表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
1:プロローグ
12/319

12:超光速航行

本日は五話更新です。

こちらは三話目です。

『本船『ツメバケイ号』はハイパースペースへの進入に成功しました。これより超光速航行によってグログロベータ星系へと向かいます。ハイパースペース内を航行する時間はおよそ24時間。グログロベータ星系のガイドコロニーに着くのは帝国共通時刻で……』

「おおおぉぉぉっ……」

 窓に映る光景が変化する。

 通常航行中の暗黒の宇宙に無数の星々が淡く輝く光景ではない。

 亜光速航行中の全てが線に見えるような光景でもない。

 ハイパースペースと言う超光速航行の為に存在している空間を内側から見た光景……つまりは、周囲全てが黄金色の光に包まれて、その境界を示すように虹色の薄い膜が広がり、激しく揺らめいている世界だ。

 どこかの銀色にヘドロを混ぜて淀んでいるような世界とは大違いだ。


「喜びようがすごいな」

「ちゃんと見るのは初めてですからね。そりゃあ興奮します」

「まるで子供みたいだぞ」

「はっはっは、俺は人造人間として生まれて、まだ7年ですよ。一般的ヒューマンならまだまだ子供じゃないですか。それを言い訳にすれば何の問題もなしです。そうでなくとも、こういう事柄にはワクワクしてなんぼって奴ですよ」

「こりゃあ、一本取られた。じゃあ、しょうがねえな」

「ええ、仕方がない事です」

 俺はワクワクをしつつも、自分の中にある超光速航行とハイパースペースについての知識を思い出していく。


 まず、詳しい原理は専門家ではないので気にしない。

 元の世界では光の速さをはるかに超える速さで移動している事は分かってる。

 あの黄金色の光の表面で揺らめいている虹色の膜が『ツメバケイ号』が利用しているハイパースペースと外との境界であり、あそこに触れてしまったものは区別なくチリと化すので注意が必要。

 まあ、わざとぶつかりに行かなければ、当たる事なんてあり得ないのだが。

 後は……。


「そう言えば船員さんは宇宙怪獣に出会ったことは?」

「会ったら今ここには居ねえよ。専門家連中ならともかく、俺みたいな一般船乗りが出会ったら、死ぬ以外の選択肢がない」

「それは……そうでしたね」

 超光速航行中に干渉できる存在だな。

 一つは宇宙怪獣。

 簡単に言ってしまえば、宇宙空間で活動し、単独で星系間航行が可能な生物の事で、だいたいが獰猛で危険。

 個体によっては発見されれば帝国軍や専門家が総動員されて退治に向かうような存在である。

 とは言え、今『ツメバケイ号』が使っているような日常的に使われる航路に姿を現すことは極めて稀な事なので、そんな事は起きないと考える方が普通か。


「ああ、宙賊には会ったことがあるぞ。『ツメバケイ号』に搭載されてるビーム砲で撃ち抜けるような三下だったけどな」

「ほうほう」

 もう一つは宙賊……つまりは、宇宙船を所有し、他の宇宙船から物資を奪う事で生き延びている犯罪者共だ。

 こいつらの中には時々、ハイパースペースに干渉できるmodを搭載している船もあって、そいつらが超光速航行中の船に干渉、襲い掛かってくることがある。

 まあ、そんなmodは一般には広まっていないので、超光速航行中に襲い掛かってくるような宙賊は稀。

 宙賊について気にするなら、むしろ小惑星帯のような軍や治安維持機関の哨戒が間に合っていない領域の近くを通り過ぎる場合だろう。


 ちなみに宙賊はそうであると確定した時点で、生死を問わず、と言う対応が許されている。

 なので、船乗りの中には少なからず宙賊との戦闘経験がある人間が居るし、宙賊を専門的に狩るハンターのような宇宙船乗りも居るようだ。


「ふぁ……眠いから寝るわ。記者さんもほどほどになー」

「ええ、お付き合いいただきありがとうございました」

 他の脅威は……今この場では気にする必要はないか。

 そして、宇宙怪獣も宙賊も、遭遇した際の対処をわざわざ考える必要がない程度には稀な存在と考えていいな。


「ん? ああ、まーた、命知らずの馬鹿が出てたのか。懲りないなぁ。まったく……」

 なおこれは余談だが、ガイドビーコンなしに超光速航行をすることは半分自殺行為だと言ってもいい。

 まず、ガイドビーコンなしでの超光速航行は宇宙の何処に出るのかが不確かになる。

 するとよくてバニラ宇宙帝国が存在している銀河の外に飛び出てしまうし、悪ければ宙賊や宇宙怪獣の住処に突っ込むことになる。

 もっと悪ければ恒星やブラックホールに突っ込んで即死だし、最悪のパターンだと惑星やコロニーに突っ込んで死者行方不明者何万人と言う大惨事になる事だろう。


 そんな惨事を防ぐために一般的な宇宙船はガイドビーコンを利用しなければ超光速航行を行えないようになっているし、大半の星系では特定のエリア以外では超光速航行に移行することも出てくることも出来ないようにmodが配されているのだが。


 が、そんな状況でも新天地を求めてだとか、成人資格証も取れないような阿呆だとか、そもそもガイドビーコンを利用できない宙賊だとかが事故を起こしているのが現状である。

 とりあえず、昨夜のうちに受信していた記事によれば、フラレタンボ星系とやらで、宙賊による超光速航行関係の事故が発生していたそうだ。

 詳細はまだ不明だが、宙賊同士の船が正面衝突を起こして、大爆発を起こしたらしい。


 記事については他は……シリアル製品のメーカーであるスデニバンクラ社が倒産を発表があったか。

 なお、スデニバンクラ社には色々と疑惑あり。

 他にもまあ、色々とあるな。


「さて、朝食の時間までは何を……まあ、記事の推敲でもしていればいいか」

 俺は遊戯室から客室へと移動して、朝食の時間までを仕事に費やした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 宇宙怪獣か……丁度ここ数日強いキャラの参考として、今年のはじめ頃に亜種が大暴れした型月の最強生物を調べていたので、個人的にはタイムリーな単語ですね。 この世界における宇宙怪獣はあそこまでの無…
[一言] ???「六次元くらいまでなら座標をわりだせるよね?」 海月「自分を基準にすんなや」
[気になる点] >シリアル製品のメーカーであるスデニバンクラ社 >スデニバンクラ社には色々と疑惑あり これまでの話に出ていた「味の改変程度ならまだマシ」ではすまないことをしていた疑惑ですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ