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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
4:ニリアニポッツ星系
123/319

123:宇宙船レース

「では、本日は宇宙船レースを見に行きます」

「唐突だなぁ……。一応聞くが『バニラプレス』社のあの人への連絡は?」

「連絡はしましたが、許可は貰っていません。ですが、本来ならばヴィー様が許可をもらう必要はありませんので、問題はないでしょう」

「なるほど」

 翌日。

 朝食を食べ終えたヴィーは唐突に今日向かう先を宣言した。

 うん、流石に唐突過ぎるので、幾つか確認しよう。


「見に行く宇宙船レースは?」

「ニリアニポッツ・アステロイドベルトカップ・戦闘機16時間耐久レースですね」

「アステロイド……ああ、これか。小惑星帯の中を戦闘機で16時間飛び続けて、一番遠くまで飛べたチームが勝ち……また過酷な奴だなぁ……」

 見に行くのは宇宙船を用いた耐久レースの一種のようだ。

 では、もう少し詳しく条件を見ていくか。


 チーム数は32で、1チームにつき24人程度の参加者が居て、スタート地点は共通。

 コースは小惑星帯の中に限定されるため、パイロットは小惑星を適切に避けつつ、先へ進むことが求められる。

 使う機体は宇宙船の中でも戦闘機と分類される、居住関係を極限まで削り、機動力関係に全てを振った超小型の宇宙船。

 ただ、レース時間からも分かるように、適宜休憩と言うかピットインを求められ、この時だけは小惑星帯の境界ギリギリにまで寄って各チームが持つ整備用の宇宙船とドッキングして、パイロットの交代や部品の応急修理を行うようだ。


 総評すると、パイロットはもちろんのこと、サポートをする面々の技量も求められる、非常に過酷なレースという事になるだろう。


「そうですね。ですが、過酷だからこそ見応えもありますし……裏で色々と動いています」

「ああなるほど。このレースで何かが動くのが見えたと」

「そう言う事ですね」

 なお、ニリアニポッツ星系がスポーツの聖地という事で、同種の耐久レースの中で最上位扱いと言うか、最も賞金が高いのが、このレースであるらしい。

 で、注目を集めているという事は、それだけ裏では違法賭博やら妨害工作やらが動いているのだろう。

 たぶんだが、ヴィリジアニラの目はその内の何かを察知したんだろうな。

 だから、『バニラプレス』社の人に負荷をかけることになっても、仕掛ける事を選んだ、と。


「一応聞くが、観戦はどっちでだ? スタート地点でもあるレースコロニーか宇宙空間か」

「勿論宇宙空間ですね。今からレースコロニーに赴いても間に合いませんし、そもそも会場で観戦するのに必要なチケットは貴重なもので、手に入れるのは無理があります」

 そんなレースを観戦する方法は主に二つ。

 一つはスタート地点でもあるレースコロニーにある会場でのモニター観戦。

 もう一つは小惑星帯からある程度離れた場所に自分の宇宙船で赴き、そこから何かしらの方法で観戦する事。

 小惑星帯は公道の一部であるため、そう言う事も可能なのだ。

 で、当然ながら、ヴィリジアニラは宇宙空間の方を選ぶと。


 うーん、これは小惑星帯の中に妨害者が潜んでいるか、小惑星帯の外縁に沿って飛ぶ各チームのサポート船を狙って何かが行われるか、と言う感じになりそうだな。

 ただ前者については現地当局に任せるべき問題で、俺が何か出来るとしたら後者の問題の一部くらいか。

 大穴でまた別の何かがあるかもしれないが。

 なお、言うまでもなく、レース開始から終了までの間、レースのコース範囲内として指定された部分の小惑星帯には関係者以外立ち入り禁止である。

 なので、現地観戦もある程度離れた距離からになるのだ。


「ではヴィー様。メモも行動を開始します」

「ええ、気を付けてください」

「ん? ああ、そういう意味でも宇宙空間での観戦の方が都合がいいのか」

「そう言う事ですね」

 と、ここでメモクシが椅子に腰かけ、一見するとスリープモードに入ったかのように動きを止める。

 だが、ただのスリープモードではない。

 恐らくだが、中身が完全に抜けているな。

 言動の端々からメモクシはそう言う事が出来る機械知性だとは思っていたが……機械知性の体の乗り換えって、結構面倒な手続きやら何やらがあったはずなんだがなぁ……。

 まあ、結果の為に権力を生かしているだけなので、深くは問わないでおこう。


 そして、宇宙船の耐久レースを宇宙観戦する……言い換えれば、今日は一日『セクシーミアズマ』の中に引きこもっているように見える状態で、メモクシだけが外に出るとなると……まあ、色々と表に出たら拙い部分に探りを入れたりするのだろう。


『出航許可は出たっす。『セクシーミアズマ』、発進するっすよ』

「お願いします」

 メモクシの意識が船の外に出たのを確認したのだろう。

 ジョハリスが『セクシーミアズマ』を発進させ、目的地に向かって移動を始めさせる。


「あ、サタ。そう言うわけですので、今日の昼食と夕食は船内で済ませられるようにお願いします」

「分かった。あ、外に出ていいタイミングがあるなら教えてくれ。俺が適当に何か作ってもいいが、転移を利用してポップコーンとか買いに行くのもありだと思ってるし」

「……。そうですね、分かりました。その時は炭酸もお願いします」

『フライドチキン、ピザ、ポテト辺りも鉄板だと思うっす!』

 まあなんにせよだ。

 16時間……その後の表彰式やら何やらまで含めれば、丸一日以上かかるレースなのだ。

 リラックスしつつ警戒に当たるとしよう。

12/12誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少し変わったSF作品として楽しんで読んでます。 OS、Swなどの設定が面白いですね。 [気になる点] サタは恋愛するのかな?と気になってます。 結婚したらナチュラル触手プレイになるの…
[一言] 2度目失礼します >酒は……ほぼ飲まないんですよね。この子たち 太陽「え、私たちの分よ?」 黒幕「フラレタンボの酒1塊で許してやるニャー」
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 観戦には定番モノって共通認識ありますよね 実際にそれが一番多いって訳でもないのに メモクシ、抜けれたんだ
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