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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
5:シブラスミス星系

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211/319

211:報酬のお店

「此処がそうですね」

 マガツキ改めシュウ・スーメレェの一件から数日経った。

 まだ、その後の捜査と調査は終わっていないし、弾圧派の個人コロニーが大規模な誘拐組織の拠点であったことが明らかにされた余波も残っているが、シブラスミス星系全体としては落ち着きつつあるのが現状である。


 なお、流石に事件の規模が規模であったために、ヴィリジアニラの船である『カーニバルヴァイパー』の改修にも少し影響が出て、予定が少し伸び、完了までにあと数日はかかりそうな感じである。

 まあ、これについては俺たちの誰も困る事ではないので、問題はない。


「見るからにお高い店っすねぇ……」

「一見さんお断りって言うのも納得だな……」

 さて、周囲についてはこれくらいにして、俺たちの目の前について。

 今日の俺たちは、シュウ・スーメレェの件の報酬の一環として、第三プライマルコロニーの中でも特にお高いお店に来ている。

 一見様お断りなこの店の名前を『アキラ寿司』と言い、バニラシド星系、グレトファーム星系、ニリアニポッツ星系と言った周囲の星系から海洋魚を生きたまま輸入し、この場で捌き、寿司として客に提供しているお店だ。


 当然ながら、魚を生きたまま輸入するのは手間がかかるので、お高いものになる。

 また、魚を捌くのは特殊な技術の一種であり、美味しくと言う枕詞も付けるならなおの事。

 そして、それぞれの星系ごとの環境の違いと、複数の星系から魚を輸入しているという事実を組み合わせると、それだけ味の調整などに手間暇がかかる事を示している。

 勿論、魚以外にも、一流の料理を出すためには必要な準備や手間暇と言うのが沢山あるので……うんまあ、これで安くするのは、よほどの大企業でもなければ無理だろう。


「ようこそいらっしゃいました。ヴィリジアニラ様ですね」

「ええ、その通りです」

「ではこちらへどうぞ。個室をご用意させていただきました」

 当然だが店員さんの対応も丁寧だ。

 で、通されたのは、カウンターの一角を区切って作られた半分個室のような部屋。

 なるほど、modによって他の個室の様子を視覚や聴覚で認識することは出来なくなっているようだ。

 しかし、カウンター向こうにある厨房はちゃんと見えて、魚を捌いて寿司にする光景が見えるようだ。

 また、厨房からも個室の様子は見えているので、他の客を気にする必要はないが、犯罪の温床になる事もない、と言う形になっているようだ。


「おお、色々と並んでいるっすねぇ……」

「本当だな。名前を聞いたことがある魚も居れば、聞いたこともない魚も居る」

「そうですね。帝星バニラシドのアンダー区画で漁獲された魚も居ますが、そうでない魚も……品揃えが凄いですね」

「お茶でございます。注文がお決まりになりましたら、お手元のタッチパネルでご自由にご注文くださいませ」

 俺は出されたお茶を口に含む。

 ああうん、このお茶一杯を取ってみても、この店の質の良さが窺えるな。

 程よい温度、程よい香り、さっぱりとした口当たりで、寿司を食べた後の口直しとして非常に適している感じだ。


 で、肝心の注文だが……幾ら今日の支払いがシブラスミス星系側が持ってくれるとは言え、メニューの端から端まで一通りと言うのをやったら、怒られそうだ。

 先述の通りに複数の星系から魚を輸入しているからか、種類がとにかく多い。

 後、値段が決まっているものもあるが、殆どの物は時価になってる、怖い。


「サタ様、ジョハリス様。迷ったなら店側のおススメを出してもらえばそれでいいと思います」

「そうですね。まずはそうしましょうか。個別に食べたいものがあれば、後で注文すると言う形にしましょう」

「そ、そうだな」

「そ、そうっすね」

 ぶっちゃけた話、俺とジョハリスはちょっとビビっている。

 いや、グログロベータ星系でのホテルの食事や、フラレタンボ星系の伯爵のお茶会のように、こういう高級感あふれる場所での経験がないわけではないんだが、何と言うかこう、気後れしている。

 よく見たらと言うか、触ってみたら、机も畳も本物の植物を使っているようだし、シブラスミス星系の居住可能惑星がないと言う特徴まで加味すると、本当にヤバいくらいに手間暇とお金がかかっているぞ、このお店。


 しかし、普段は庶民的な面も見せるヴィリジアニラがこういう場面で一切気後れしていないのを見ると、やはり貴族と言うか、皇帝陛下の庶子である事がよく分かるな。

 メモクシ?

 こういう場面でビビる機械知性はそう設定されていない限りは居ないので、ノーカウントです。


「では、本日のおススメをとりあえず三人前、と」

 ヴィリジアニラが注文した。

 と同時に、カウンターの向こうで清潔感に溢れたシェフ……いや、寿司だから板前さんが動き出す。

 見るからに切れ味のいい刃物で魚の身を切り、酢が適度に利いたご飯の上にのせて、握る。

 中にはそれだけでなく炙りを利かせるものや、握るのではなく海苔を巻いたりと言った工程を踏むものもあるが、基本はそうだ。

 そうして出来上がったものが木の板に乗せられて、こちらへとお出しされる。

 出て来たのは……。


「「ゴクリ」」

「美味しそうですね」

 色とりどりで、ネタが輝いて見える、見るからに美味しそうな寿司たちだ。

03/04誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] >『アキラ寿司』 いや、バジリスクのTS巫女のアキラ…ではないか…
[一言] 唐突なメシテロが読者を襲う。 回らないお寿司行きてえなあ。(最近の回ってない回転寿司系は除く)
[一言] 今回の一件のご褒美として超高級寿司店(しかも一見さんお断り)に!これは素敵な時間を過ごせそうですね! 次回は高級寿司の飯テロが・・・
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