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美少年の疑念

 ダメだ、やよいは……、完全に俺の事を範疇外認定している。


 何を言っても、子ども扱いされる。

 どう口説いても、スルーされる。

 訴えれば訴えるほどに、ギャグ方向に持っていかれる。


 ……聞く耳を持たない?

 いや、確かに聞いてはいる。

 決して、無視をされているわけではない。

 キッチリこっちの言う事に返事は返してくるが、ただ…それだけだ。


 ……どれだけこっちの本気を伝えようとしても、本気で聞いてもらえねーんだよっ!!


 不器用丸出しで、恥を撒き散らして口説いても一発も命中しない。ちょっとぐらいヒットして、顔の1つも赤らめてくれるかと思ったのに…顔色一つ変えずに口をとがらせてつまんねえことばかり言うんだよっ!!


 必死になってみっともなく伝えたいことを投げつけてみても、全く効いちゃいないんだ。暖簾に腕押し、糠に釘、豆腐にかすがい、馬の耳に念仏、手ごたえどころか怒りが湧いてくる始末だ。


 最近めっぽう塩対応される事が多いから、地味にきつい言葉を返されてうれしいのがまた情けねえっていうか!!クソ、こんなちいせえことに喜んでる場合じゃねえってのにさあ!!


 なに、恋心ってのはさ、真正面からぶつけてもこんなに…はぐらかされるものなのか?!


 やよいがでかい声で恋をした事がないと怒鳴っていたが…俺だってしたことがねえわけで。だからこんなにみっともなく喚き散らす事しかできないっていうかさあ!!


 好きだと思う気持ちを俺なりに伝えてはいるが、正しい答えってやつがわからない。

 …というか、俺は誰かの導き出した正解なんてもんよりも、自分自身で好きなやつをもぎ取りたい気持ちしかない。人の二番煎じなんかで、ホレた女を手に入れようとは思えない。俺は俺のやり方で、真面目に気持ちを伝えていくしかないと思っている。


 だから、ガキみたいに突っかかっては玉砕?しているわけだけどさあ!


 ……だが、そんな中で。


 やたらめったら自分の気持ちをぶつけていくたびに…なんだろう、時々…ふと、気になる瞬間がある。やよいと話していると、たまに……違和感のようなものを感じるんだよな。


 思ったことをそのまま口にしているのに、本音が見えてこないというか……。

 いや、本音は全部包み隠さず出しているのだが、心が見えてこない?

 嫌だという言葉、バカにする気持ち、素直な感情がド直球にぶつけられる一方で…なんだろう、薄っぺらさを感じることが、あるような。


 俺だけが、みっともなく丸裸で喚いているような。

 やよいが、ガッツリ十二一重でも着こんでいなしているような。


 年上だから?……いや、そういう感じではない。がさつでおおざっぱでデリカシーの欠片もないやよいに、一歩引いたところから対応している大人の女性という雰囲気は皆無だ。

 とても大人の女性と言えるような落ち着き払った面は見当たらず、むしろガキ丸出しの俺とお似合いの…むしろやよいの方が年下なんじゃないかと疑うレベルだ。


 確かに激しい言葉のラリーはする、けれどめちゃめちゃ…表面的というか。


 ことごとく避けられているような。

 打ち返されるんだけど、ただそれだけのような。


 これが…年上女に相手にされない、一方的な求愛のむなしさってやつ?いや、そういうんじゃなくて、うまく言えないけど、何か、何かおかしな感じがする。


 やよいは全力フルパワーで自分を出している、それは間違いない。


 だが、時々…めちゃめちゃ不自然な瞬間がある。


 通信ゲーム中にバカみたいなやり取りをしているのに、たまに漂うおかしな…間?

 サーキットで怒鳴り合いながら、ほんのり感じる…わざとらしい空気?

 ころころと変わる表情で、見ていて飽きないはずなのに…いつも違う顔を見ているはずなのに…見覚えのある感じ?


 自分はこう思っているんだから、それをちゃんと聞いていたらいいでしょ?という錯覚があるというか。なんとなく、言い聞かされているような、言い聞かせているような…見せているような、見せられているような……。


 ……やよいの、やよいである…やよいをやよいたらしめている、芯の部分が…見えてこないと言うか。


 伝わらない気持ち、聞いてもらえない言葉、モヤモヤした謎の感覚…全部がぐちゃぐちゃになって、苛立ちと焦りとおしとどめる事ができない欲?その他もろもろが…あふれ出す。


「俺は!こいつに!選んでもらわなきゃ意味ねーんだってば!!!」


 まるで…駄々っ子だ、こんなもん!!

 あー、全然決まんねえ、クッソ―、なんでこうなっちまうんだよっ!!


「冬木!ここまで男に言わせといてお前は何なんだ!」

「わ、わかりました、わかりましたってば!考えとくって!!」


 パートさんたちの追撃もあって、ゴーイングマイウェイガサツノーデリカシー大魔王から何とか俺と付き合う事に関して前向きな返事を聞くことができた訳だが。


 俺は…どうしても、心の奥底から喜ぶことが、できなかった。




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