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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
5:シブラスミス星系
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193:植物専門店

「今日の様子はどうだ?」

 パワードスーツの調整はもう数日かけて、地道にやっていく事になった。

 もう何度か直接会っての調整が必要そうだが……まあ、『カーニバルヴァイパー』の改修が終わるまでには目途がつく事だろう。

 で、その翌日。


「『異水鏡』には異常は見られません」

「ログと言うか痕跡も無いっすね」

 まずは朝一で宇宙怪獣マガツキの活動が見られないかの確認。

 メモクシとジョハリスの言葉からして、『異水鏡』については何の反応も示していないようだ。

 それはつまり、マガツキが積極的な行動を起こしていないという事である。


「ヴィーは?」

「私の方も同様ですね。シブラスミス星系内では普通の事件しか起きていないようです。強盗も殺人も起きていますが、どれも直ぐに犯人は捕まっています」

 ヴィリジアニラの目にも反応はなし。

 なお、強盗や殺人が起きているのがいつも通りと言うのは……まあ、こればっかりは人間の業と言う奴なんだろうな。

 今の帝国では殆どの事件は起きて直ぐに解決されるし、殆どの事件は計画的なものではなく衝動的なもの。

 メーグリニアのような特異な手段が無ければ、帝国の最新技術によって簡単に痕跡を辿られて、犯人であると証明されるからだ。

 だから賢い人間はまず犯罪には走らないし、多少でも頭が回るならニリアニポッツ星系の件のように捜査する側も巻き込んだ組織的なものになる。

 だがそれでも犯罪そのものは無くならないのだから……うん、やっぱり人の業としか言いようがないだろうな。


「そう言うわけですので、今日も観光と視察をしつつ待機になりますね。なので……今日はサタの温室の為に植物の種でも買いに行きましょうか」

「分かったっす」

「かしこまりました」

「了解だ」

 まあ、今重要なのは、俺たちが関わるべき事件は起きていないという事だ。

 と言うわけで、外出の準備を整えた上で、俺たちは第三プライマルコロニーの植物専門店へと向かう。


「いらっしゃいませー」

 植物専門店は第三プライマルコロニーの中でも、特に治安が良いエリアにあった。

 店の前には警備の人間が複数人立っているし、周囲には人気はあれど整然としている。

 周りの店の品揃えも高級品、貴重品が多いようだ。


 さて、そんな高級品のエリアに何故植物専門店はあるのか。

 これには勿論、理由がある。


「やっぱり外に比べると空気がいいな」

「そうですね。酸素が濃いように思えます」

「フラレタンボ星系をちょっと思い出す空気の澄み具合っすね」

「……」

 此処で扱われているのはイミテーションではなく、生の植物だ。

 そして、扱いやすい種子の形だけではなく、植木鉢に植わっているものも少なくない。

 その状態の植物は当然ながら、大量の水を吸うと共に、光合成をおこなって二酸化炭素を減らし、酸素を増やす。

 少量……個人の家で栽培できる範囲ならば、あるいはこういう店で扱われるような普通の植物ならば、幾ら光合成を行おうと問題はない。

 コロニーの側で生産する酸素の量を調整すればいいだけだからだ。


 しかし、帝国の中には、小規模なコロニーで酸素生産を一手に引き受けられるような爆発的な光合成を行う植物もあれば、少し扱いを間違えればコロニー中を緑のマットで覆いつくすような恐ろしい繁殖力を持つ植物も少なからずある。

 そう言うものが制御を失ってコロニー内で蔓延れば……当然ながら、碌な事にはならない。


 だから、植物専門店と言うものが存在し、その手の植物がコロニー内に入ってこないようにすると共に、誰が何を購入したのかを記録している。

 そして、それだけの技術と知識が必要だから、商品そのものも高価になって、植物専門店は高級品が多いエリアに軒を並べているのである。


「さて、何を育てるかだが……まず第一に、食べられるものか薬効がある種類である事だな」

「そうですね。サタの温室で育てるのですから、観賞用や空気調整用は外すべきだと思います」

「量が期待できない以上は少量でも効果があるものが望ましいっすよね」

「となれば香辛料の類でしょうか。個人的には胡椒や唐辛子などは如何でしょうか?」

 閑話休題。

 さて、何を育てようか?

 植物専門店の中には、観賞用の物から食用のものまで、何百何千と言う種類の植物が売られている。

 今居るエリアは既に花まで付けているものもあるし、植木鉢に植わっているものも多く、ある程度以上に育っているものが並んでいるようだ。

 別フロアには種子が専門的に売られているところもあるし、珍しいところだと水草専門のフロアもあるようだ。

 ああ、初心者向け含めて、植物の育て方についてのデータを売るのに特化したフロアもあるな。

 流石は数階あるビル全てを植物専門店にしているだけの事はある。


「ああそうだ。改めて言っておくが、俺が育てる以上、ちゃんと育つ保証はないからな。そこだけは忘れないでくれ」

「分かっています。収穫の後は一度検査に出してから、ですよね」

 俺たちは商品を見ながら、何を育てるかを話し合いつつ、種子専門のフロアへと向かう。

 エーテルスペースで育てる以上、まずは問題と言うか影響を調べるのに適した植物があると、後が楽になるんだが……そう言うものはあるだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 犯罪そのものは無くならない・・・たとえどんな時代でもどんな世界でも人の業は変わらないのですね・・・ 植物専門店のアレコレ→あーそうかこの世界には取り扱い注意なビックリ植物が色々あるから・・…
[一言] 温室用の新たな植物、アウターワールド的に南瓜と薔薇とシダ植物辺りが良いのでは?(お目目ぐるぐる)
[良い点] ハイハイ。植物育てるのも、花より団子(  ̄▽ ̄) ま……面子的にもね。 [気になる点] 結果が直ぐ出る系だと、二十日大根とかだけども。サタさん温室だと、でっかくすくすく育ち過ぎそう(笑)…
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