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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
6:バニラシド星系

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249/319

249:シルトリリチとフナカ

「ふむふむ」

 シルトリリチ星系はバニラ宇宙帝国の中でも辺鄙な土地に存在している。

 とにかく遠く、一番近い星系から超光速航行の中でも高速のものを用いてもなお、片道一週間はかかるほどだ。

 シルトリリチ星系近くの別の星系が開拓されれば話も変わるのだろうが、現状では孤立していると言ってもいい。

 なので、諜報部隊の一部では、シルトリリチ星系担当になる事は『流刑』なんて言われているようだ。


 帝国とシルトリリチ星系間の治安は悪く、宙賊と宇宙怪獣が多数存在し、実質無法地帯。

 そんな場所だからか、統治には相応の権力が必要という事で、統治者であるネモフィラ家には、公爵の地位が与えられている。

 ちなみに、このネモフィラ公爵家は現皇帝の先々代ぐらいで皇帝一族から分かれた、由緒正しい家であるらしい。


 文化的には特に異質な事は存在していない。

 しかし、地理的事情からか、独立独歩と言うか、独自の方向性を有するようになる土壌はあるようだ。

 これまた、近くの別星系が開拓されればの話になるが、そこで得られた物次第では一気に変わるのかもしれない。


 なお、最近ではシルトリリチ星系側のガイドコロニーが宇宙怪獣によって破壊されたらしく、行き来はさらに難しくなった。


 とまあ、この辺までが基本情報だろうか。


「怪しんだ上で見てみると、思っていた以上に多いですね」

「そうですね。シルトリリチ星系から帝国へと運ばれる途中で宙賊に奪われ、売り捌かれたとするには、少々多すぎますし、欠損も足りていないように思います」

 では、この図書館の資料と、チラリズム=コンプレークスからの情報、俺たちが独自に持っている情報まで使って、シルトリリチ星系の裏まで見たら?


 うん、その場合には犯罪の温床と言う他ない。

 それもシルトリリチ星系は被害者や従者の側ではなく、主導者の側だ。


 ニリアニポッツ星系で見たように、宙賊の押収品をバラし、整理し、組み立てたら、奇麗なシルトリリチ星系産の製品が出来上がりました。

 なんて例は、きちんと探れば、二十年ほど前から確認できている。

 他にも奴隷の出元だったり、逆に奴隷が送られていたり、違法薬物の出元だったり……うん、なんか山ほど出てくるな。

 ただ、急増しているのが二十年ほど前からと言う辺りに……フナカの関与を疑えなくもない。


 とりあえずだ。

 此処まで大規模にやらかしているのなら、もはや現ネモフィラ公爵はフナカの操り人形状態と見ていいだろう。

 それから、帝国の諜報部隊がそれなりの頻度で入っているのに、この手の犯罪に関わる情報の中でもクリティカルな情報を得る事が出来ていない辺り、シルトリリチ星系はフナカによって完全制圧されていると考えていい。

 場合によっては、無事に帰って来た諜報員が洗脳されている事も考えていいだろう。


 うん、俺と同じことを考えたのか、既にメモクシがリストを作り始めているな。

 機械知性のグレートマザー辺りなら既に同じような事をやっていそうではあるが……改めてチェックするのも有りだろう。


「宇宙怪獣モドキについてはここ数か月に限定されるのか」

「代わりに私たちが関わったもの以外にも帝国全土で18件も起きていますね」

「宇宙怪獣関係の事件は、明確に接触する事になったものに限定すれば、帝国全土で見ても、数十年、百数十年に一度程度だったはずです。なので、ここ数か月の発生件数が異常である事は疑いようがありませんね」

 では、フナカの件が出たついでに宇宙怪獣と宇宙怪獣モドキについて。

 うん、俺とヴィリジアニラが出会った貨客船『ツメバケイ号』の一件を皮切りとするように、一気に発生件数が増えている。

 現在進行形で不審な事件が続いている星系もあるようだし、俺たちが関わらなかった事件ではそれなりの被害も出ているようだ。


 共通項としては、やはり突然出現する事だろうか。

 本当に突然、何かが宇宙怪獣に変貌して、周囲の人間を襲っている。

 しかし、宇宙怪獣になった割には、サイズが小さく、被害規模は大きくてもコロニー程度までで、何と言うか……やはりモドキとしか言いようがない部分があるな。


 実際、明確に暴れ始めてから、逃げ切る事が出来なかった個体は、今のところ全て狩られている。

 これからさらに頻度を増していったら分からないが、現状では帝国軍が対処可能な範囲のようだ。

 うーん、うん、やっぱり宇宙怪獣とするには弱すぎる感じがあるな。


「……」

「サタ?」

「いや、なんでもない」

 と、不意に思ってしまった。

 チラリズム=コンプレークスはフナカについて、俺の参加は必要だが、現生人類で対抗可能な存在だと言っていた。

 つまり、チラリズムにとってはこの戦況は予想の範囲内という事になる。

 しかし、フナカの行動は、こちらが調べた限りでは二十年前……準備期間も含めればそれ以前から始まっている。


 二十年前となると……まだヴィリジアニラも生まれていない頃だよな。

 その頃から、今に至るまでが予想の範囲内?

 ブレとかはあるにしても、想定の範囲内?


 ……。

 いったい、どこからどこまでが、チラリズム=コンプレークスの手のひらの上だ?

 なんと言うか、あまりにも手が広すぎて、もはや恐ろしさすら正確には感じ取れないな。


 後、性格は絶対に悪い。

 フナカは偶然やって来たと言っていた気がするが、此処まで予想できる奴の言う偶然とか、一切信用が出来ない。

 絶対に気が付いていて、自分の目的達成の役に立つからとかで、わざと見過ごしただろ……。


「ちょっと、とあるお方の性格の悪さを改めて知っただけだから」

「……。ああなるほど。それはそうですね」

「あちらの視点はメモたちとは違う。そう言う事だと考えておきましょう」

 まあ、俺たちがやる事に変わりはない。

 少しでも……それこそ、情報がないからこそ浮かび上がる輪郭すらも利用して、フナカについて探ってみよう。

 今日やるべきことはそちらだ。

釈迦の手のひらの上ならぬ、社長の手のひらの上。


04/11誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] ところで社長の手は何本あるんでしょうか?
[良い点] 裏と表の完全制圧出来たのが20年ぐらい前なのかねぇ… そいで宇宙怪獣化の試験検証段階に入ったのがツバクロ号事件の少し前ぐらいかな [気になる点] 諜報部隊から流刑地あつかいは笑えねぇ… 仮…
[一言] どこまでが想定の範囲内なのか、バニラ帝国の総人口を考えると死亡者100億人とかでも必要経費とか言い出しそうだな。 >後、性格は絶対に悪い。 引き継ぎもなく会社から居なくなる奴が性格悪くない…
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