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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
5:シブラスミス星系

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202/319

202:マガツキの製造元

「今日の所はホテルに引き上げましょう。どうやら長引きそうです」

「分かった」

「分かりました」

「了解っす」

 ヴィリジアニラの言葉と共に、俺たちはレンタルした会議室を後にする。

 マガツキとスーメレェがどう動くかは分からず、何処に隠れているのかもわからない。

 となれば、俺たちに出来る事はなく、現地警察に任せる他ない。

 と言うわけで、俺たちは多少の警戒をしつつ、通常通りに戻る。


 戻って……一日が経ち……二日経ち……三日経った。

 うん、何も起きなかった。

 一日目は終始警戒していたのだが、二日目からは本当に何も起きないという事で、俺に限っては温室での研究を再開したり、パワードスーツの工房へ赴いて、パワードスーツ型の俺を操縦するためのコクピットの調整を行ったり、ちょっとした装備の追加をしたりと……色々と出来てしまった程度には何も起きなかった。


「うーん、此処まで何も起きないとなると、個人コロニーからの転移をマガツキがミスって、宇宙空間に放り出されてしまったとかなんすかね?」

「その可能性については否定できませんね。本当に何も起きませんから」

「マガツキ自身は宇宙空間に出ても大丈夫だろうが、スーメレェが宇宙空間で活動するなら高グレードの環境安定modが必要。仮にそれを持っていてももう三日だからな。転移の時点で宇宙空間に出てたら、普通なら死んでるな」

「マガツキが見せていない能力次第では、と言う事ですか?」

「そう言う事だな。そう高い可能性じゃないけど」

「まあ、サタみたいにポンポンと必要なmodを作れるなら、もっと別の動きをしてそうっすよね。で、それこっちにも伝わっていると思うっす」

 と言うわけで、現在はホテルに籠って雑談中。

 なお、『カーニバルヴァイパー』の改修については、もう数日すれば完了予定であるため、俺たちがシブラスミス星系を離れる時は確実に近づいてきている。

 このまま動きが無ければ……ヴィリジアニラ次第だが、未解決のままバニラシド星系へ向かう事もあり得そうだな。


「ヴィー様、サタ様、ジョハリス様。別星系からの情報が入りました」

「聞きます」

 と、ここでメモクシが口を開く。

 どうやら何かしらの情報が回って来たらしい。


「情報の内容はマガツキの製造元についてです」

「ああ、運送業者から聞いて、調べているって言ってたっすね」

 メモクシが室内の機器を操作して、回ってきた情報を全員に見えるように映し出す。


「えーと……んー?」

「これはまた奇妙な現象ですね」

「謎が謎を呼ぶって奴っすか」

 マガツキが製造された星系の名前は……聞き覚えがないものだが、特に気にする項目じゃないな。

 それよりも気にするべきはだ。


「御覧の通りです。運送業者がマガツキを刀剣専門の美術商に渡したその日、より正確に言えば、メモたちがマガツキの反応を探知した時間に、マガツキを製造した工房……ゼンスーサ工房の従業員37名全員が自殺しています」

 製造した業者が一人残らず死んでいると言う事実だ。

 それもただ死んでいるのではなく、目撃者と検死によれば、手近に刃物があった人間なら自らの喉を割いて、刃物が無ければ喉に爪を突き立てて無理やり裂くと言う、尋常ならざる死に方をしている。

 そして、死体からは薬物の類は検出されなかったが、極めて強力な身体制御modの残滓が確認されている。


「サタ様。残滓の内容の確認をお願いできますか? ほぼ間違いないと思いますが」

「分かった。ちょっと待ってくれ……ああうん、マガツキの身体制御modだな。構成が一致する」

 メモクシから身体制御modの残滓についての添付データが渡されたので、急いでその内容を確認する。

 うん、マガツキのだな。


「なるほど。では、このゼンスーサ工房の方々が亡くなったのはマガツキの指示によるもの。数星系離れているのに指示が届いたのはマガツキの力。これでいいとして、何故、わざわざ自殺させたかですね」

「何か重要な情報でも握っていたんすかね?」

「マガツキ製造に関する資料は一通り残っているそうです。なので、コチラの確認もお願いいたします」

 続けてゼンスーサ工房に残されていたマガツキ製造についての資料を確認する。

 えーと、それによればだ。


 ある日、工房に生物の骨のような形をした金属の塊が持ち込まれた。

 持ち込んだ人物は、この金属塊で刀を打って欲しいと依頼し、工房側はそれを受託。

 で、六本の刀が作り上げられた。

 とても出来が良かったらしく、残された資料には工房主の興奮した様子がつづられている。

 で、依頼主は特に出来の良かった一本を持ち帰り、残りの五本は売却。

 そのうちの一本がマガツキだったようだ。


「うげぇ、あんな刀があと五本もあるんすか……」

「一大事ですね。それに依頼主の捜索、残り五本の行方、調べるべきことが一気に増えてしまいました」

「だな。特に依頼主の捜索は重要そうだ。資料を見た感じ、依頼主は分かってて依頼している気配がある」

「そうっすか? あー、そうっすねぇ……」

「行方知れずになっているケースは依頼主が持ち込んだ物、ですか」

 なお、資料にはこうもあった。

 作成の際には依頼主が用意した手袋を着用して作業を行い、完成品は依頼主が用意したケースに納めて持ち運ぶように、最初に指示があったそうだ。

 作業に支障を来すような手袋ではなく、金払いも良かったため、その指示も守ったらしい。

 うん、ほぼ間違いなくこの手袋とケースとやらが、マガツキを製造中に体を乗っ取られないようにするための対策だったのだろう。

 で、分かっていなければこんな指示は出せないため、依頼主は完全にクロだろう。


「依頼主の名前は偽名で行方知れず。怪しいのは……『黒の根』でしょうか?」

「あるいは宇宙怪獣モドキの黒幕、つまりはシルトリリチ星系の人間」

「現場で動いていたのは『黒の根』で、裏で糸を引いているのがシルトリリチ星系の人間ってのが当たりな気がするっす」

 依頼主の正体は……予想は付くが、深くは考えないでおこう。

 俺たちが手を出せる距離には居ない。


「さて問題はどうやってこの情報をマガツキの捕縛あるいは討伐に生かすかですね」

「人類に敵対的だって事はもう確定でいいっすけど、逆に言えばそれだけっすよねぇ」

「残されていた金属の組成比みたいなデータがあるわけじゃないしなぁ……。ああ、持ちこまれた金属塊からして、元はもっと大きな宇宙怪獣だった可能性が高くなったと言うのは言えるか」

「ひとまず帝国全域にマガツキと同型の刀についての注意報は出されました。現状ではこの程度ですね」

 マガツキの正体の一端は見えたのかもしれない。

 元はもっと大きな宇宙怪獣で、それが再構成されて刀の形にされたと言うものだ。

 しかし、現状を動かせるような材料ではないな。

 うーん、マガツキたちは今何をしているんだ?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしかして、刀だった状態から、また溶かされて鋼材になって船に組み込まれて、その船が新しい体になっていたりして。搭乗したら支配されるみたいな。
[一言] > 戻って……一日が経ち……二日経ち……三日経った。 > うん、何も起きなかった。 TRPGならGMがマスタースクリーンの裏で1日1回、もしくは朝晩、あるいは朝昼夜の3回ダイスふって「何も起…
[一言] 生物の骨のような形をした金属の塊、絶対宇宙怪獣の一部じゃないですかー 宇宙怪獣の影響を無効化する道具ふつうの技術じゃないし持ち込んだ人物はやはり黒幕かな それにしても複数ある持ち手を操る、E…
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