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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
6:バニラシド星系

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275/319

275:制圧開始

「何者……ぶげぇっ!?」

「ごふっ!?」

「なん……動け……」

「これでよし」

 状況は動いた。

 所属不明の勢力がバニラシドmod研究所へと攻撃を仕掛けると共に、火事場泥棒あるいは陽動のように大型商店や政府施設へと攻撃を仕掛けている。

 この攻撃はかなり大規模なもので、死人も少なからず出ているようだし、この区画を管理している貴族だけでなく皇帝陛下に対して喧嘩を売っていると言っても過言ではないものだ。


「ジョハリス。慎重に調べてください」

「分かっているっす」

「な、なにをしやが……待て、おい待てって!?」

「なんだこの辱めは!?」

 なので、俺たち四人は襲撃者を制圧する方向で動き出した。

 まず手始めに一番近くに居た襲撃者と思しき連中を俺の重力制御modで制圧し、メモクシと俺で周囲を警戒しつつ、ジョハリスが襲撃者の衣服を剥いでいく。


「サタ。これっすかね?」

「それだな。触らないようにしてくれ。触ったらジョハリスが操られることになる」

 で、何人か剥いでいった結果として見つかったのは金属製のネックレスであり、地肌に触れるように装着されていた。

 一応、俺が触れて確認するが……うん、マガツキ粉の混ざった思考誘導装置だな。


「ではサタ。破壊を」

「分かった」

 と言うわけで墨を吹き付けてmodを無力化。

 ついでに温室で育てているヘーキョモーリュの球根と各種スパイスの混合物を丸めたものを口に突っ込み、無理やり飲ませて、強制的に正気に戻す。


「さて、意識はありますね。自分がどこの誰で、何をしていたかは思い出せますか?」

「あ、ああ……」

 正気に戻ったところでヴィリジアニラが氏名、年齢、記憶の有無と言ったものを確認していく。

 どうやらこの人物は、数日前にマガツキ粉のネックレスを着けられ、正体不明の誰かからの命令に従う形で、自分の家のものでは無い人造人間を率いてこの場に来たようだ。

 で、破壊活動をしていたところ、俺たちに制圧されたと。


「……」

 この尋問結果を聞き出したヴィリジアニラは……悩まし気な表情を浮かべている。

 だがこれも仕方がない事だろう。


 まず襲撃そのものだが、少しずつ制圧が進んでいる。

 敵はマガツキ粉で操っている人間を小隊長、戦闘教育だけ施した人造人間を部隊員としてバニラシドmod研究所とその周囲を襲わせたようだが、こちらの戦力は時間が経つにつれて増える一方であるのに対して、あちらの戦力は減るばかり。

 俺の本体の目で見る限りでは、戦いになっていないに近く、既に襲撃は失敗したと言っても過言ではない。


 となると気にするべきは何故襲撃が行われたかや、これからどうなっていくかと言う面なのだろうけど……。

 うん、俺でも異常を感じているレベルだからな。

 ヴィリジアニラがおかしいと思っていない方がおかしい。


「マガツキの親機はシンクゥビリムゾ王子ではなくフナカが持っていると考えた方が良さそうですね。王子あるいは王子の傘下に居る貴族がやったにしては、あまりにも雑ですから」

「雑と言うか、失敗する前提で動いている感じっすよね。もっと言えば、とにかく被害者を出して、関係各所の仲を悪くすることを目的に動いている感じっす」

「同意します。この区画にあるカメラの情報を探っていますが、金品の強奪、特定物品の破壊よりも、要人の殺傷を優先しているように思えます」

「やっぱりそう言う話になるか。マガツキの親機を探られたくないから、『異水鏡』を壊しに来ましたって動きじゃないもんな」

 どうやら俺たち四人の見解はだいたい一致したらしい。


 襲撃の主導者はシンクゥビリムゾ王子ではなくフナカ。

 考えてみればフナカはマガツキを丸々一本持っているし、能力も色々と持っているので、命令権のようなものを一番に持っているのは何もおかしな事ではない。


 襲撃の狙いは『異水鏡』ではなく、被害を出す事それ自体であり、操った襲撃者が死ねば好都合、襲撃で死人が出ても好都合と言う、全くもって腹立たしいもの。

 これも皇族としての立場を持つシンクゥビリムゾ王子よりも、所在地不明のフナカの方が似合っている狙いと言えるだろう。

 フナカは人と人の仲が拗れて壊れるのを好むと聞いているので、なおさらだな。


「となると……ああ、ヒービィカネカラ王子とシンクゥビリムゾ王子が別の方向からほぼ同時にこの区画へ入って来たな。援軍らしい」

「そうですか。では、出来る限り多くの容疑者を捕縛した上で、ヒービィ兄様に引き渡しましょうか。シンクゥビリムゾ王子に引き渡したら、証拠隠滅を図られかねませんので」

 と、ここで皇太子殿下とシンクゥビリムゾ王子がそれぞれの配下を率いて区画へと入ってくる。

 目的はどちらも襲撃者の制圧だが、方向性は全くの別だろう。

 具体的に言えば、皇太子殿下は純粋に事態解決のために、シンクゥビリムゾ王子は……証拠隠滅も含めて自分にとって都合がいいように状況を動かすべく、と言うところだろうか。

 俺とヴィリジアニラの立場で見ての話だから、これはこれで認識が歪んでいるかもしれないが。


「ヴィー様。捕縛用の人員及びトラクターを確保し、武装解除の上で収容を完了しました」

「分かりました。では次へ向かいましょう。サタ」

「ああ。片っ端から転ばせていく」

 なんにせよだ。

 襲撃者が操られた人間であり、死んだ方が都合がいいと言うのなら、殺さずに制圧する事が相手にとって一番嫌な手になるはず。

 そして、物を迂闊に壊せないからと開発した、重力制御を利用した制圧modはこういう状況で生きる。

 と言うわけで、俺たちは襲撃者を無力化しつつ、先へと進んでいく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三つ巴の暴徒補殺対抗戦開始です。 第一皇子とヴィーさまは捕獲を、第二皇子はサーチアンドデストロイをそれぞれ選択した模様 結果は後程ー 気付けの丸薬に加工されたのかー サタチャンが混ぜて丸…
[良い点] そっか皇子たちが争ってて色々やってるこの状況自体がある意味フナカにとっては半分目的達成済みてもあるんてすね さらなる不仲を求めてもっともっとと不和の種を撒くんでしょうけど [気になる点] …
[一言] >考えてみればフナカはマガツキを丸々一本持っているし、能力も色々と持っているので、命令権のようなものを一番に持っているのは何もおかしな事ではない シンクゥビリムゾ王子「この51%マガツキで帝…
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