319:エピローグ
本日は二話更新になっています。
こちらは二話目です。
帝国歴2590年。
バニラ宇宙帝国から独立する形で、エーテル宇宙王国が成立する。
エーテル宇宙王国はバニラ宇宙帝国とは異なるOSが敷かれた国であり、拡大が停滞していたバニラ宇宙帝国を尻目に、新たな星系を順調に開拓し広がっていく。
OSが異なるが故に見つかる新たな物質、新たな生命、新たな文化、それらはエーテル宇宙王国の発展を支えるのに欠かせないものとなっていく。
そして、それは停滞していたバニラ宇宙帝国に新たな風を吹き込む事にもなった。
そのため、二国の仲は良好であり続け、人と物の行き来が絶えることは無く、お互いに栄えていく事となった。
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「と言うのが、何時までも続けば望ましいわけだが……まあ、お前もいい加減、人間社会に馴染んで長いから、予想は付くだろ?」
「非常に不本意ながらな」
今は帝国歴2900年……とちょっとぐらいだったか。
エーテル宇宙王国の成立から300年以上経って、色々と落ち着いてきたので、俺は帝星バニラシドへとやってきている。
「結局帝国はフナカの芽を潰し切れなかったわけか。いや、お前が潰し切る事を許さなかったと言うべきか。チラリズム」
「この件に関しては俺は何もやっていない。何もやらなくても潰し切れないのは知っていたし、潰し切れてしまったら、それこそ世界が終わる案件だからな」
ヴィリジアニラは居ない。
200年前に亡くなっている。
こればかりは、普通の人間と宇宙怪獣である以上は仕方がないことだ。
子供と言うか、子孫たちはエーテル宇宙王国を立派に治めているのだから、それで良しとするべきだろう。
「はぁ……動乱の時代か」
「そうなるな。バニラ宇宙帝国の神も、直に俺から代替わりする予定だ。マトモだったら、仲良くしてやってくれ」
俺はメモクシが淹れてくれたお茶を一口飲んでから溜息を零す。
と同時に、この300年で見つかった、他の宇宙進出を成功させた上に異なるOSを得た国々を思い出す。
その中には好戦的なだけでなく独善的だったり、暴力的だったりする国家もある。
なので、この先の宇宙はどうあっても荒れる事だろう。
「マトモだったらな。マトモじゃなかったら知らん」
「サタ様。教育はグレートマザーが行っているそうなので、基本は問題ないかと」
「だといいんだけどなぁ……」
とは言え、どう宇宙が荒れるにしても、人間同士の事は人間同士でケリを付けるべきと言うのが、ここ数十年で俺のスタンスにもなった。
俺が何かやるとしたら、相手の宇宙怪獣が前に出てきた場合だろう。
「さて、ご馳走になった。これは代金代わりの俺の墨だ」
「うん。お粗末さまでした。いやぁ、いい感じに悩みがチラチラしているな」
俺はチラリズムの元を離れると、メモクシと共にジョハリスが操縦する宇宙船へと転移する。
「帰ってきたっすか、サタ。それで、これからどうするっすか?」
「とりあえず美味しい飯でも食いに行こう。何時だってまずはそれだ」
「了解っす」
「お供させていただきます」
そうして、宇宙船は手近なコロニーに向かって飛び立ち、俺は今日の食事をどうするかを考え始めた。
「さて、今日の食事は何でしょうね?」
これにてサタヴィーの宇宙帝国漫遊記、完結とさせていただきます。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
おまけ
サタたちのエピローグでの状態。
サタ:エーテル宇宙王国の守護神。普段は市井で美味しいものを食べ漁っている年齢不詳のフリーライター。なお、動乱の時代が訪れても、そっちのお仕事は殆どなかった。
メモクシ:サタのお付き。パーツを交換し続けているので、まだまだ生きる気満々。ちなみにエーテル宇宙王国の機械知性のグレートマザーでもある。
ジョハリス:サタ専属運転手。無核のスライムは栄養さえ十分であれば、寿命と言う概念は存在しなかったようだ。ジョハリスの影響なのか、エーテル宇宙王国はスライム種の人間の割合が少しだけ多い。
ヴィリジアニラ:初代エーテル王国女王。物質的には間違いなく死んでいる。ただ、サタたちは時々気配を感じるらしい。ちなみにサタとの子供は男子二人、女子三人。ついでに温室担当のサタに産ませたのが一人居るが、こちらは出奔して別の国を建てたようだ。




