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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
4:ニリアニポッツ星系

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134/319

134:怪しき密談

「来たみたいですね」

「「「……」」」

 不意にヴィーがそう告げた瞬間。

 俺たちは僅かにだが緊張しつつ、周囲へ注意を払う。

 が、何も起きる気配はない。

 演習場では派手に戦闘音が響いているが、それも異常ではない範囲だ。


「ヴィー様。間違いないのですか?」

「間違いありません。ニリアニポッツ星系に所属している貴族の顔は当主とその補佐まで把握してありますが、高グレードの変装用modでも使われていない限りは、確実にそうです」

「話の流れから察するに、ニリアニポッツ星系全体に不和と言う形で攻撃を仕掛けている奴って事でいいのか?」

「ええそうです」

「それってつまりは今現在ニリアニポッツ星系で起きている事件の黒幕って事っすよね」

「そうなります」

 どうやらヴィリジアニラの目でのみ観測できる場所に、敵がやってきているらしい。

 しかし、ニリアニポッツ星系に所属している貴族の当主と補佐の顔を把握しているのか……流石はヴィリジアニラだな。

 この規模の星系なら、どう考えても数千人……下手すれば一万を超える人数になると思うんだが。


「サタ。サタも確認してきてもらえますか?」

「分かった。本体を向かわせる。ただ、俺に分かるのは人数ぐらいだぞ。容姿と会話の確認は期待はしないでくれ」

「構いません」

 俺はヴィリジアニラの指示に従って本体を向かわせる。

 此処、自在変形式総合演習場の5番には、俺たちが今居るようなVIP席と言うか、個室になっている観覧場所が数十か所ある。

 内部を映すカメラが無く、防音がしっかりとしていて、中から鍵をかければ不逞の輩が入り込む余地など殆どない部屋だ。

 だから密談には向いている。

 中で何が話されたかは、その場に居た人間にしか分からないからだ。


「居た。俺の目には……七人ほどの人間が居るように見えるな」

「そうですか。やはりサタに確認してもらって正解でしたね。私の目では角度と影の都合で四人ほどしか見えていません」

「そろそろ固有名詞を貰えるか? もう少し把握したい」

 しかし、迂闊でもあるな。

 この手の部屋は密談に向いているからこそ、管理が厳密で、誰が何時、誰と利用したのかは確実に記録される。

 うーん、その手の記録を改竄できるのか、それとも自分にまで届かないと踏んでいるのか、ただ演習を見に来ただけなのか……まあ、その辺は俺が気にする事ではないか。


「そうですね。私に見えているのは、ニリアニテック子爵家の当主、その補佐、昨日メモクシが利用した機械知性向けのボディ、それから……見覚えのない普通のヒューマンですね。補佐以外の三人は演習場の中が見える位置に居ます。補佐は子爵の背後ですね」

「なるほど。残りの三人の内、二人は部屋の扉を警護しているな。ガタイがかなり良い。一人は……たぶんメイドか何かだな。色々と細かく動いてる」

「そうみたいですね。私の目でも酌をしているのが見えました」

 しかし、ニリアニテック子爵家の当主と来たか……。

 俺が調べた通りなら、ニリアニテック子爵家と言うのは、ニリアニポッツ星系のSwの管理と調整を行っている家だったはずだ。

 Swの変遷とSwを悪用した犯罪の変遷からして、怪しいところがあるなとは思っていたが……まさか当主直々なのか?

 ここでメモクシが昨日使っていたボディが出て来て、ヴィリジアニラが怪しむという事は、そこまで考えてもいいだろ。


「ヴィー、どうする? 騒ぎにはなるが、本体の腕を出せば、奴らを部屋ごと閉じ込めることも可能だが」

「止めておきましょう。まだ状況証拠だけです。ここで攻撃を仕掛けてしまえば、逆にこちらが致命傷を負わされかねません」

「分かった」

 そうやって怪しむと、部屋を守っている人間が人造人間……それもほぼ作り立てであろう気がしてくるな。

 なんと言うか、体のブレの無さと言うか、個性の薄さが、セイリョー社で見た製造直後の必要な情報のインストールだけされた人造人間たちと似通っている気がする。


「メモ。撮影は出来ていますか?」

「申し訳ありません、ヴィー様。メモのカメラでは解像度が足りません」

「ウチが忍び込んでくるっすか?」

「それは止めておきましょう。相手はmod製造のプロです。迂闊に近づけば、感知されるだけでは済まないかもしれません」

「んー、分かったっす」

 こうなってくるとだ。

 メモクシの昨日使ってたボディを使っているのは、異端の機械知性とやら。

 見覚えのない普通のヒューマンとやらは、何かしらの犯罪組織の人間か?

 メイドは……どうなんだろうな?

 うーん、全員怪しく思えてくると言うか、実際に腹を探ったら、何かしらはあるんだろうな。


「ヴィー。安全策を採るのは良いんだが、それだけじゃ話が進まないだろ。どうするんだ?」

「分かっています。なので今はまだ待ち、彼らが動き始めたら、サタが機械知性を追ってください。あそこに集まっている人間の中で、あのボディの使い手だけは明確にクロだと断言できます。アレの塒を捉える事が出来れば、状況が動く可能性は高いはずです」

「分かった。追える範囲で追ってみる」

「メモとジョハリスも追える範囲で同様に。ただ、こちらの追跡がバレないようにするのが第一なので、直接ではなく間接的に追うようにしてください」

「かしこまりました」

「分かったっす」

 さて、特定個人だけを追いかけると言うのは、正直に言ってそこまで得意ではないんだが……やれる範囲でやってみるとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] >内部を映すカメラが無く、防音がしっかりとしていて、中から鍵をかければ不逞の輩が入り込む余地など殆どない部屋だ 残太「うちの岩戸の方が高性能よ(どや顔)」
[一言] 他の方への感想返しから自分の勘違いに気付きました(汗) ニリアニテック子爵家はあくまでSWを管理する家であって、ニリアニポッツ星系を統治する家ではないんですね!びっくり! フラレタンボ星系…
[一言] 黒幕たちの登場か……さらに真の黒幕とかいそうだな その領地の当主直々に攻撃を仕掛けるとかどうなってるんだ…? まぁ機械知性の独自作成は間違いなくアウトっぽいしなぁ
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