298:帝国大学の学食
「お届けに参りましたー」
「ありがとうございます。はい、支払いはこれで」
ヴィリジアニラの講演は無事に終わった。
そして、バニラゲンルート子爵家に帰るにはもう遅いという事で、今夜はバニラシド帝国大学内の一室にして休み、翌朝に移動をする予定である。
と言うわけで、夕食は学食からのデリバリーである。
「届いたぞ。ヴィー」
「ありがとうございます、サタ。ふふっ、懐かしい匂いですね」
「うーん、いい匂いがしているっす」
メニューはカルボナーラにハンバーグプレート、飲み物は部屋備え付けの普通の水だ。
と言うわけで、早速いただこう。
「「「いただきます」」」
まずはカルボナーラから。
出来立てホカホカのカルボナーラ、チーズと卵が良く絡み、コショウと良く焼かれたベーコンのいい匂いが漂ってきている。
そんなカルボナーラを、俺は一口分をフォークで巻いて口へと運ぶ。
「うーん、美味しいな」
「久しぶりに食べましたけど、本当ですね」
「いいっすねぇ。これ」
チーズの香り、卵の味、コショウの刺激、ベーコンの油と旨味、それらとしっかり茹でられたパスタが口の中で舞い踊って……ああうん、美味しいな。
学食で値段を抑えるためなのか、使われている食材の質は超一流ではないが、それでも一流の部類で、俺としては一級品だと言いたい。
うんうん、美味しいな。
「ハンバーグプレートはヴィーの頼み通りに豚100%にしてもらったけど、いいんだよな?」
「はい、それで構いません」
「微妙に表情が黒いっすね……」
続けてハンバーグプレート。
こちらは豚ひき肉100%の芯までよく焼かれたハンバーグに、コーンやポテト、ビーンズにニンジンの付け合わせが付いたものである。
さて、まずはハンバーグだが……うん、こちらも美味しいな。
豚の脂の甘味と肉の旨味が、微量のスパイスと良く焼かれたことによって引き出されていて……食べる手が止まらないなぁ。
付け合わせの細かく刻まれた野菜たちについても、しっかりと焼かれていて、それぞれの野菜特有の甘味が引き出されており、食べる人に楽しさと栄養を与えてくれている。
バニラシド帝国大学の構内で生産された野菜を使っているからか、見慣れないmodを舌で感じることもあるが……まあこれは俺にしか分からない部分だから、気にしなくてもいいな。
「しかし、ボリューミーっすねぇ。ウチは問題ないっすけど」
「そうですね。でも美味しいので問題はありません」
「だな。それにしても、この量であの値段か……大学に通っている生徒たちが羨ましくなるな」
ちなみに。
学食なので、かなりのボリュームがありつつも値段としては控えめである。
具体的には周辺区画の七割ぐらいの値段で、お出しされている。
ただ、この七割と言う値段は大学に所属しているか、正規の客として招かれている場合のみの値段なので、他の区画の商売を脅かすような事にはならないらしい。
「ヴィー様。お食事中申し訳ありません。緊急のメッセージが入りました」
「皇帝陛下ですか?」
「はい。ただし、皇后殿下やグレートマザーの署名も併記され、そちらからも直ぐに見るようにとの注記が入っています」
「なるほど、見る必要がありそうですね」
と、平和に、穏やかに、美味しく食事を楽しんでいたのだが、どうやら緊急の連絡が入ってしまったようだ。
なので俺とジョハリスはヴィリジアニラがメッセージを確認している間に、残りの自分の分の食事を急いで腹に収めてしまう。
うん、これで良し。
「……」
さて肝心のヴィリジアニラは……なんだか悩ましい感じの表情をしているな。
理解は出来るが、納得はしていないと言う感じだろうか?
そして、食事を再開する。
という事は、読むことは緊急で必要だが、行動については緊急ではない、って話になるな。
まあ、何を言われてもいいように準備はしておこう。
「ごちそうさまでした」
そうしてヴィリジアニラも食事終了。
身支度を整えて……俺たちの方を見る。
「サタ。サタの本体はこちらのメッセージに従ってエーテルスペースを移動して欲しいそうです」
「? 分かった」
ヴィリジアニラがメッセージを見せる。
えーと、これは宇宙船の航行計画に近いな、特にハイパースペースを利用した超光速航行に類似している。
ただ、利用する物はハイパースペースではなく、エーテルスペースになっている。
「ジョハリス。これから『カーニバルヴァイパー』に移動して、こちらの計画書に従って超光速航行を行って欲しいそうです」
「分かったっすけど……これはまた奇妙と言うか面倒な指示っすねぇ……」
ジョハリスにも俺に見せたのと同じような計画書が渡される。
なになに、この場に居る四人で『カーニバルヴァイパー』に乗って、移動して欲しいのか。
しかし、この手順書通りだと……。
「いや、ガイドビーコンなしの超光速航行と言う時点で奇妙を通り越して普通じゃないと思うんだけど」
「それはそうっすけど、ウチは一応、それの経験はあるっすから、奇妙止まりで済むっす」
「よろしくお願いしますね。サタ、ジョハリス。では、行動を開始しましょうか」
「ヴィー様。お車の準備、整いました」
どうやら何かしらの作戦が始まった事だけは確かなようだ。
俺たちはメモクシの用意した車に乗って、『カーニバルヴァイパー』へと急いだ。




