145:新種・珍種・帝国物産品評会inニリアニポッツ
本日は三話更新です。
コチラは一話目となります。
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい、サタ」
「お土産期待してるっす。サタ」
「お気をつけて、サタ様」
レポート地獄の翌日。
無事に夜中の間にレポートの提出を終えた俺は、最終日となった新種・珍種・帝国物産品評会を見に行くために、ニリアニポッツ星系第一プライマルコロニーへと向かった。
まあ、向かったと言っても、『セクシーミアズマ』の船内から、コロニー内の目立たない場所へと転移するだけの、極めてお手軽な移動である。
「さて、一人で観光ってのも久しぶりだな」
と言うわけで、何も起きるはずもなく、新種・珍種・帝国物産品評会の会場に到着。
では改めて新種・珍種・帝国物産品評会について。
新種・珍種・帝国物産品評会は帝国各地から集められた、新種または珍しい生物のお披露目をしたり、それらを調理して食べたり、輸入品として売り込んだりと言った事をする場である。
また、品評会と名付けられている通り、事前に決めたテーマに一番沿った品は何かを競う場でもある。
今回のテーマはニリアニポッツ星系らしく、健康的な肉体づくりに適した物産品である。
開催期間は一週間。
品評会への投票やレビューの類は、品評会の中で購入した物産品の額に応じて解放される仕組みである。
余談だが、同様の品評会は帝国各地で常に複数開かれている。
が、品評会ごとに業者もテーマも異なるので、毎回違うものが見れる事だろう。
「うーん、いい匂いだ。やはり料理系は強いな」
では見ていこう。
まず感じ取ったのは、よく焼けた肉とソースの匂いだ。
どうやら品評会の入り口近くのブースは客寄せも兼ねて、観光客向けの飲食店が集まっているらしい。
と言うわけで、適当にホットドッグとジュースを購入し、食べてみる。
「ほう……消化吸収をよくするmodに質のいい肉、野菜、パン。味は普通クラスだが、テーマ的には素晴らしいな。ジュースは……あ、これ、ジュースはジュースでもプロテインを液化したような奴だ。味もうーん、日常的にはちょっとなぁ……」
残念ながら味的にはハズレだったようだ。
まあ、気合いを入れて選んでいないのだから、こんなものだな。
とりあえず食べながら、会場の奥の方にまで移動していく。
「次は……フラレタンボ星系はお隣だけあってブースが大きいな」
次にやってきたのはフラレタンボ星系のブース。
他のブースよりは大きい……大きいが、もっと大きい星系のもある辺りに、フラレタンボ星系の悲しさを感じるな。
品は……フィーカンド社の缶詰に始まり、普通の品が多い感じだな。
フラレタンボ星系内では食べなかった魚の刺身でも食べてみるか。
うん、美味しい。
鮮度が良く保持されているな!
「グログロベータ星系は当然のように大きいし、本命っぽいな」
グログロベータ星系のブースに並んでいるのは、ニリアニポッツ星系の需要に合わせて品種改良をされた野菜と果物の数々だ。
試しにサラダを購入して食べさせてもらったが、体に良い栄養素を取り込むと同時に、悪いものを排出しやすくなるような感じがあるな。
俺の体は排出の必要性がないわけだけど。
「へー、これはまた珍しい」
続けてシブラスミス星系のブースへ。
この星系は……俺の記憶通りなら、ニリアニポッツ星系の次に訪れることになる星系だな。
並んでいる品は……トレーニング用品のようだ。
modを利用する事で、効率のいい重量トレーニングを行えるダンベル。
同じくmodを利用する事で、日常的に高山トレーニングを行えるマスク。
最新の人体工学に基づいたトレーニング用品が並んでいる。
うん、俺にとっては珍しいだけだな。
「ほう。ただの鳥のから揚げかと思っていたが、これは油が違うな美味い」
さらに進んでオイルミナギール星系のブース。
売られていたのは各種揚げ物。
という事で、鶏のから揚げを注文し、食べてみる。
うーん、熱々ジューシー、口に運んだ時点で香ばしい匂いが鼻を直撃し、噛む度に肉の旨味と油が口の中で羽ばたく。
だが驚きなのは、鶏自体はニリアニポッツ星系でお馴染みなプロテインブロイラーである事。
つまり、特別なのは鶏ではなく、油の方なのだ。
「だがそれだけに惜しいな。今回の品評会のテーマ的には……うーん」
どうやらこの油は、揚げている間に肉の中に浸透し、置き換え、普通の肉よりもはるかに美味しい油分を肉へと与えられる油のようだ。
modも利用されているようだし、ある種の調味modとも言えるかもしれない。
普通ならば素晴らしい油であると言い切れる品ではある。
だが、今回の品評会のテーマ的にはマイナス評価になってしまうな。
なにせ、栄養価や肉体づくりへの適正と言う意味では、プロテインブロイラーをはじめとした、ニリアニポッツ星系で今利用されている食品の方が、この油よりも優れているからだ。
うーん、惜しい。
「さて次は……来たな、珍品エリア」
さて、ここまでは一般的な品々だった。
見れていないものもまだまだあるが、時間は限られているので、そこは割り切るしかない。
そして、ここからは珍品エリアだ。
それぞれの星系の惑星で発生あるいは変異していって、他の星系の近似種とは全くの別物となったものならまだ普通。
特殊な加工まで行われた結果、まるで見たことがないような品になっているものも少なからず存在している。
「ふふふ、既にヤバい匂いが漂っているな……」
では挑んでいこう。
まずは珍品エリアの入り口近くで異臭でありつつも美味しそうな匂いを放っている何かからだ。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。