305:増殖への対処
「ヴィー。対策modを付与した液体が完成した。これを適当に料理のソースにでも混ぜてもらえば、それを食べた時にフナカの影響は排除できる」
「ありがとうございます、サタ。こちらもドラグスターク様との交渉が終わりました。今日の夕食には混ぜてもらえると思います」
俺は本体で作った対フナカ用modを入れた墨と仕様書を取り出すと、部屋に居る帝国兵と渡す。
そして受け取った帝国兵は直ぐに何処かへと運んで行った。
なお、あの墨はうま味成分マシマシにしたものであるし、エーテルスペース産の植物をヘーキョモーリュ以外も入れてあるので、料理人なら問題なく使えるはずだ。
まあ、食べたらブラスターmodを暫くマトモに使えなくなるので、その点だけは注意してもらう必要があるが。
「「「……」」」
で、一時間が経ち、二時間が経ち……。
「脅威は去りましたね。少なくとも艦隊全体が直ぐに落とされるようなことは無くなりました」
「「「ほっ……」」」
ヴィリジアニラの宣言で部屋に居る全員が安堵の息を吐いた。
どうやら無事に増殖した帝国兵に墨は届いたようだ。
これで一先ずの脅威は去ったな。
ちなみにだが、今後も増えた時用にと、俺はこの二時間で墨を増産していたので、もう何百人か出て来ても大丈夫である。
たぶん、今もどこかで使われている。
「……。ヴィー様。偽ヴィリジアニラAが宇宙怪獣になって暴れ始めたと言う報告が入って来ましたが」
「「「えっ」」」
「見るからにわがままな感じだったので、摂取を拒否したのでしょう。私たちが対応する必要はありません。ドラグスターク様たちにお任せすれば、『タマイマゼカワ』が落ちる事はないはずです」
と、ここでメモクシから情報が。
どうやら偽ヴィリジアニラの片方が暴れ出したらしい。
画像を見せてもらったが、何か大量の手と腕の塊みたいになっており、元の姿の面影は一切ない。
しかし……うん、確かに俺たちが手を出す必要はなさそうだ。
既に大量の兵士が動員されて、滅多打ちにされている。
それにOSの感じからして宇宙怪獣ではなく宇宙怪獣モドキで、それもほんの僅かに『バニラOS』と違うくらいなので……これまで関わって来たフナカ関連でも最弱と断言できそうだな。
「それよりも私たちが気にするべきは、兵士を増殖させている方です。私の偽者が暴れている事でそちらへと注目が集まっているのなら、それを利用して自分の手駒を増やす可能性が高いですから。メモ、ジョハリス」
「少々お待ちください。兵士の増殖を確認しました」
「むむむ……別の場所で反応有りっす。これは……『タマイマゼカワ』の艦内っすね」
どうやら動きがあったらしい。
兵士が増えて、それに合わせて『異水鏡』に反応があったのなら、怪しいのは反応があった場所だろう。
となればだ。
「増殖した兵士にはサタの墨を打ってもらいましょう。判別を付ける暇はないので、両方です」
「ヴィー。俺たちは?」
「反応があった場所へと向かいます」
「分かった」
と言うわけで移動開始。
『異水鏡』で反応があった場所へと向かっていく。
なお、これは余談になるのだが、『タマイマゼカワ』を含む艦隊には『異水鏡』が何台かあるらしいが、その精度はメモクシとジョハリスが使っているほどのものではないそうだ。
これは対象にしているのが人に紛れて何かを狙う相手ではなく、宇宙怪獣ブラックフォールシャークのように超光速航行中に襲ってくる宇宙怪獣や、あれほどでなくても戦艦で戦うべき大きさの宇宙怪獣が探り出す対象だからこそであるらしい。
なので、これまでの兵士の増殖の際に反応があった事には気づけなかったようだ。
「此処がそうですね」
「此処は……医務室っすね」
「はい。ただ、サブのサブになるような医務室のようですが」
そんな事を考えている間に辿り着いたのは『タマイマゼカワ』艦内に複数ある医務室の一つ。
「では、突入」
「!?」
ヴィリジアニラの号令で帝国兵たちが医務室に入っていく。
部屋に居た医者と看護師はその動きに驚きつつも、こちらの指示に従って大人しくする。
そして、部屋の奥へと向かっていき……見えてきたのは医療用のポッドだ。
「サタ」
「ちょっと待ってくれ……」
メモクシたちが医者たちに説明をしている中で、俺は医療用ポッドを調べ始める。
えーと、この手のポッドは医療関係のmodが満載されていて、きちんと設定すれば時間はかかるものの、だいたいの外傷は何とかなると言う代物でもある。
使用方法は中に入って、専用の薬液に漬け込まれる事。
この辺の機能を応用すれば、人造人間の製造は出来るだろう。
医療用だけあって、サンプルからオリジナルと比較して遜色ないコピーを作り出すことは得意なはずだからな。
むしろ気になるのはどうやってオリジナルに気づかれることなく転移をさせているかだが……。
「ーーーーー!」
「おっと」
「……」
「「「!?」」」
なんか変な虫みたいのがポッドの隙間から飛び出してきて……反射的に握り潰してしまった。
「サタ。説明を」
「ああうん。たぶんだけど、今のが転移部分に関わっている宇宙怪獣だと思う。なんか、そんな感じのOSをしてる」
「なるほど、そうですか」
どうやら専門の宇宙怪獣が居たらしい。
いやうん、なんでこんなところに居たんだ?
これはこれで謎が増えてしまった気がするな……。
フナムシ型宇宙怪獣「ちなみに私は昆虫ではない」




