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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
4:ニリアニポッツ星系
158/319

158:古式ライフルレース会場

「会場はもう出来ているんだな」

「そうですね。古式ライフルレースはルート選択の自由こそあれど、全員が同じ舞台で競うようになっています」

 ヴィリジアニラが観戦する貴賓席に到着した。

 貴賓席の窓から競技場所を見てみれば、既に自在変形式総合演習場の機能を生かした会場設営は終わっている。

 ざっと見た限りだと……古式ライフルのパーツが各部位ごとに十数種類置かれているエリアに、回収したパーツを組み立てるためのエリアに、組み上げた古式ライフルを持って走り回った上で的を撃つエリアの三つに分かれているようだ。

 少し気になるのは、古式ライフルで撃つ的の一部がやけに貴賓席に近い事か。

 発射場所次第では、貴賓席に弾丸が飛び込んできかねない位置だ。


「安全対策は……バッチリみたいだな。まあ、そうでもなければ、あんな位置に的を置けないか」

「当然です。万が一の事故が起きないからこそ、こういう席には見応えがあるとされるのですから」

 が、そんな俺の懸念を読んだように、部屋にはシールドmodが搭載されており、俺たちが部屋の中に入った時点で稼働を開始したようだ。

 出力は……軍用の宇宙船並みだな、俺の本体なら容易く引き裂けるが、個人携行用の火器程度でどうにか出来るようなものじゃない。

 おまけにシールド貫通mod対策なのか、部屋を構成している素材自体の強度を上げるような強化modも展開されている。

 これならば、この部屋の間近で大爆発が起きたとしても、この部屋の中にまで被害が及ぶことはなさそうだ。


「うーん、パーツの数と種類からして、取り合いが発生しそうっすね。パーツの取得って抽選っすか?」

「抽選ではなく早い者勝ちですね。一応、必要以上にパーツを取る事は禁止されていますが……ほぼ確実に取り合いは発生しますね。そして、パーツ同士の相性によっては噛み合わせが悪く、会場に用意されている器具で調整する必要が生じる場合もあります」

「うわー、大変っすね。調整ってタイムを競うような場所でやるような事じゃないっすよ」

 ジョハリスとメモクシの言葉が聞こえてくる。

 ただ、この位置からだと、どういうパーツがあるかの詳細までは、人形の目でも本体の目でも分からない。

 なので、俺は簡易の望遠modを組んで目に適用し、パーツ置き場を見てみる。

 なるほど、弾を飛ばすための筒の部分に限っても、素人目でも分かるぐらいに太さや長さ、色に差があるようだ。

 そんなに違いがあるのなら、確かに他に選んだパーツ次第では繋げることも出来ないし、そうなったら炉のように見えるものまで準備されている場所で調整するしかないのだろう。

 と言うかだ。


「これ、場合によっては弾が見当違いの方向に飛んでいくどころか、銃身が破裂するような爆発が起きるんじゃ……」

「起きますよ。だからこそ、選手はシールドmodの使用が義務付けられています。でないと危険すぎますから」

「なるほど」

 古式ライフルの組み立てが甘ければ、弾は見当違いの方向へと飛んでいく。

 自作した弾丸も含めて、全体の相性が極めて悪ければ、銃身が爆発して弾ける。

 相性が良くても、火薬の量が多すぎたりしたら、それはやっぱり爆発する事になるだろう。

 うーん、過酷だ。


 と言うか、無事に完走するだけでも、あらゆる方向の知識を高い水準で求められることになるレースだな。

 古式ライフル銃そのものの知識、狙ったパーツを取れるだけの体力と運、組み立てる器用さ、弾丸を作れるだけの調合能力、組み上げたライフルを扱えるだけの身体能力、万が一の際のリカバー能力。

 他にも色々と求められる事だろう。

 本当に過酷だ。


「ん? ああ、それくらいの対策はしてあるよな、そりゃあ」

「サタ、どうしましたか?」

「いや、会場に使われているmodを確認したんだけどな。パーツが置かれているエリアに静電気防止と爆発抑制のmodが使われてる」

「ああ、万が一の為の防止策ですね。公式のパンフレットにも載っている話ですね」

「ああ本当だ。書いてある通りだな」

「参加されている方もプロなので、効果が発揮されること自体稀ですけどね」

 と、本体で会場のあちらこちらをこっそりと触って、使われているmodを確かめていた俺は、火薬周りについては他よりも厳重な防護が敷かれているのを確認する。

 内容としては、静電気による放電現象が発生しないようにするmodと、万が一引火した際には燃焼速度を抑えたり、発生するエネルギーを抑えたりするmodだ。

 持ち出した後は別だが、まとめられている場所で火薬に火が点くことはないらしい。


 他には……調整用の器具には素材の強度を落とさないように急速冷却を行えるmodが仕込まれていたり、競技会場全体にシールドmodのエネルギーを継ぎ目なく注げるようにする仕掛けが仕込まれていたり。

 安全対策にはかなりの気が使われているな。


 ちなみに公式のパンフレットには、古式ライフルレースには、このような特別な設備やmodが必要なので、参加希望者はきちんとした施設がある場所でやるようにとも書かれてあった。

 それはまあ、確かに必要な事だな、うん。

 間違っても一般人がそこらでやっていいような競技じゃないぞ、これ。

01/12誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] 効率魔ママ「カオスモードを選択して、ライバルが銃器を完成させる前に脱落させる、或いは的と一緒にライバルも撃つ。効率的(狙撃しながら)」
[良い点] 玉から自作ってことは集積所に鉛のインゴットとか山になってるのね [気になる点] 時代的にマニアックな技能多いw 平均参加人数気になります [一言] まともに飛ぶ銃が出来ないならゼロ距離でよ…
[一言] 古式ライフルレースには特別な設備やmodが必要になる→予想以上に安全面で気を使う競技だった・・・組み立てとか調整でミスすると最悪爆発とかマジ危険
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