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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
5:シブラスミス星系
196/319

196:弾圧派

「メモ。捜査機関への連絡は?」

「既に済ませてあります。直ぐにでも対応は始まるかと」

「分かりました」

 俺たちは第三プライマルコロニーの路上から、ホテルよりも手近な場所にあったレンタル会議室の中へと移動する。

 そして、防諜対策を済ませてから状況を確認していくわけだが……。


 まず、メモクシが『異水鏡』によってマガツキを探知した。

 で、ジョハリスの協力によって、相手の詳細な位置を確認。

 此処に移動してくるまでの間に、メモクシはシブラスミス星系の捜査機関に連絡を完了。

 つまりは、俺たちが取るべき初動については、既に終わっていると言っていい。

 なのでここからは状況を把握しきれていない俺とヴィリジアニラの為の説明だな。


「では、何処で探知したのかの説明をお願いします」

「かしこまりました」

「分かったっす」

 なお、ジョハリスはメモクシの中に入ったままである。

 既に反応はないそうだが、また何時反応が出てくるか分からないからだな。


「今回メモが探知した場所は此処ですね」

 メモクシの目からシブラスミス星系全体を表すホログラムが発せられ、ホログラム内の一点に赤い光点が表示される。

 どうやら、この光点がある場所でマガツキの反応が観測されたようだ。

 で、観測された場所の周囲には……。


「第六プライマルコロニー、建造途中の戦艦『ジチカネト』の近くか」

「そうですね。ただ、正確に場所を調べたところ、マガツキがそのどちらかに触れられる位置ではなく、個人所有のコロニーがある位置でした」

「コロニーの所有者は?」

 大まかな位置としては第六プライマルコロニーの近く。

 正確な位置としては個人所有の小型コロニーと重なる位置。


「コロニーの所有者は個人投資家の男性ですね。一見すると株式市場で荒稼ぎをしています」

 コロニーの個人所有は……規模にもよるが、宇宙船を一隻所有するのと同じくらいに費用が掛かるものではあるし、星系の管理者に建築許可を貰う必要があるので手間も掛かる。

 だがそれでも、仕事、あるいは何かしらの事情で個人用のコロニーを所有する人間は居る。

 そして、安全面や利便性を考えれば、プライマルコロニーから適度に離れた場所に個人コロニーがある事は何もおかしな事ではないな。


 で、メモクシが示した個人投資家の男性と言うのは……まあ、コロニーを持っていてもおかしくない人物ではあるか。


「一見すると、ですか」

「はい。先ほど諜報部隊から連絡があったのですが、この男性は弾圧派の疑いがかかっているようです。そして、このコロニーはそのための拠点ではないかと言う疑惑もあるようです」

「なるほど……。証拠がないからまだ泳がせていただけ、と言うところですか」

「恐らくは」

 弾圧派。

 えーと、俺の記憶が確かなら、ヒューマンだけを人間だとして、それ以外の人種を亜人として排斥、弾圧、奴隷化を求めている思想や信条の事だったか。

 当然ながら今の帝国にはそぐわない考えであるし、公に口にすれば白眼視待ったなしの考え方でもある。


 なお、ヴィリジアニラの表情が僅かに怒気を含んでいる事からも分かるように、弾圧派の思想では俺、メモクシ、ジョハリスは間違いなく排斥の対象であるし、弾圧派の中でもmodによる人体強化すら否定する連中だとヴィリジアニラも排斥の対象になる。

 うん、間違っても俺たちとは仲良く出来ない連中だな。


「さて、そうなると、此処からどう動くかですね」

「だな。とは言え、俺たちが動くのはほぼ無し。あっても、事が終わってから、別口での実況見分が必要になってからだろ」

「サタ様に同意します。今は現地当局に任せて静観するほかないかと」

「っすね。ウチたちは此処から探知に専念するのが現状では最良っす」

 これからどうするかは……相手次第の面が大きいな。

 この個人コロニーがマガツキの身内か否かでも対応が変わってくるし、マガツキが新たな体を得ているかどうかでも話が変わってくるからだ。

 下手をすると、既にマガツキは新たな体を得た上で、使い捨ての異相空間を経由して第六プライマルコロニーか『ジチカネト』の内部に潜り込んでいる、と言うところまであり得るのが現状だろうし。

 ああそうだ、一応、この個人投資家の男性とやらの頭の出来や情報収集能力も現状の変化には関わってくる話だな。


「……。そうですね。待ちましょうか。ただ、一瞬とは言えマガツキの反応があった時点で、既に洗脳による被害者は出ていると考えるべきでしょう。誰が被害に遭ったと思いますか?」

「ん? 個人コロニーなんだから、この個人投資家の男性じゃないっすか?」

「いいえ。ジョハリス様、個人コロニーだからこそ、各種施設の整備点検や清掃などの家事の為に人を雇っている場合がありますので、彼らが被害に遭った可能性は十分にあります」

「あ、なるほどっす」

 普通に考えれば、マガツキは宇宙空間を漂っていたはず。

 それを最初に手にするとなれば、コロニー外壁の掃除や点検を担当する人間だよなぁ……。

 マガツキの身体制御modは第五プライマルコロニーの時に見た限りでは、操られる側の事をまったく考慮していないものだったし……まあ、色々と絶望的だろうな。


「後、気になるのはマガツキが狙ってそのコロニーに来たか、本当は第六プライマルコロニーに刺さるつもりだったのかだな」

「前者なら、個人コロニーの中に今後必要なものが揃っている可能性もありますね」

「後者なら、ただの偶然、マガツキにとってはある意味不運、ですか」

 後は必然か偶然か……対処する側としては偶然の方が嬉しいところだな。

 メモクシの言う通り、必然だと、マガツキにとって必要なものが個人コロニーの中に備蓄されている可能性が出てくる。


「いずれにせよ待つしかないっす……次の反応が来たっすね」

「そのようですね」

「「……」」

 さて、マガツキは個人コロニーの中で何かをやっているようだ。

 これは……現地に俺だけ飛ぶのも一つの手かもしれないな。

02/20誤字訂正


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告 弾圧派の中でもmodによる人体強化すら否定すら連中だとヴィリジアニラも排斥の対象になる。 否定す『る』連中 ですかね
[一言] 弾圧派・・・うわ凄く時代遅れでムカツク思想ですね! それにしてもマガツキがここに現れたのは偶然なのか必然なのか・・・
[一言] 側に建造中の新型戦艦とか頼むからそっちに飛び火しないでお願い。 しかし弾圧派…思想とかそういうのはある程度は個人の自由ですが、これは許される範囲を越えているような連中ですね。
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