表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/121

「モニター」:2

「モニター」:2


「な、なんで、みんな捕まってるんだよ!? しゅ、シュタルクまでっ!? 」


 和真は思わず叫んでいた。


 こんなこと、ありえない。

 だって、シュタルクはあんなにも強くて、プリズントルーパーたちをものともしないはずで、そして、千代たちは安全なセーフハウスにいるはずなのだ。


 だが、空中にヘリコプターで吊るされているモニターに映っているのは、CGの類(

たぐい)ではないようだった。


〈まったく、みなさんツメが甘いんですよ〉


 戸惑う和真の疑問に答えるように、再びモニターに映し出されたヤァスが、作り物の笑みを浮かべながら言う。


〈催眠が解けたから、シュタルク、彼女が本当に自由になったとでも思いましたか? ボクが何の備えもしていなかったとでも? シュタルクは確かに強いですが、装甲服を捨てなかったのが間違いでしたね。……彼女の装甲服は、ボクがスイッチ一つで機能を停止させられるように作ってあったんですよ。歯向かわれたのでは、大変なのでね。あとは、少々骨が折れましたが、こうして無事にみなさん仲良く捕まえさせてもらいました〉


 それからヤァスは、パチン、と指を鳴らす。

 すると、モニターに映し出されている場面が再び切り替わり、捕らえられたシュタルクたちの映像になる。


〈和真くん。キミが出てくるまで退屈そうなので、少し遊ばせてもらいますよ〉


 愉悦ゆえつに浸っているようなヤァスの言葉と共に、拘束されているシュタルクたちの前に現れたのは、一台の手押し式のワゴン車と、白衣を着た女性、[絶対催眠]のチートスキルを持つ女性、乙部楓おとべ かえでだった。

 楓が運んできたワゴンの上には、なぜか、鋭利なナイフが何本も乗せられている。


〈これから、みなさんにはゲームをしてもらいます〉


 楓と、ワゴンの上に並べられたナイフとを見て戸惑ったような表情をしているシュタルクたちに、ヤァスが楽しそうに言う。


〈今から、楓に、一人ずつ催眠をかけてもらいます。……このワゴンの上のナイフで、自分ののどを突き刺したくなるような催眠をね〉

「んなっ!? なっ、なんてことをっ! 」


 ヤァスの言っている意味を理解して、アピスはそう憤り、セシールは両手で口元を覆い、影雄は表情を険しくし、カルケルは舌打ちして、和真はこぶしを強く握りしめた。


〈和真くんが素直にボクのところに出てくればヨシ。……そうでないなら、和真くんのお友達たちは、自分で自分の命を絶つことになってしまうよ〉

〈なら、わたしから先にやりなさい! 〉


 ヤァスの言葉にそう叫んだのは、シュタルクだった。

 自身の装甲服に細工がされていることに気づかず、あっさり捕まってしまった自責の念から出てきた言葉であるらしかった。


〈いいや、シュタルク、キミは後回しだ〉


 だが、ヤァスは意地悪げな声で言う。


〈キミには、自分の愚かさをたっぷりと分からせてあげるよ〉

〈な、なら、僕をっ! 僕を先にやれっ! 〉


 続いて、絞り出すような声で叫んだのは長野だった。


〈ヤァス! お前は、僕を痛めつけるのが大好きだっただろう? 人を一週間も無意味にいたぶり続けて……。どうだ? いい加減、トドメをさしたくはないか? 〉

〈長野。残念だけれど、キミでは役不足なんだ〉


 ヤァスは長野を嘲笑ちょうしょうするように言うと、やがて歩いてきてモニターの映像の中に移り、拘束されたまま静かに前を見ていた千代の前で立ち止まった。


〈そう。キミだ、キミが適任だ〉


 ヤァスは、自身のことを睨みつける千代に、優越感に満ちた声で言う。


〈和真くんみたいに、初心うぶだまされやすい純情くんは、キミみたいなかわいらしくて世話焼きなお姉さんが大好きなんだ。優しくて、包容力があって、魅力的で。……だから、キミが一番効果的だ〉


 それからヤァスは楓に〈始めろ〉と命令し、命令された楓は、ワゴンを千代の前に移動させ、ナイフの一本を手に取って、手錠で拘束されている千代の手に握らせる。

 千代はナイフを握ろうとはしなかったが、〈言われた通りにしないと、他の人が痛い目に遭うよ? 〉と脅され、やむなくナイフを手にした。


 千代がナイフをしっかりと手に持つのを確認すると、楓はふところから、五円玉を糸で吊るしただけの簡単な催眠道具を取り出し、千代の目の前でリズムを取って左右に振り始める。


〈あなたはだんだん、死にたくな~る〉


 抑揚のない声でそう呼びかけながら、楓は一定のリズムで五円玉を振り続ける。


〈その手に持ったナイフで、自分の首を刺したくな~る〉


 千代は、最初はその催眠を受けてもピクリとも反応しなかった。

 ただ、楓の方を睨み返し、口を一文字に引き結んで、何かに必死に抗っているようだった。


 やがて、千代の手が数センチ浮き上がる。

 その手ににぎられたナイフの切っ先が、徐々に千代の首筋を向き始める。


 千代の両手が、激しく震え始める。

 楓の催眠に抵抗しようとする千代の意志と、楓の絶対催眠のチートスキルとが激しくぶつかり合い、せめぎ合っているようだった。


 だが、優勢なのは、楓の方だった。

 千代は必死に抵抗を続けているが、その手は少しずつ上昇を続け、もう少しでナイフの切っ先が千代の首筋に届きそうになる。


 千代と同じく拘束されている他の仲間たちが、千代に向かって呼びかけ、彼女を応援するが、楓のチートスキルは容赦なく千代を追い詰めていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ