うまー!ヘ(≧▽≦ヘ)♪
「ああっ!!無い!無いじゃん!誰だ!!食った奴!!」
食堂の仕出し弁当を取りに行くと、弁当がない!
このままじゃ、私の昼ご飯が!!!
「おお、ごめん!腹減ってたから、二つ食ったわ!」
「俺嫌いな魚はいってたからさ、飯だけ二つ分食ったわ!ごめん!」
ちょ!!なんというフリーダムな奴らなんだ!!
ひとの飯勝手に食うなよ!!!
「やよいちゃん!これ、これ食べなよ!」
古川さんが、お寿司持ってきてる!
料理上手の古川さんは、よくいなり寿司や創作寿司をおやつ用に持ってきてくれてるんだよね!
「三時にみんなで食べようと思ってたけど、お弁当ないんじゃ、ね。いいから、食べて。」
「ありがとう!!このお礼は…」
「マドレーヌ!!!絶対マドレーヌ!!」
私お菓子作り大好きなんだよね!
よし、今週の日曜は、マドレーヌめっちゃ作ろ!!
「イケメンも一緒に食べよう!おいしいよ!古川さんのお寿司!」
「いや、僕は…」
「遠慮すんなって!はい!アーン!」
おお?!イケメンにアーン、ゲットだぜ!!
無理やり口の中に入れる…なんだ!!ちょっとこの人、虫歯一本もない!!!
健康優良児かよ!!
「…!美味い、うまいな、これ!」
「古川さーん!イケメンの美味い、いただきましたよー!」
「あらやだ、ふふふ。」
大き目のお重箱の中のお寿司は、私とイケメンのおなかの中に、消えた!
いやあ、イケメンと一緒にご飯、めっちゃうまいわ!!!
昼からもがんばってバラマキやるぞ!!オー!!
重たいカートを操る私の足取りは、ひじょーに、軽い!
だって!目の前に!!イケメンがいるんだもん!!
ああ、イケメン、イケメン…!!
イケメンさん、背が高いのね、そうよ、イケメンなんだもん。
何センチくらいあるんだろ、180あるよね、たぶん。
でっかいなー!おっきいなー!偉大だなー!
こんなにも頭の中がイケメンでいっぱいだというのに、私はきちんと仕事をこなしている!
私、気は散りやすいけど、マルチタスク能力地味に高いのよ!!マジで!!
ほら!今だって!イケメンが化粧水のフィルム引っ掛けて破損させちゃったのみつけちゃったんだから!!
「どうした?イケメン!破損はあっちに置くとこあるよ!」
「すみません、つめで引っ掛けちゃって。爪切りって、持って、る?」
「あるある、じゃあ、カート置いて事務所、いこ。」
イケメンと二人連れ立って事務所に行こうとしたら、杉浦君が噛み付いてきたよ!!
「ちょ!!サボるなよ!社員だろ!!」
「さぼってねーよ!!お前は早く段ボールたためよ!!」
今日の出勤者は、カート台数25に対して30人。
5人はカートを操れなくなる。
そのうち二人は商品配布係、荷物受取所でカートにバラマキアイテムを、乗せる。
一人は要らなくなったダンボールをひたすらたたみ、残る二人は、折りたたみコンテナの補充をやる。
ヤバイ!美少年がサボってるから、段ボールめっちゃたまってるよ!!
「帰ってくるまでにダンボールの山が終わってなかったら…お前の家にゴキブリ放つぞ!!」
「ゲゲ!マジで!やだよ!!」
この場合の家ってのは、ゲームの家ね。
よく一緒に遊んでるのさ。
一緒に遊んでくれるのなんて、美少年くらいしかいないしさあ!
「じゃたのんだ!まあ、すぐ戻ってきて手伝うからさ!」
事務所に行ったら、もぬけの殻だった。
ああそっか、さっき物流ドライバーが遅れてるとか言ってたから、別事業部に取りに行ってるんだな。
経理さんは今の時間は銀行か。
事務所の自分の机の中から、爪切りを出す。
「これ、使って。」
「ありがとう。」
お礼を言うその顔、めっちゃイケメンやんけ!!
パチ、パチ、パチン・・・。
なんか、切れの悪い音だな。
このイケメン、実はめっちゃ不器用?
「あたしイケメンの爪、切ったげるよ!かしてみ!」
爪切りと、イケメンの指を奪い取る。
うはあ!!めっちゃ、爪、でかい!
イケメンってやつは、イケメンってやつはああああ!!!
爪までイケメンなのかい!!!
「あ、りがとう。」
パチンパチンと、切ってあげたら、しおらしいイケメンがお礼を言ってきた。
「いえいえ!こちらこそイケメンの爪を切らせていただきまして、とんだご褒美ざんす!!!」
事務所から戻ると、なにやらダンボールたたみ場が、騒がしい。
「え、何、どうした…うわ!!!」
「やべえよ!ダンボールで切っちゃった!」
結構ぼたぼたと血がー!血がーーー!!!
杉浦君が手のひら、ざっくりやっちゃったらしい。
「ちょ!誰か!ここ代わりにはいって!」
とりあえず、自分のハンカチで、杉浦君の血を止める努力をする…。
「あ、僕はいるよ。段ボールたためば良いのかな?」
ナイスイケメン!ここは頼んだぞ!
「岸辺さーん!ちょっとイケメンにやり方教えてあげてー!」
「はーい!」
うわ!!地面にも血が!!
帰りに雑巾持ってこないと。
「オメーが俺置いてあいつと飯なんか食うからこんなことになんだよ!!ばーか!!」
「黙れチビ!こんなとこで血流してるから背が伸びねーんだよ!バーカバーカ!」
ハンカチでぎゅっと杉浦君の手のひらを押さえながら、再び、事務所へと向かった。
血を押さえながらだと、階段もうまく下りられないな。
ああ、そっか、手をつないでいけば、良いんじゃない?
ぎゅっと手のひらを押さえ込むように、ハンカチごと、杉浦君の手を握りしめる。
「ッ!い、いってーな!!」
「男は黙って痛みに耐えろ!!」
ぐいぐい引っ張って、事務所に行き、救急セットを取り出す。
あ、防水フィルムあるから、これでどうにか、なるかな?
握り締めていた、手のひらを、そっと広げさせてみる。
うん、血は止まったみたい。
派手に出血したわりに、そんなに切れてないかな。
なんか血の気、多いんじゃないのこの子。
ガーゼをはさんで、防水フィルム貼ってと。
「ありがと…。」
「素直かよ!じゃあ、私のおうちに釣竿、置いてってね!」
「ちょ!!マジで!無理だって!!」
怪我の手当てをして、サーキットに戻ると、いつの間にかダンボールはすっからかんになくなってた。
さすがイケメン!やることなすことすべてかっこいいな!!
持ってきた雑巾で床を拭こうと思ったら、もうすでに拭いてあった。
仕事も速いとか、この人なんて神なんですか!
ああ、イケメンの、神か!
私はすっかり、この、イケメン教の信者となって、しまったのであります。
で。イケメンを称えること、早4か月。
「あんたね!イケメンイケメン、いい加減にしてくんないかな!」
「イケメンをイケメンといって何が悪い!!」
おかしいな、どうしてこうなった。