Σ(゜◇゜;)はい?
車を停めて、事務所に入ると、不破さんと所長が待ち構えていた。
おお、さっきの話の続き、するのかな?
いや、その前に、原田さんの件を報告だ!
「原田さん、骨折だった。書類は…。」
「ああ、赤池君から全部聞いたよ。書類も準備してるから。」
イケメンホント仕事速いな!!さすがだよ!!
「さっきの話の続きなんだけど。」
不破さんが神妙な顔してるぞ…。ごくり。
「ほんとなの?どうするの、いつみんなに言うの。」
「まさか、黙っていきなりいなくなるとか、そういうのは止めろよ?」
ヤベ!!めっちゃ目論見がばれてるよ!!
いやあ、やめるって言っちゃうとさ、人間関係とかさ、地味に壊れちゃうの心配しちゃうんだよね!
でも、今なら、イケメンいるし、何とかまとまってくれるかも?
「うーん、ぎりぎりまで、黙ってたいです。心配かけたくないし、大事になるとヤダし。」
「いいのかね、それで。」
うん。
それでいい。
「杉浦君とか、怒ると思うよ?」
「あいつは怒らせとけば良いんだって!」
「冬木!!お前もうちょっとほんとに、何とかならんのか!!」
あれ。
なんかめっちゃ怒ってるよ所長。
けんかなんていつもの事じゃん。
「うーん、じゃあ、原田さんが帰ってきたとき、みんなに、言います。」
二ヵ月後だもん。
ちょうど、良い頃合になるんじゃないかな?
帰ってこなかったら、ばっくれちゃお。
社会人として、失格?いやいや、これぐらいは、良いでしょ…。
「…絶対、自分で、言いなさいね?」
「分かりましたよ。じゃあ、この話は、これでおしまい!イケメン、見に行ってこよーっと!」
「冬木!!!」
所長の雷が落ちる前に、サーキットへと向かった。
あれ、なんか雰囲気が、変だぞ・・・?
荷物配布所のあたりが、なにやらざわついてる。
イケメンと、宮崎さんか。
「ちょっと!こんな荷物の乗せ方したら箱開きにくいよ!」
「…。」
イケメンはてきぱきと荷物をカートに乗せていってるけど、宮崎さんは、ぎこちなくて、勢いがないな。
返事もしてないとか、うーん、コミュニケーションが結構大事なんだけどな・・・。
「イケメン!色々と報告、事務処理ありがとう!めっちゃ助かった!」
「…赤池だって、言ってるのに。」
据わった目で見られてるよ!意外とこういうのも良いな!!
「宮崎さん、私代わるわ。お疲れ、カートに行ってもらって良い?」
「…いやです。」
「へ?なんで。」
どうしたの。
なにがあった。
「ちょ!!バカ!!お前こっち来い!!」
なんだ?杉浦君がカートほっぽり出して、わたしの手を引っ張って、壁際に…。
ちょっと!まさかあんた!!壁ドンしようって気じゃないでしょうね!!
まあね!身長同じだし、ぜんぜん怖くないけどね!!
「あいつが原田さんの足やったんだよ。」
「え、マジか!!ぜんぜん聞いてないよ!!」
「お前が聞こうとしなかったんだろうが!!何やってんだよ!」
ああ、自分の話でいっぱいいっぱいだったわ、ゴメンゴメン。
「いや、事務所いてぜんぜん知らなかった、え、どうやってぶつかったの。」
「ぼさっとして、止まってる原田さんにぶつかったんだよ!入りますも言わずに抜かすし、ありゃだめだ!マジでアブねえ。」
うーん、やめたいって言ってたみたいだし、やる気が湧かなくて、集中力を欠いちゃったのかなあ?
荷物配布も気が散ってるみたいだし、どうしよう。
ちょっと、発破かけてくるか。
「わかった。教えてくれてありがとう、今日家に虫かご置いとくわ!」
「そんなんいいから!!一回デートしてくれって言ってんじゃん!!」
「あはは、また今度ね!」
今度は、たぶん、永久に来ないんだけどね…。
「宮崎さん!ちょっと良いかな。」
「…。」
目も合わさずに無視かい!!嫌われてるなあ…。
「あのね、慣れない仕事、いつもがんばってくれててありがとうね、ホント助かってる。」
「…はい。」
おお!目があったぞ!返事ももらえた!
「今回は、ちょっと事故があったけど、宮崎さんの慎重さがあれば、次回はないって私信じてるし、信じたいって思ってるんだ!だからね…」
「…そんなに僕のこと、認めてくれるんですか?」
あれ、なんかいきなり、強気発言?
「わかりました、僕、あなたのために、ここに残りますね。」
「はい?」
「宮崎さんは、慣れない仕事、やめたいって言ってましたよね。違いますか?」
イケメンが会話に乱入してきた。
何だろう、なんか、機嫌悪そう?
「仕事はいやだけど、冬木さんが僕のこと認めてくれるなら…。」
「仕事がいやなら、やめたほうが良いですよ。」
「ちょっと!イケメン!言い過ぎ!!」
いつもの温厚さがうそのように、攻撃的になってる。
え、マジでいったいどうした。
困惑しつつも、私は岸部さんのカートに段ボールを置く。
ほら、私、仕事できる人だし!!
「ここは仕事をする場所なんです。誰かに自分を認めてもらう場所じゃないんだ!」
「でも…。」
イケメンは手を動かしながらしゃべってるけど、宮崎さんはただ、立ち尽くして話してるだけ。
うーん、こういうところかあ、困ったなあ…。
「ここには冬木さん以外の人間が何人いると思ってるんですか。一人に固執して、他の人たちをどうするつもりなんですか?」
強い口調のイケメン、なかなかお目にかかれないな。
よくみとかないと!!
「分かりました、やめます。冬木さん、僕と、付き合ってください。
「はあ?!」
何言ってんの、この人?!
なぜに、なぜに、付き合うことに?!ほとんど話したこともないし、むしろさっきまで嫌われてたじゃん!私!!!
「だって僕のこと、認めてるんでしょ。僕は、その気持ちにこたえたい。」
「ちょ!!ねえ、イケメン、この人何言ってるんだろう?!」
思わずイケメンに話を振る。
てゆっか!!イケメンが、なんか、怖い顔してる!!
「…さあね。」
目、そらされた。
私、なんか悪いこと、したああああ?!
「無理だって!何言ってるの?やだよ!!めんどくさい!!」
「僕のこと認めるって言ったくせに、とんだアバズレじゃんか!!」
「おい!!俺のやよいに何言ってんだ、オメー!!やんのか??!!」
うわあ、杉浦君まで来たよ!!
カートが近い!!あんたまで怪我人出す気か!!
「ちょっと!あなたたちいい加減にしてよ!!荷物めっちゃたまってるよ?!働かないなら出て行きなさい!!!」
ヤバイ、岸部さんがめっちゃ怒ってる。
私はちゃんと荷物配布してるじゃん!!
してないのはこのおかしな宮崎さんだけだってば!!
「ふん!やめた、やめた!!こんな仕事、やめてやるよ!!」
なんか暴言吐きながら、おかしな人は階段を下りて行った。
何なんだ、アレは。
多少呆然としたものの、きっちり私は仕事をこなす。
そりゃね、私優秀だからね!!
「あんたさ、自分の欠点、分かってんの?」
手際よく荷物を裁きながら、イケメンが私に声をかける。
「私に欠点なんかないよ!!惚れた?えへへ!!!」
「あんた、人の事、絶対受け入れるだろう。…それがだめなんだよ。」
あれ、私の発言は完全スルーですか。
なんというツンツンだ!!
でもまあ、イケメンだから、許してやろう!!
「勘違いさせる。良いやつばかりじゃない。むしろ、悪いやつばっかだ。」
許してやろうと思ったけど。
「あんたさ、いつか痛い目、見るよ?」
「それでも私はね!!人を信じていたいと思ってるんだから!!それで良いじゃん!!」
なんかハラ立つな!!言い返してやるよ!!
人なんて信じてなんぼのもんじゃないのか!!
何この人全人類が敵みたいなこと言ってんのさ!!
「信じたところで、裏切られるだけだろ。今だって現に!」
そりゃさ、人と人だもん、微妙にすれ違いみたいなもんもあるでしょうよ。
それでも信じてたら!信じ続けてたら!
いつか信じてもらえて、お互い信じあえる人間関係ができてくるんだよ!!
イケメンは、気が短かすぎる!
人を信じてなさ過ぎる!
「信頼関係を築くには、自分から信頼を与えなきゃ。あんたイケメンだから人からもらうことには慣れてるくせに、自分の信用を人にあげるのめっちゃ渋るんだね。なんか、貧しいな…。」
イケメンが、びくっと一瞬、荷物を載せる手を止めた。
あれ、ちょっと言い過ぎたかも?
おいおい、手、止めんなよ!荷物乗せてもらい待ちの列が伸びるじゃん!
「貧しい…?」
「だって信頼してもらわなきゃ、信頼しないんでしょ。もらってからじゃないと、何かを返せないような人って、こう、うーん…。」
「ちいせえんだよ!!人としての器が!!面の皮に自信あったところでそんなんクソみたいなもんなんだって!!」
はや!!
さっき荷物乗せたはずの杉浦君がもう戻ってきた。
こんなに早くばらまいてくれるなら、細かいのいっぱいのせちゃお。
「赤池さん。あんた、やよいに、合わないってことに気が付けよ。マジで。」
おお?
美少年がすげえ男っぽく見えるぞ…?
いつもみたいにガシャガシャ怒鳴り散らさないと、こう、美少年ゆえのすごみがあるな!
自分よりかわいい男の子なのに、言ってることは硬派なんだよなあ、この子。
よし、細かいの、全部美少年カートにのせたぞ!
あとはでかいのばかりだから、もうちょっとで終業するね。
「うわ!!細かいの全部乗せたな…覚えてろよ!!出まーす!!」
「頼んだぞ!美少年!!」
「うっせえぶす!!」
くっそー!相変わらず失礼なやつだな!!家の前に落とし穴掘ってやろ!!