ヾ(@゜▽゜@)ノおお?
終業後。
従業員駐車場に行くと、イケメンが待ち構えてる!!
今日は私が事務所の施錠担当だから、私が一番最後。
ほかの従業員は、すでにみんな帰ってる。
いつもだったら杉浦君の車が私の車の隣に停まってるんだけど、今日は大学の友達の飲み会があるからって先に帰ったんだよね。
いいね、学生!楽しめ!青春!!
車に近づくと、イケメンがこっちを見て、目線を下げた。
え、いよいよこれは、マジ告白?フフフ!
恋に落ちる瞬間が、やってきたか?!
「あれ、イケメン、なんか用?」
「あのさ。言いたいことがあって。」
うん?
なんだ?改まって…。
やっぱこれって、これってー?!
「今日、車に乗せてもらったけど。あの。」
「ああ、乗ったね、何、車狭かった?ごめんごめん。」
ちなみにイケメンの車はファミリーカーだ!
いつ子だくさんになっても大丈夫そう!
そういうつもりで選んだに違いない!!
「あの、マスコット人形。」
私の車の、ダッシュボードに乗ってる、カラフルなカエルのぬいぐるみ。
ん?カエル好きなのかな。
「あれ、どうしたの。」
「ああ、あれは…。」
自分の記憶を、たどる。
アレは、確か。
『無事、カエル。』
『これ、あげる。』
『また会ったときにでも、返してくれたら、いいです。』
ああー!ヤバイ!これ、借り物だったわ!!
たった今思い出した!!
「このカエルは、私が本社の入社式に出た時にもらった、じゃない、借りたやつなんだよ!」
「…へえ。」
ヤバイ、ずっと、すっかり忘れてた!!
あの本社勤務の人、忘れてたらいいけど、恨まれてたらどうしよう。
「返さないの?」
「返すも何も。本社まで行くのも時間かかるし、そもそも、誰にもらったのかさえ、曖昧というか…。」
この車買って、まだ運転技術も怪しかった時に、本社まで無謀にも乗り込んでいったんだよね。
ナビもまだぬるくてさ、変なとこで引き返す羽目になったり一方通行ハマっちゃったりして散々でさあ!!
無事帰れるかホント自信なくて、同期の人にめっちゃ愚痴ったんだよね。
そしたら、無事に帰れるおまじないしてくれて。
疲労困憊にはなったけど、無事に帰れて。
それ以来の、私のマイカー交通安全お守りだったりするんだな!
あの同期の人、どうしてるかな。
なんかめっちゃ自己肯定能力のひっくーーーーい人でさあ。
グループトークでも黙ってて、私めっちゃ声掛けしたんだよね。
お互いのいいところを指摘し合うやつなんか、それこそいちゃもんレベルで目についた事褒めに褒めまくった記憶がある。
…よかった探しが、私の特技だからね!!!
「返して、もらおうかと、思って。」
「は?」
何言ってんの、この人…。
「いったでしょ、入社式の時、会ったって。」
はい?
「赤池徹ですって、自己紹介、したでしょ。」
死ぬ気で、記憶を、たどる…。
自己紹介…?
した、してたよ、うん、でも、でも?!
「えええええ!!!!マジで!!!嘘だ!!こんなにイケメンじゃなかったじゃん!!」
私の知ってる、赤池徹氏は、ぼっさぼさでボヤっとした、輪郭のぶよぶよしたヘタレマックスみたいな人だったよ!!
体力温存タイプだから、これからは引き締まっていくばかりですねとか、人当たりの柔らかさが誰かを救うんですよとか、やさしさを押し付けない控えめなところが素敵ですとかめっちゃ言ったわ!!!
言いがかり上等レベルで、褒め倒した記憶ある!!
「君も少しやせただろう。僕も同じさ。」
「痩せてイケメンかとか…どっかのラブコメじゃん!!マジか!!!」
どれほどイケメンをじっと見ても、あのヘタレ君の姿と重ならない。
こんなん信じられるかーーー!!!
「本当は、言うつもりなかったんだ。でも、杉浦君が全力で君にぶつかっていってるのを見て、伝えたく、なった。」
「君を思い続けてたら、気持ちが伝わると、信じていたけど、あんなに杉浦君が気持ちを伝えているのに、まるで気づいてない、スルーしてる、あんたに、苛立ちを覚えた、のも、ある。」
「伝えなきゃ、伝わらないと思って、勇気を、だした。あのカエルが、君の車を守り続けてたことを知ったから。」
「僕は、あの入社式の日から、ずっと、冬木やよいさん、あなたが、好きなんだ。」
イケメンが、めっちゃ、真っ赤な顔して、頭をかいているぞ…!!!
マジか!!マジで?!うそーん…!!!
「ええー!じゃあ両想いじゃん!ヒャッホー!で、どうする?!」
「どうするも何も。僕付き合ったことないし、具体的には、その、どうしていいのか、というかっ…!」
「マジで!!初心者同士の恋愛って大変らしいですよ、イケメンさん!!」
明日から私の毎日が変わりそうな予感がプンプンしますぞ!!!
「燃えるね!!」
「なぜだろう…萌える気がしない!!」
いささか訝しげな顔をしたイケメンに、ずいっと手を出し、握手を求める。
よし、今日から私たち、恋人同士!!
がっちり握手を交わして、家路についた!!