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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
2:グログロベータ星系

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43:動き回る囮

「さて、どうしましょうか……」

 グログロベータ星系内では現在何者かが蠢いているのは間違いない。

 なので、警察をはじめとした治安維持機関、貴族と議員と官僚からなる統治機関、諜報部隊も含む帝国軍、なんなら影響を受けるからと各企業や、稼ぎどころだと言わんばかりに傭兵も動いていて、それぞれが全力で事に当たり、事態の解決に向かって奔走しているはずだ。

 なお、船頭多くして船山に登る、なんて言葉があるので、そうはならないように誰かお偉いさん……まあ、ほぼ間違いなくグログロベータ星系を統治している家の貴族の当主が過労死するんじゃないかと言う勢いで働きづめになっている事だろう。

 お労しいとはこのことだ。


「囮役としてどこに向かうのが良いか、だっけか?」

「ええそうです」

 さて、俺たちの状況だ。

 俺たち……と言うか、ヴィーに求められているのは、その目立つ容姿を生かした囮役だ。

 護衛とメイドロボをそれぞれ一人ずつ連れているだけの貴族のお嬢様なんて、怪しい企てを考える連中の中でも浅い連中にはとても良い餌に見えている事だろう。

 現に第一プライマルコロニーの内部でも何件か捕り物があったと聞いているので、その有効性は証明されていると言っていい。


 だが、囮も同じ場所に居続けては効果が薄れるし、囮が動くことによってまた別の効果が生まれることもある。

 なので、現在ヴィリジアニラは第一プライマルコロニーから日帰りまたは一泊二日程度の日程で、グログロベータ星系のどこかへ視察を向かうべく、候補地が並べられた画面の前で唸っているのだった。


「企業コロニー、他のプライマルコロニー、小惑星帯農場、惑星グログロベータ2以降を衛星軌道から観光ってのもあるのか」

「どれも一長一短ある選択肢です。なのでメモはヴィー様の選択に従います」

「俺もだな。何処へ行っても楽しめそうだし、何か起きたなら対処するだけだ」

「ありがとうございます」

 候補地は……大きな括りだと四つだが、細かく見ていくなら30を余裕で超える候補がある事になる。

 まあ当然だな。

 プライマルコロニーは第一だけでなく第二から第八まであるし、惑星もグログロベータ1から4まであるのは先述の通り。

 企業コロニーは誘いを出している企業だけでも10を超えていて、普通に申請を出せば入れるものも含めればここだけで30を超える。

 小惑星帯農場に至っては……見方によっては100を超えるな、これ。


「そうですね。まず他のプライマルコロニーと惑星は除いてしまいましょう。こちらとそこまで差が無いようですし、差が認識できるほどの知識があると周囲から思われてもいないでしょう。となれば、私たちの役目を果たせるかは怪しいものがある」

「ふむふむ」

「となると企業コロニーか小惑星帯農場ですが……後者は個人経営も多いようですし、私たちのようなものが急に訪れても相手を困らせるだけですね。少し気になる感じもありますが、今回は遠慮しておきましょう」

「かしこまりました」

 ちなみに小惑星帯農場と言うのは、ロケットコーンの農場のように小惑星の表面で特殊な植物を栽培している場合もあれば、大きめの小惑星の内部をくり抜いて小型の農場コロニーとして運用している場合もある。

 前者も後者も企業が関わっていない訳ではないが……それでも個人で農業をしている場合もあるので、確かに俺たちみたいなのが訪れても困るだけだろうなぁ……。


「では企業コロニーですね。ヴィー様、どちらを選びますか?」

「そうですね……」

「あー、流石に例の混乱中の企業コロニーは無しで頼むぞ。対処は出来るだろうが、不要なリスクは負いたくない」

「私もそこは選ばないので大丈夫です。混乱中と言えど企業コロニーの管理と統治は企業側の権利で、企業の側が混乱を抑えられないと泣きつくにしても相手は当該星系の統治機構でしょう。私たちが関わっても混乱を助長するだけですから」

 企業コロニーは企業が様々な利用から建築し、管理運用しているコロニーのことだ。

 サイズ、位置、内部事情などについては……管理している企業の実力、所属している星系との関係性、企業の業務内容次第だな。

 ただ、犯罪行為が関わらない限りは企業の私有地として、企業の方に統治、管理、運用する権利があるのは帝国法によって保障されているので、場所や企業によっては独自のルールが敷かれていることもある。


 余談だが、俺が生まれたセイリョー社の企業コロニーは星系間領域と言う、どこの星系にも属さない宙域で、グログロベータ星系の第一プライマルコロニーよりも大きなコロニーを管理運営していた。

 セイリョー社がどれだけ巨大で、強大なのかがよく分かる話である。


「……」

 ヴィリジアニラは真剣な目で画面を見つめている。

 もしかして例の未来予測をしているのだろうか?

 ヴィリジアニラの頭にならどの企業がどこに在って、どんな事業を行っていて、これまでに何をしてきたのかは頭に入っていてもおかしくはないし、それらを統合すれば……今の状況から場を動かすならどこに行けばいいのかを本能的に見ることが出来るのかもしれない。


「決めました。こちらに行きましょう」

「トリティカムファクトリーですね」

「ええ。私の目はこの企業に向かうのが最善であると告げました」

「分かった。じゃあ、準備をしよう」

 そうして選ばれたのはトリティカムファクトリー・グログロベータ星系支部の企業コロニー。

 トリティカムファクトリーは小麦の栽培から加工まで行うバニラ宇宙帝国でも屈指の企業。

 その企業コロニーという事は、惑星グログロベータ1で収穫された大量の小麦を加工する一大工場コロニーという事になる。

 場所は……此処、第一プライマルコロニーから定期便が毎日数本出ていて、片道一時間程度で着くようだ。

 とりあえず俺が確認できる限りでは評判は上々で、正しく大企業らしい大企業のようだ。


 まあそれでも、現状では何があるか分からない以上、必要であろう準備はしっかりとしていかないとな。

なお、ヴィリジアニラが『ツメバケイ号』に乗ると決めた時も似たような流れで決めた模様。

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― 新着の感想 ―
[一言] どういう意味での最善なのかって感じがあるよね。 解決できていい方向に向かう困難を選択できるという意味ではかなり良いスキルかも。
[一言] つまりわざわざ騒動に巻き込まれに行ってると。 この面子なら危険はないのでしょうが、護衛対象としては問題だらけですねw
[一言] ヴィー様の目と直感により、次の目的地が決定!さて何が起きる!?
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