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美少年の予定

「なんつーか、赤池は…、冬木がてきぱきと手続きしてる横でずーっとスマホいじっててさ。アレは多分、もうどうにもならんな、誰かに面倒な事を任せて自分は動かないタイプだ。そのくせして細かいところをチェックしていて人の手柄を横取りするような…人の厚意にケチをつけて文句を垂れるような…余計な手伝いをして恩を着せてくる。…かなりタチが悪いぞ」


 いつもならこの時間はお気に入りの焼酎で晩酌をしている原田さんだが、今日はケガが悪化するとヤバイという事でノンアルコールビールを飲んでいる。アルコールが入っていないからか、若干いつものおちゃらけが無く…渋い顔をして理路整然と分析をしている。


 どうやら病院でもいろいろと不愉快な出来事があったらしい。やよいがトイレに行ってるすきに看護師に対応が悪いと文句をつけに行ったり、本人が大丈夫だと言っているのにわざとらしく介助をしたり。どうも、ここぞとばかりにやよいに良いところを見せ付けようと頑張っていたらしい…?


 ふん、ホンっと~に、しょーもねー!!!


「はっきり言ってさ、パートもほぼほぼ全員幻滅してるんだよ。あんなんじゃやよいや俺がいない時、何か起こったらほったらかしにされるってビビッちゃってさ。中には勤務日の変更まで希望してる人もいる。急な勤務日変更はよほどのことがない限り認めてもらえないから、今月は乗り切れるとしても、たぶん来月以降…やよいが休みの火曜金曜は確実に人員が減るだろうな。俺と休みを合わせるって言ってる人もいたから」


 物流倉庫は人員確保がかなり最優先最重要事項だ。物量が多いので、サーキットを回る人間が足りないと残業が発生する事もある。トラックの運転手を待たせることもできるが遅延が出るし、夜間走行はできるだけさせたくないという会社の意向があるので、得策ではない。

 一番いいのは、特売の日や新店オープンを見越した人員配置計画の遂行で、場合によっては近隣の勤務地からヘルプ要員が派遣されることだってあるくらいなのだ。来月は新店オープンがあるため、きっちりとパートの出勤が組み上がっているのだが、それが崩れるとなると…。


「明日朝一で所長が見舞いにくると言ってるから、事の次第をみっちり伝えておいた方がいいだろうな。不破さんも急な勤務変更が頻発しては困るだろうし、まあ全部まとめていろいろと伝えておくよ。杉浦君は冬木がおかしなことに巻き込まれないように目を光らせとけよ?ぼさっとしてると…壁ドンなんかじゃすまない事態が起きるかもしれんからな」

「させねーよ!!!させるつもりなんかねーっての!!でもっ!!」


 俺は守る気満々だが、ガサツで無防備なやよい自身がフラフラとあっちに行ってしまえば…クソっ!!!


「はっきり言って心配で…、気が気じゃねーんだよ…!!何なんだよ、この怒涛の感じはさあ!!はっきり言って気が休まらねー!!もう何が起きてもおかしくねーつぅか、これからどんなトンでもねえことが起きるのか予想もつかねーっていうか…シャレにならないことが起きそうなニオイがプンプンするっつーか、もうさ、マジで勘弁してくれっつーか!!!」


 何だろう、嫌な予感ってーの?

 ……あれだ、小学校の時に頭のおかしいおばさんにいきなり羽交い絞めにされる直前に感じた、ねっとりとしたべたつく空気のような。高校入学早々ド変態に目をつけられてハメられる前日に、ケツの穴がむずがゆかった時のような。…虫の知らせっていうのか?こういうの??


 デカい声を出したり、股間に打撃を与えて回避できるようなもんならいいけど、俺一人の力だけではどうにもならない事態が起きてしまう事だけは…なんとしても阻止しねーと!!!


「まあまあ、まずは…焦るな。こういう時こそ…男の余裕を見せるんだ。杉浦少年は俺の目が光ってないとすーぐに暴走するからな。いいか、腹は立つかもしれないが、ブチ切れて全部パアにするのは悪手だ。ムカつくことも多いだろうが、まずは落ち着いて…深呼吸をしろ」


 そうだ…明日からは、ムカつくやつに飛び掛かって殴ろうとする俺を全身で止めてくれる人はいないのだ。自分で自分を制することができなければ、あのクソ忌々しい木偶の棒に裏をかかれてハメられる可能性だって、ある。


「言っちゃあなんだが…冬木はアホだ。その場その場で調子のいいことを言って…あんな赤池青年を喜ばせてなんぼの恋愛遊戯なんざ、すぐに化けの皮が剥がれるに決まってる。状況をよく見て、時期を待つんだ。なあに、男ってのはな、ホレた女の全てをまるっと受け止める器のでかさがあればいつでも逆転できる。背は足りんが、お前…でっかいもん、持ってんだろ!!どっしり構えておけって!!」


 若干にやついた原田さんの視線が下の方を向いていることはさておき!!


「構えるも何も!!俺は硬派なの、正直受け止めるも何も…お、女の扱いなんて…」


 微妙に恥ずかしさが顔を出し、言葉がモゴモゴと…あー、もー!!

 なんとなく喉の奥がつっかえた感じがするので、勢いよくグラスのコーラをグビリと飲み干し!!!


「しゃーねーな、こうなったら…強化合宿やるか!!杉浦少年の青い恋を応援し、悲願達成するように熟練のスタッフを呼んで夜通し鍛えてやる!!よーし、さっそくライン入れるか!!ええと…」

「あら♡じゃあ吹越さんと上出君呼ぶのね♡いつにする?」


 原田さんの立ち上げた会社の社員にはアホみたいにモテる奴がいてさ!!!その人が俺のことアホみたいに買いかぶって、ここぞとばかりに勉強指南や進学指南やゼミ指南や人生指南や恋愛指南はたまた女性指南その他もろもろを!!俺はいいっていってんのにわけわかんねえ女体解体新書とか渡してきて、アアッ、もう!!!これ、絶対にめんどくさい事になるやつだ!!!


「ちょ…いいっての!!そこまでしなくても子供じゃねーんだから、俺は自分で…

「おっし!明後日決行決まったから!!着替え持って来いよ、ついでにひので(スーパー銭湯)行くから!!」」


「はあ?!骨折れてんのに行けるわけないじゃん!!!滑って転ぶつもりかよ!!」

「いや、俺は散髪とレストランの方行くだけだから!!」

「あたし岩盤浴入ってモンブランパフェたべよーっと♡」


 勝手に俺の予定が決められたんだけど?!

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