深紅に染まった世界
見切り発車で書いてしまいましたが、宜しくお願いします!
「きゃあああああぁぁぁああぁあ!!」
黒いマントを羽織った死神が、2人現れた。
グシャッ、ベチャッ
目の前で血飛沫が飛び、先程まで生きていた筈の『塊』が転がる。命なんていとも簡単に奪えてしまうモノだ。にしても、毎度血飛沫が飛ぶのは中々厄介。昨日洗濯したばかりの服が汚れてしまった。
「…何人目、かな?私達がこうやってみんなの未来を奪ったの」
と、小型ナイフを持つ君。
「僕にも分からないよ…でも、やるしか無いんだ、みんなを救う為に」
と、血濡れた斧を持つ僕。
血まみれの世界を、君は、アリアは、光を失った目で見渡す。
「もう、どうだっていいや。どうせ私達も今年中に死ぬんだし」
そう、この世界は、僕らサークルフェイスが毎年1回、8人、龍に選ばれる。いつ頃選ばれたかに関わらず、1月1日零時ぴったりに全員が『厄災の森林』の中心にある池に飛び込み、龍に身を捧げる。選ばれた者はそれまでに選ばれなかった者達を出来るだけ殺し、精気を養わなければならない。精気が少ないと龍が怒り、この国の3/2以上が滅ぶ。…なんで知ってるかって?去年がそうだったから。去年のサークルフェイス達は気弱な者が多く、精気が例年の半分も集まらなかった。そのおかげで、僕とアリアの親達は死んだ。今更何も出来ないのに、思い出してしまう。
「…うん」
そんな顔を、しないで欲しい。一人で沢山、抱え込まないで欲しい。僕をもっと、頼って欲しい。これか…
ーうるさい。
最近、何故か僕に声が聞こえてくる。どんな事を考えていても、その声が同時に流れ込んでくる。
「アリア、少し休憩にしない?」
「え…?うん、いいよ」
「ほら、これ」
「ステンドグラスクッキー、だよね」
「そう、僕が焼いたの」
「綺麗…」
サクサクっパリッ、と美味しそうに星や花の形をしたクッキーを頬張っていく。
可愛い。愛しい。早くこの気持ちに気付い…
「っ!?」
「大丈夫…?」
また、聞こえた…。僕は、僕が、怖い。でも、今はそれ以上に暖かい。どうしてだろう?
「うん、大丈夫。目眩がしただけだから」
「それなら、いいんだけど…ちゃんと休んでね?」
「ふふっ、そうだね」
「ねぇラント、私達、これからどうしようか?」
「これから…?」
「だって、この辺りの村は全部、サークルフェイスが、私達が…」
アリアは、もう耐えられないだろう。今でさえ情緒が不安定で、急に冷たくなったかと思えば明るく接したり、昨日までと正反対の事を言ったり。龍に喰われる前におかしくなりそうだ。アリアも、僕も。
「仕方がなかったんだよ。やらなくても、龍によって死んでいたんだから」
「もう私、お母さん達に顔向け出来ないよ…」
「……それは、僕も一緒だよ。だから、2人で…」
僕に、アリアを励ます資格なんて、無い。今日だってここへアリアを連れて来たのは僕なのだから。
「…ごめんね、ラント。こんな事を言ったってどうしようもないのにね」
「大丈夫だよ、アリア。…あのさ、せめて、残りの時間を楽しもう?僕達だって、まだ17なんだ。だから、ね?」
「うん、そう、だよね、うん、うん…」
自分に言い聞かせる様に話すアリア。嗚呼、僕はどうなってしまったのだろう?こんな時ですら、龍を倒し、ハッピーエンドを迎えたいという、僕がいる。この、深紅に染まった手で、出来ることなど何も無いのに。こんな気持ちのままで、幸せを望むなんていけないのに。
ここまで読んでいいだきありがとうございました!宜しければアドバイス等お願いします。