253:婚活舞踏会とは
「ではまずは婚活舞踏会についてサタ様たちに説明したいと思います」
バニラゲンルート子爵家に戻ったところで、メモクシによって婚活舞踏会についての説明が始まった。
「婚活舞踏会は帝星バニラシドの各地に存在している専用区画で行われている催し物です。参加資格は未婚かつ成人資格証を持ち、婚約または婚姻を望んでいる事です」
「ふむふむ」
「わざわざ、そんなものがあるんすか。大変すねぇ」
「誰にも異性の幼馴染、そういう仲まで進んだ学友、縁を紡げた同僚と言ったものが居るわけではありませんし、居たとしてもそれらが結婚相手として適切とはまた別ですから。こう言う場は帝国の維持と発展の為に必要なんです」
まず婚活舞踏会の目的については、その名称通りであるらしい。
うーん、この時点で既に俺が訪ねていいのか、ちょっとどころでなく悩むところだな。
俺は性別不明だし、そもそも宇宙怪獣だからなぁ。
ただ、ヴィリジアニラが何をやりたいのかは分かる。
「もしかしなくても、此処にヴィーと俺で一緒に参加すれば、それだけで婚約が結ばれたと周囲に認識されて、男女関係を迫るようなメールを減らせる?」
「その通りです。サタ様。ついでに申し上げれば、この期に及んで送ってくるような連中は、その時点でそう言う人間であると周囲に理解されるため、マトモな方々からは嫌厭されることになるでしょう。つまり、反撃と防御を兼ねた一撃になります」
「なるほど」
うん、確かに俺に送られてくる一部のメールを減らすことは出来そうだ。
しかし、この方法には問題もある。
「えーと、ヴィー。この方法だと……」
「私は構わないので提案しています。なので、後はサタが受け入れるかどうかですね」
「……」
俺としてはヴィリジアニラの名誉とか沽券とか、その他諸々に傷がつくのではないかと思ったのだけれど……ヴィリジアニラ的には何の問題も無いらしい。
しかし、ヴィリジアニラは庶子と言えど、皇室に属しているのだから、勝手に婚姻を結ぶのは……いや、先日のお茶会の時点で皇帝陛下は、こっち方面はヴィリジアニラ当人と皇后殿下とヴィリジアニラの母親に任せるとか言っていたような気がする。
あの時の皇帝陛下の様子からして、今更言葉を覆すとは思い難いし……。
あれ? 本当に俺次第になっているな。
……。
「必要なら何時でもヴィーの側から一方的に切れるような形でなら、まあ……」
「かしこまりました。ではそのように」
うん、何かあった時にヴィリジアニラの名誉とかそう言うのが傷つかないようになっていれば、問題はないか。
本当に婚姻関係を結ぶわけじゃないし。
あくまでもフリだしな。
「……」
「ん? ジョハリスどうしたんだ?」
「何でもないっすよー」
何故かジョハリスが何か言いたそうな顔をしているが……どうしたのだろうか?
「えーと、それで参加するのは良いとして、皇室主催とかって意味があるのか?」
「説明いたします」
それはそれとしてだ。
メモクシ曰く。
婚活舞踏会は帝星バニラシドと周辺の星系から人が集められて行われるため、貴族及び裕福な家庭に限定してもなお、とんでもない人数が集まる。
ならばと、条件を付けて複数日程にしても、毎日開催のような状態になってしまう。
そんな状態なので、特定の家が主催し続けていると、資金的にも目新しさ的にも問題が出るため、様々な家が持ち回りで開催しているのが現状であるらしい。
で、そうやって様々な家が開催するとなると、やはり主催者によって色々と差が出てくることになる。
この辺りは俺に貴族についての知識が乏しいので分かりづらいが……婚約が結ばれると相手の家だけではなく主催した家とも縁が結ばれるとか、仲が悪い家が主催した舞踏会には参加しづらいとか、参加者の幅だとか、格だとか……まあ、とにかく面倒くさい話が大量発生するようだ。
うん、俺には貴族は無理だな。
さて、そんな中で皇室主催の婚活舞踏会。
これは数ある婚活舞踏会の中でも最上位かつ最大規模のものと言ってもいいし、参加できる人間も事前審査を通過した限られた人間だけとなる。
しかし、会場を運営する人間も含め、多くの人々の目に触れるため、話題性については抜群であるそうだ。
だが、それだけに参加者の名簿は一月以上前に確定しており、間違っても割り込めるような場所ではない。
が、そこはまあ……ヴィリジアニラは庶子とは言え皇室で……皇帝陛下及び皇后殿下との仲も悪くないので……おまけに目的が婚約相手探しではなく、俺と一緒に姿を見せるだけとなると……特に問題は起きないらしい。
なんだろう、やけにトントン拍子で進んでいる気がする……。
「と、参加するのは良いとして、温室担当の俺も必要な理由は? 正直に言って、アレは出来るだけ表に出したくないんだけど」
「簡単に言えば炙り出しですね」
「炙り出し……」
「ええ、危険因子の炙り出しです」
「具体的には?」
「あちらのサタを見て、妙な事を考える人間が居れば、それを捕まえるか監視するかして、色々とします。つまりは諜報部隊としての仕事ですね」
「ああなるほど。ある意味では普段のヴィーの役目をするわけか。帝星バニラシドの中でヴィーに手を出そうと考える人間はそう多くないだろうし、温室担当の俺の方が囮になるのか」
「そう言う事ですね」
うーんまあ、囮役としてなら別に構わないか。
変な事を企む奴は一人でも削っておいた方が、今後のフナカやシンクゥビリムゾ王子関係で何かがあった時にイレギュラーとして悩まされる可能性も減るだろうから。
「では明日から準備と行きましょうか。ドレスの調整なども必要でしょうし」
「お、おう?」
とりあえずヴィリジアニラは楽しそうだし、それでいいか。




