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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
5:シブラスミス星系
195/319

195:たっぷりブリトー

「いらっしゃいませー」

 本日の昼食はブリトーである。

 ブリトーとは簡単に言ってしまえば、薄く大きく焼かれた小麦粉の生地で各種具材を包み込んだものであり、具材は商品や店ごとに様々だ。

 なお、大きさについては、一つで一食分になる程度のものである。

 と言っても、今回俺たちが訪れた店は観光客向けという事で、労働者向けの物に比べると一回り小さいものなのだが。


「色々とありますね」

「そうっすね。具材も色々なら、ソースも色々っす」

「ふむふむ」

 さて、この店で頼めるブリトーは……基本となるのは生地、葉物野菜、肉や豆を炒めたもの、特製ソースを合わせて丸めたもののようだ。

 変化の付け方としてはソースの味付けを変える、炒めるものを変える、炒める際の味付けを変える、敷く葉物野菜を変えるなど、色々とある。

 ただ、観光客向けを意識してなのか、どういう味なのかをざっくりと紹介してもあるな。

 見慣れない食材でもイメージが湧きやすいのはいい事だ


「では私はこの甘めのを頼みましょうか」

「ウチはナッツ類多めのコリコリした奴にするっす」

「さて俺はどうするかな……」

 ヴィリジアニラが頼んだのは果物や野菜がメインになっている奴で、ソースも砂糖と乳製品が多めな、量が少なければデザートにも出来そうなものだ。

 ジョハリスが頼んだのはクルミや大豆、根菜がメインになっている奴で、歯ごたえがありそうなものだな。

 で、二人が頼んでいる間に俺は妙なものを見つけた。


「ふうむ。レトロスタイル……頼んでみるか」

 どうやらシブラスミス星系の開拓が始まった頃に労働者の間で食べられていたものを復刻したものであるらしい。

 うん、折角だから頼んでみるか。


「お待たせしましたー」

「ありがとうございます」

 と言うわけで購入し、店から少し離れた場所に移動。


「では、いただきます」

「いただくっす」

「いただきます」

 そして、三人揃って食べ始める。


「美味しいですね」

「そうっすね」

「ふむふむ、なるほど」

 さて俺の頼んだレトロスタイルだが……どうやら保存が利く食材の詰め合わせと言う感じのブリトーであったらしい。

 香辛料が効いている上に粘性の高いソースを絡めて炒められた具材の中身は、塩気の効いたベーコンや、茹でで潰した豆類やイモ類、熱せられてとろけたチーズに脂、保存が利くように加工された野菜を刻んだもの、十数種類の具材が混ざっているようだ。

 全体的に味は濃く、辛く、塩気が強く、開拓作業で失われた栄養分を補うように、元気を取り戻すようにガツンと来る感じがする。

 多少脂っこさもあるが、腹に貯まっていく感じも凄いし、なるほどこれならば、これ一つで一食分になると言うのも頷ける。


「サタが食べているものは、ソースや具材が零れないようにする工夫などもあるみたいですね」

「だな。その為の粘度の高いソースか」

「場合によっては作業場で食べても問題ないって感じっすね」

 ヴィリジアニラの手や口には少しだがソースが付いているのが見える。

 が、俺の手や口にはそう言うものは見えない。

 食べ方の丁寧さで言えばヴィリジアニラの方が丁寧であるはずなのにこういう差になったのは、俺が食べているレトロスタイルのソースの粘性の高さが故にだな。

 ぶっちゃけ、粘度が高いから、普通に噛み切れるし、噛み切った場所から具材が零れたりもしない。

 こう言うのも現場で作業している人間向けという事なんだろう。


「ヴィー様、サタ様、ジョハリス様。お飲み物をお持ちしました」

「ありがとう、メモ」

 と、ここでメモクシが飲み物を持ってくる。

 えーと、どれもホットのお茶だな。

 うん、美味しい。

 口の中で固まりかけていた脂が洗い流されるようだ。


「やはりこういう食べ物の時は温かい飲み物ですね」

「っすねー」

「だなぁ」

 そう言えば、真偽のほどは定かではないが、人の体温よりも融点が高く、消化に難がある脂を食べる時には、冷たい飲み物ではなく温かい飲み物を飲んだ方がいいと言う話があったな。

 なんでも、冷たい飲み物だと腹の中で脂が固まってしまって良くないだとか何とか……。


 まあ、そんな事を考えつつも、黙々と残りのブリトーを食べて、飲み物を飲み干す。

 うん、美味しかった。

 これは満足が行く品だったな。


「さて、今日はもうホテルに戻りか? ちなみにホテルに届いた植物たちはもう温室に運んである」

「流石ですサタ。それで今日については……そうですね、もうホテルに戻っていいと思います」

「分かったっす」

「かしこまりました」

 今日の予定はこれで終了だろう。

 と言うわけで、俺たちはホテルに向かって歩き始める。


「……。ジョハリス様、『異水鏡』を」

「分かったっす」

「「……」」

 そして、数歩動いたところで、メモクシがジョハリスに協力を求めた。

 メモクシは改修によって体内に『異水鏡』を搭載すると共に、専用に調整された液体を使う事で、常時簡易的な『異水鏡』を使える状態になっている。

 その状態の『異水鏡』で何かしらの反応があったから、ジョハリスに入ってもらって、本格的な探知を行うようだ。


 で、今のシブラスミス星系で『異水鏡』に引っかかる存在は俺かマガツキの二択だが、唐突に反応が現れたと言うのなら、マガツキでほぼ確定だろう。

 さて、第五プライマルコロニーから逃げ出して初めての反応になるわけだが……何処に居るんだろうな?

 とりあえず俺は『異水鏡』による探知を行っているメモクシとジョハリスだけでなく、ヴィリジアニラも守れるように本体含めて位置取りを調整しておく。


「見つけました」

「メモ、何処ですか?」

「宇宙空間……いえ、どうやら個人所有のコロニーがあるようです」

 そうして『異水鏡』の探知による調査の結果割り出された場所は、個人所有のコロニー内と言う、捜査に当たっては地味に厄介な場所だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] modの存在するこの世界でもmodを使用しない工夫は存在しているんですね 個人所有のコロニーとは、協力してくれればいいのですが
[一言] ブリトーといえば映画バトルシップ(ってことは人伝に聞いた)
[一言] 噛み切れるほど粘性のあるソース……労働者向けに色々工夫したんだなぁ 個人所有の場所に行くのは中々面倒そうだな
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