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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
6:バニラシド星系

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245/319

245:情報の共有

「modによる盗聴無し」

「防音設備に異常がない事とその手の機械が設置されていない事を確認したっす」

「電波の遮断を確認しました。この部屋は完全な密室です」

「三人ともありがとうございます」

「実に手慣れているね。流石と言うか何と言うか」

 帝城からバニラゲンルート子爵邸に帰ってきた俺たちは普段着に着替えると、邸内に存在している防諜設備満載の部屋へと移動。

 そこでメモクシがグレートマザーから受け取った情報を確認する事になった。

 それはつまりヴィリジアニラたちがチラリズム=コンプレークス、フナカ=コンプレークス、帝国どころか世界の発祥に関わる点まで知る事になるわけだが……。


「「……」」

 うんまあ、こうなるのが普通だよな。

 と言うわけで、チラリズムからの爆弾だらけの情報によって、ヴィリジアニラとジョハリスは呆けている。


「『バニラOS』の起源、現状……なるほど、帝国が私を招いた理由は交渉と教育か。となれば作業場所は帝星バニラシド周囲にある宙域が妥当であり、セイリョー社に情報を開示してもいいかと言う連絡を……いや、サタの時に一通りの情報は送っているはずだから……」

 それに対して、流石はミゼオン博士と言うべきか。

 得られた情報から予測し、分析し、思考を巡らせている。

 で、ミゼオン博士の思考に対しては概ね同意。

 帝国がミゼオン博士を招いた理由は、『バニラOS』の代替か、支える存在の代替を探るに当たって、俺と言う宇宙怪獣との交渉と教育を成功させた経験を買っての事だろう。

 となれば、帝国のバニラシドOS研究所とやらでは、既に宇宙怪獣を生み出せるような何かの準備が進んでいたりもするかもしれない。

 うん、普通にありそうだな。

 十年、二十年どころではないぐらいに……それこそ百年単位で研究を行っているだろうしな。


「さてヴィー。色々と衝撃的な情報があったわけだが、明日以降はどうする?」

「……。諜報部隊の本部へと、ミゼオン博士を連れて赴きます。フナカとやらが関わっていると思しき事件は私たちが遭遇したもの以外にもあるかもしれませんし、バニラシドOS研究所にミゼオン博士が行く前に知っておくべきことがあるかもしれませんから」

「分かった」

 うん、やる事に変わりはなさそうだな。

 まずは情報収集だ。

 俺たちが得ている情報は部分的なものでしかない可能性が高そうな以上、情報がある場所で調べた方がいい。


「シンクゥビリムゾ王子についてはどうするっすか? まだこっちに何か仕掛けてきそうっすよね」

「私たちの側からは情報収集と反撃以上はしないでおきましょう。相手にこちらへ干渉する口実をむざむざ与えてあげる必要もありません」

 シンクゥビリムゾ王子については……まあそうだよな。

 ミゼオン博士の呼び出しと移籍の強要、俺に対する干渉、今日のお茶会への干渉と、既に心証はかなり悪いが、心証が悪いだけで攻撃はされていないからな。

 下手な事をするべきではない。


「ヴィー様、バニラOSの一件については如何いたしますか?」

「必要がない限りは関わりません。私たちの手には余ります」

「なるほど。けれど私がバニラシドOS研究所に呼ばれている以上、無関係では済まないと思うけれど?」

「確かに呼ばれていますが、機械知性のグレートマザーが積極的に関わるほどの案件です。素人が手を出したら消し炭も残らないほどに炎上するのが目に見えています。なので、その件に関しては基本的には関わりません。関わってもミゼオン博士に関係する範囲でのみです」

「まあ、少なくともこの先百年以上かけて解決出来ればそれでいいと言う話っぽいしな。正直この場に居る人間で関わるべきなのは俺ぐらいじゃないか? その俺でもまずは勉強とかそっち方面から始めないと行けなさそうだが」

「……。そうですね。なので、問題がない範囲でのみ、情報だけは集めましょう。ただ、情報が集まらない限りは、関わるのはなしです」

 うんまあ、『バニラOS』関係は素人が手を出せるような話じゃないからな。

 今はまだ関わるべき話ではないだろう。

 俺にしたって、それこそ百年くらい経って、ヴィリジアニラが居なくなってからの話になるのではないだろうか。


 なお、これは余談になるが、俺の寿命は存在しないか、あっても数百万年は優に超えるのではないかと言うのがセイリョー社の予測である。

 俺自身も千年、万年程度でどうにかなる感じはしていないので……うんまあ、我ながら本当に遠い話だな。


「と、私からも一つ」

 ここでヴィリジアニラが自身の母親から聞いたらしい『姿なき協力者』と『姿なき教導者』の話をする。

 最初は何のことかと思ったが、前者はフナカの事で、後者はチラリズム=コンプレークスの事だろう。

 流石はバニラゲンルート子爵家と言うべきか、察していたらしい。

 そして、この話から一つ思う事がある。


「下手をすれば、今この時にもシンクゥビリムゾ王子が宇宙怪獣化するとかありそうだな……」

「可能性の否定は出来ないのがツラいところですね」

「帝星バニラシドにはマガツキも入り込んでいるっぽいっすよねぇ」

「メモたちが把握していないだけで、他にも爆弾は多数仕込まれているかと」

「そう言えば、帝星バニラシド出身の同僚が言っていたね。『あそこは日刊どころか、毎時間世界の危機だ。皇帝陛下たちが頑張っているから、何とかなっているだけ』だってね」

 帝星バニラシドは存外、危機的状態であるらしい。

 うーん、伏魔殿どころではないようだ、怖い怖い。

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― 新着の感想 ―
[一言] >帝星バニラシドは存外、危機的状態であるらしい。 このギリギリ破局しそうで(皇帝たちの頑張りで)なんとか間に合ったというチラリズムを楽しんでるよな、誰かさん…
[一言] >「modによる盗聴無し」 >「防音設備に異常がない事とその手の機械が設置されていない事を確認したっす」 >「電波の遮断を確認しました。この部屋は完全な密室です」 |^)「ちらり」
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 伏魔殿か?隠れてないし、現魔殿では?
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