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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
5:シブラスミス星系
187/319

187:どう対処をするのか

『もう少し詳しく知りたい。特に持つという定義についてだ』

「それは必要なのですか? 持つは持つでしかないでしょう?」

 さて、刀型宇宙怪獣についての話は続いている。

 そして流石はお偉いさんだな。

 現場の人は気づかなかったのかもしれないが、そこに対して疑問を持てるのか。


『我々、普通の人間にとってはそうだ。だが、相手は宇宙怪獣の上に刀の形をしていて、我々とは根本的に別の存在だ。そんな存在の言う持つが我々の持つと同義であるとは誰も保証できないだろう? そして、判断が誤っていれば、少なくとも持った人物の人生は終わる。これが看過できるリスクだとは私には思えないな』

「「「!?」」」

「サタ、どうなのですか? 相手の持つは私たちの持つと同じですか?」

 そう、持つことが条件であるのは、残留しているmodから解析できた。

 だが、この持つと言う条件が、俺たちの想像する持つとイコールで繋げられるとは限らない。

 宇宙怪獣……別のOSを持った存在と言うのは、そう言うものだからだ。

 そして、残念ながらお偉いさんの言葉に対して、俺はこう返すしかない。


「残念ながら、相手の持つがどの程度のものなのかは、明確には分かりません。回収できたmodから逆算できるOSには限りがありますので」

 分からない、と。


『そうか。では、持ち手を持つ以外にも、超能力やロボットアームでの持つも対象になる可能性は十分にあるわけだな。最悪は……所有するでも、持つに該当するパターンか。そうなれば、保存すらしていられない』

「はい。その可能性は十分にあります。なので最適解はそれこそ関わらない事。他のコロニーとの接触がないのであれば、そのままシブラスミス星系外の宇宙へと自然に去るのを待った方が最適だと思うくらいです」

『関わるのであれば……相手を捕捉した後に進行方向上に分解炉でも用意して自ら突っ込ませるのが正解……いや、相手はハイパースペースのような空間に逃げ込めるのだったか。なるほど、そう言う意味でも関わらないのが最適ではあるか』

 なにせ、斬ればシールド貫通をされた上に、並の硬さでは全く防げない切れ味。

 持てば一瞬にして洗脳されて、道具にされてしまう上に、持つの定義が不明なので、少し触る事すら危険。

 追い詰めようにも使い捨ての異相空間を利用して時空跳躍をしてしまうので、追いかける事すら普通ならままならない。

 modの出力は当然のように宇宙怪獣仕様で、人間では太刀打ちが出来ない事は明らか。

 そんなわけで、最適解としては関わらないになってしまう。

 正直なところ、俺も洗脳については防げるであろうだけで、出来る事なら関わりたくないタイプの宇宙怪獣だ。


「関わらないのが正解……だがそれでは民衆に示しが……」

「所有は論外として、しかし、放置をするのが本当に正解なのか……」

「そもそも、こんな物騒な代物は一体どこから出て来たと言うのだ……」

『うーむ、確かに関わりたくはないな。だが、破壊する手段の模索は必要ですぞ』

『正確な行方が分かっていないと言うのも困るな』

『だが、探そうにもこの広大な宇宙で、あんなサイズの棒きれ一つだぞ。あまりにも小さすぎる』

 さて、俺がそんな事を心の内で思っている間も、他の人たちは話をしている。

 現状で一番怖いのは……そうと知らずか、あるいは欲に駆られてか、もしくは持つの定義を拡張してか、とにかく刀型宇宙怪獣に触れて操られる人間が再び出る事だろうか。

 既に見つけても手を出すなと言うニュースは駆け巡っているだろうが、全員がそれを聞いてくれるとは限らないだろうしなぁ。


『サタ様。念のためにお伺いするが、今回の相手と我々が交渉する事は可能だと思うか? そうだな、例えばだが、死刑囚にわざと持たせると言う形でだ』

 モニター向こうのお偉いさんの一人が俺に話しかけてくる。

 交渉、交渉かぁ……。


「不可能とは言いませんが、止めておいた方が無難だと思います」

『根拠は?』

「相手の初手は人間を道具として扱うものでした。そして二手目はどのような経緯かは不明ですが、背後から人間を殺害すると言うもの。その上三手目は気遣って声をかけた人間への不意打ち。どれも敵意と害意に満ちたものです。つまり、相手はこちらを道具か獲物としか認識しておらず、対話の意思を……下手をすれば概念自体持ち合わせていません」

『……。そうか、サタ様がそうでないから、余地があるのではないかと思ったが……。いや、そもそも、サタ様と刀の宇宙怪獣とでは、またOSが違うから……そうか、これがOSが違うという事なのか……失礼した。今の私の発言は妄言の類として処理しておいてほしい』

「いえ、あらゆる可能性の検討を忘れない、良い発言であると思います。貴方のような方がいらっしゃるからこそ、俺のような者も帝国の民として、支障なく生きていられるわけですから」

 うん、刀型宇宙怪獣との対話は無理だろう。

 俺とは土台から……いや、OSから違うし、成長環境も違い過ぎる。

 交渉の考えを忘れて欲しくはないので、フォローはするけれど。


『結論は出た』

 さて、その後も話し合いは続いて、これからどうするかは決まった。


『まずは刀型宇宙怪獣……仮称マガツキの発見を。行方を知らなければ、対応も何もない』

 まずは捜索。

 当然と言えば当然だな。

 なお、刀型宇宙怪獣には、禍々しいものが憑く、と言う事で、マガツキの仮称が与えられた。


『そして見つけたならば、進路上にあるコロニーを多少無理やりでも構わんから移動して、接触させないようにしろ』

 次に可能ならば回避を。

 対処しようにも、あまりにも難しいからだ。


『コロニーに乗り込まれて体を得たならば……体を処分した上で、改めて対処を模索する。理想は破壊だ。所有や解析は考えようとしなくていい』

 回避が出来なければ、被害を抑える方向で。

 そして、可能ならば破壊を。


『それでは各自、自らの役目を果たしてもらいたい』

「「「了解いたしました」」」

 そうして、対マガツキの動きが始まった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] こういうのって名前をつけると逆に危なくないっすか?
[良い点] 宇宙怪獣なんでもありなら宇宙怪獣を積極的に探し出して殺す宇宙怪獣とかもいてもおかしくないのかな もしいたらサタに出会わなければ帝国人として過ごすこともできなくはないかもしれない……まあ…
[一言] >体を得たならば……体を処分した上で、改めて対処を模索する。理想は破壊だ。所有や解析は考えようとしなくていい 某聖女A(アドバイザー)「そうです。持ち主を操る厄物は即座に処分すべきです。まず…
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