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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
6:バニラシド星系

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244/319

244:茶会の終わり

「皇后。話は出来たか?」

「ええ、とても有意義な話が出来ました」

 皇帝陛下は皇后殿下に声をかけると席に戻る。

 皇太子殿下も同様。

 グレートマザーは他のお付きの人たちに混ざったな。

 ヴィリジアニラたちの様子は……ヴィリジアニラは嬉しそうにしていて、ミゼオン博士とメモクシはよく分からなくて、ジョハリスはなんとなくだが諦めっぽい感じ?

 どう言う事だ?


「……。サタ、どうして表情筋と感情の連動を切っているのですか?」

「!?」

 そんな事を考えていたら、俺の表情が動いていない事で何かを察したらしいヴィリジアニラが質問をしてきた。

 えーと、チラリズム=コンプレークスとの一件は皇帝陛下が話すから口に出すなと言う事だったな。

 だが、俺の話術でヴィリジアニラを誤魔化すことも不可能だろう。

 となればだ。


「あー、その、皇帝陛下との話でちょっと機密事項に触れる事があってな。顔に出ないように連動を切っていたんだが……」

「サタ。親しくない相手ならともかく、私相手に無表情は隠し事があると言っているようなものですよ」

「あ、はい。そうですねー」

 素直に話すのが正解だろう。

 そして、実際に正解だったのだろう。

 ヴィリジアニラはそれ以上はこちらへ問いかけてくるつもりはないようだった。

 代わりに皇帝陛下へ睨みつけるような視線を向けているが。

 なお、当の皇帝陛下は慣れたもので、何でもない顔をしている。


「ヴィー。この件についてはメモクシに伝えるから、後で周囲に人が居ない状況で確認せよ。許すのは……ヴィー、サタ、メモクシ、ジョハリス、ミゼオンまでだ」

「……。かしこまりました。後ほど確認させていただきます」

 ジョハリスまでは分かるが、ミゼオン博士もなのか。

 となると、そこにミゼオン博士を呼んだ理由もありそうと言うか……ああうん、何か察した気がする。

 表情には出ないようにしているが。


「さて、今後についてだな。ヴィーはどうする予定だった?」

「シルトリリチ星系について情報収集をするべく、諜報部隊の本部へと赴くつもりでした。しかし、ミゼオン博士の件もありますので、そちらの護衛や協力も可能な限りで行いたいと思っているところです」

 話は今後についてに移行するらしい。

 なので俺は黙って聞くことにする。


「よろしい。ならば朕が正式に命令と許可を出しておこう。ヴィリジアニラ・バニラゲンルートはミゼオン・アヴァロキタの活動に協力するように。諜報部隊の本部へミゼオンたちが立ち入る事を許可すると同時に、バニラシドOS研究所などへの立ち入りも許そう。これは後で書面でも出しておこう」

 ミゼオン博士の協力と言うと、『異水鏡』に映るノイズの件だな。

 アレの正体は反応の内容から考えて、チラリズム=コンプレークスか、フナカか、あるいはOSの研究に伴って出ている余波のようなものだと思うのだが……いや、まだ何かあるのかもしれないな。

 どうにも皇帝陛下はヴィリジアニラとは比べ物にならないくらい情報を持っているようだし、色々と裏で狙っていそうだな。


「かしこまりました。護衛と協力、させていただきます」

「承りました。皇帝陛下のご期待に沿えるように尽力させていただきます」

 ヴィリジアニラとミゼオン博士が頭を下げるのに合わせて、俺とジョハリスとメモクシも頭を下げる。


「陛下。少しよろしいでしょうか」

「どうした?」

 と、ここで皇帝陛下のお付きの方が声を出してから、何かを耳打ちする。

 すると、皇帝陛下は悩まし気な表情を少しだけ浮かべる。

 何かあったのだろうか?


「此処で動くという事は、やはりそう言う事か」

 その呟きを聞けたのが何人居ただろうか?

 ただ、皇帝陛下が目配せをすると共に、お付きの方々が一斉に動き出す。


「ヴィー。残念だが茶会は此処までのようだ」

「……。そうですか、本日はお招きいただきありがとうございました。では、慌ただしくなってしまいますが、私たちはこれで失礼させていただきます」

 ヴィリジアニラが席を立ち、俺たちもそれに続く。

 合わせてお付きの方によって温室の外へと案内されるわけだが、そのルートが行きの時とは大きく異なっており、明らかに誰かを避けるような道筋になっている。


「ヴィー。これは?」

「予期せぬ客。たぶんですけど、シンクゥビリムゾ王子ですね。皇帝陛下が居る、皇太子殿下が居る、皇后殿下も居る、私も居る、ミゼオン博士も居るとなって、偶々近くを通りかかったので挨拶をしたいと言われれば、普通の警備では中に知らせることは出来ても、止める事は難しいでしょうから」

「なるほど」

 俺は本体の目を凝らして、お茶会の会場を見続ける。

 見ればだいぶ赤い髪の男性がお茶会の会場に現れて、皇帝陛下たちに挨拶をしている。

 髪の色からして、やはりシンクゥビリムゾ王子だろう。


「現状では顔を合わせれば何があるか分かりませんし、何かしらの妙な事態になるかもしれない。だから皇帝陛下は私たちを下げたのでしょう」

「ふむふむ」

 この場に現れた理由は……最初にミゼオン博士を招くことを決めた張本人みたいだしなぁ。

 色々とありそうだ。


 ただ、マガツキのOSや妙なmodの形跡などは、王子自身はもちろんの事、その周囲にも感じ取れない。

 自分の意思でやってきたことは間違いないようだ。


「ただ、相手の目的などを探るためには情報が足りません。場合によっては、シンクゥビリムゾ王子にこそ正当性がある可能性だって、現状では否定は出来ません。なので……メモクシ、情報は?」

「受け取っています」

「では、まずはそこから始めましょうか。まずは両方から情報を集める事が必要です」

「分かった」

 そうして俺たちは温室を後にし、来た時とは別の道順で以って、帝城を後にするのだった。

04/11誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 覚えている範囲ではこれまでは全て半角だったOSがこの話では全て全角になっていますが、誤字でしょうか
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] バカとは思わないけど、何かが欠けている予感はあるんですよね
[良い点] ついにシンク王子と接近へ [気になる点] 異水鏡もノイズ: もしかして新しい観測機へのチラリズムしてただけ? フナカ・コンプレークスの反応と疑われててある意味で暗躍してたフナカ氏は可哀想な…
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