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サタヴィーの宇宙帝国漫遊記  作者: 栗木下
4:ニリアニポッツ星系
111/319

111:ニリアニポッツ星系について

「それではニリアニポッツ星系での行動を考えるにあたり、基本的な情報のおさらいから始めましょう」

「分かった」

「分かったっす」

「お願いします。メモ」

 ヴィリジアニラとメモクシがレストルームに戻ってくると共に、次に向かうニリアニポッツ星系についてのおさらいをする事になった。

 なお、『シェイクボーダー』……表向きの船名『パンプキンウィッチ』は現在、フラレタンボ星系のプライマルコロニーに停泊中。

 これから正式なフライトプランを立てて、向こうでの活動予定を決め、それから計算された必要物資を確保するためだ。


「まずニリアニポッツ星系までは『パンプキンウィッチ』の船速では三日ほどかかります」

「内訳としては、ニリアニポッツ星系行きのガイドビーコンにアクセスするまでに亜光速航行で半日、ハイパースペースを利用した超光速航行で二日、向こうの最初の目的地として指定されたコロニーまでは半日っす」

「案外かかるな」

「フラレタンボ星系の交通の便の悪さはやはり問題ですね。私たちがどうにか出来る問題ではありませんが」

 ちなみにだが、『パンプキンウィッチ』に搭載されている超光速航行のmodは高速定期便ほどではないが、一般的なmodよりも高スペックなものである。

 仮に『ツメバケイ号』や『ディップソース号』ならば、丸三日はかかる事だろう。


「ニリアニポッツ星系そのものについては、帝国で最もスポーツ……競技が盛んな星系ですね。帝国内で複数の星系に跨って人気を博している競技ならば、最も大きな大会はおおよそニリアニポッツ星系で開催されると言っても過言ではありません」

「それぐらいは俺でも流石に知ってる。大会の録画はよく流れてくるし、選手が活躍したニュースも報道されるからな」

「バニラシド星系じゃないんすね」

「バニラシド星系だと警備の問題、政治との兼ね合い。加えて、御前試合になってしまうと言う問題があって、大会は滅多に開かれませんね」

「なるほどっす」

 俺は改めて資料を見る。

 ニリアニポッツ星系は毎日何かしらの競技の大会が開催されていると言っても問題ない星系だ。

 ただ、此処で言う競技とは、体を動かすものだけでなく、ナインキュービックのような知的競技、即興で絵を描いて出来を競うものなど、競うものならだいたい含まれていると考えていい。


 そんな星系なので、ひっきりなしに人の出入りがあり、もともと住んでいる人間も合わせれば帝国有数の人口密集星系と言える。

 たぶんだが、フラレタンボ星系の数倍……いや、それ以上の過密具合かもしれないな。

 で、そうなれば、当然のように犯罪の発生件数も多くなり、中には組織だった犯罪や難解な犯罪も含まれていて、治安維持を担当する者たちは毎日忙しなく働いている。


「個人的には素通りしてもいいんじゃないかと思っているんだが。この星系」

「サタ様の気持ちは分かります。ヴィー様が滞在するとなれば、多少なりとも現地組織に負荷をかける事にはなるでしょうから」

「そうですね。ですが、何処から聞きつけたのか、既に幾つかの大会から顔を見せて欲しいと言う要望が送られてきています。大半は断って問題ないものですが、中には現地の諜報部隊から観戦をお願いされている大会もあります」

「なるほど。それを断るわけにはいかないと」

「囮にする気満々って感じっすね」

 正直、これ以上忙しくすると、現場の人間からヴィーが恨まれそうな気配すらある。

 が、人間社会の辛いところと言うか、素通りして次の星系とはいかないようだ。


 しかし、現地の諜報部隊から観戦をお願いされているなぁ……順当にいけば囮なんだが、場合によってはその時間の裏で本命の何かが、と言うのもあり得るか。

 どちらにせよ、俺がやる事に変わりはないが。


「Swについては特定の分子に反応して発光する、と言うものがあります」

「何の意味があるっすか? それ」

「反応対象のリストとかあるか?」

「どうぞ。一般にも公開されている範囲のものになりますが」

「はいはい。なるほど納得。違法薬物か」

「そう言う事ですね」

 ニリアニポッツ星系のSwは一部の違法薬物……脳に影響して強い興奮や快楽をもたらしたりするもの……要は麻薬であったり、筋肉に一時的に異常な張りをもたらすもの……つまりはドーピングに関わる物質に反応して、発光すると言うもの。

 その目的は公正公平な競技を行いやすくすると共に、人の出入りに伴って持ち込まれる違法薬物の摘発をやりやすくすること。

 発光の際には結構な輝度になるようなので、本人が知らずに薬を盛られるのを防ぐと言う意味もありそうか。


 勿論、全ての違法薬物に反応するわけではないし、発光しているからと単純所持すら禁じられる物体とは限らないので、抜け荷にせよ検査にせよ、対処には注意が必要なようだ。

 具体的に言えば、本当に最新の麻薬modには対処しきれないようだし、お茶やコーヒーにも含まれているカフェインが反応してしまうらしい。


 まあ、それを生かして、超高輝度シャイニングコーヒーなんてものも提供されているそうなので、人間とは強かなものである。


「惑星やコロニーの数や位置はこちらですね。また、本日から一か月ほどの現地で開かれている大会についての情報はこちらです」

「名物や観光名所……いや、名所はそのまま大会関係か」

「なんか楽しくなってきたっす」

「そうですね。折角なので楽しむべきでしょう」

 さて、他にも幾つか情報はある。

 そして、現地から観戦を要求されているものだけで日程が埋まっているわけではない。

 どのように行動していくかをじっくりと考えていくとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] げーみんぐかいぢゅうにのってあそぼう 世界を滅ぼすのはこのアタシッス 全て私の色に染め上げるッス
[一言] 違法薬物を光らせるmodですか。 一瞬某邪眼妖精の呪詛薬が浮かびましたが、あれは違法というより無法と言った方が良さそうなので引っかからなさそうですねw もしくは異法厄物とでも言うべきかw …
[一言] シャイニングコーヒーかw ……もしかして、美味しさで興奮させて輝く「謎のゲーミングジャーキー」とかありませんか?
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