方法なんてない。
なお、どの段階でもメーグリニアを引きずり出したり、無理やり押し上げるのは俺の役目である。
まあ、人間サイズの宇宙怪獣とやり合うための武器なんて、持っている方がおかしいからな、俺の役割が多くなるのは当然の話だ。
「ヴィー様、サタ様。了承得られました。トリガーもメモが預かりましたので、何時でも合わせられます」
「ありがとう、メモ。では、サタ」
「ああ、仕掛けるとしよう」
なんにせよプランは決まった。
準備も船、人形の俺、本体の俺、いずれも整っている。
メーグリニアは未だにその場に留まっていて、エーテルスペースに居る俺に気づいた様子は見られない。
時間はもう直ぐ夕暮れ時で、出来るだけ早く仕掛けてしまった方がいいだろう。
「さて……」
人形の俺は軽い柔軟運動と、これからする動きのシミュレートを始める。
「フラレタンボ星系を落ち着いて観光するためにも、此処で仕留める」
そして、ファイティングポーズを取り、腕を動かしながら……。
「作戦開始!」
転移。
「くたばれ」
「!?」
からの、両腕の中に仕込んだチタンスティックを全力で伸ばした一撃をメーグリニアの頭部と胸部に向かって放つ。
「だ……」
その一撃は予想通りにシールドによって弾かれ、メーグリニアは俺を認識する。
俺を認識したメーグリニアは俺に向かって念動力を放とうとし……。
「くたばれと言ったが?」
「れぎゅ……!!?」
直後、体を挟み込むように放たれた四連、不可視の衝撃によって全身を押し潰された。
11/17誤字訂正




