美少年の不満
あー!!くそっ!!めっちゃイライラする!!
なんなんだ、なんなんだよ、いったい!!
ニコニコ話しかけてるやよいに向かって仏頂面で応えてる木偶の棒にも腹が立つし、いいところを見せようと頑張る俺に憎まれ口をたたくやよいにもムカつくし…、何より落ち着いた大人の男の余裕をぶちかませない、がきんちょの自分自身が許せねえ―!!!
どうして俺は…子どもっぽいやよいの言動を受け止めて余裕の表情を向けてやれねえんだ!!
いちいちやよいの言葉に反応して言い返すとか、こんなんじゃ…いつまでたっても俺は五歳年下のお子様としか見てもらえねえってのにさあ!!!
ああ、マジでもうちょっと…大人になりてえな、そんなことを思いつつ荷物をさばいていく。
「杉浦君は…いいね、パワフルで。」
荷物受取所で下から上がってくる段ボールを次々に捌きまくっている俺に、図体だけはデカい木偶の棒が声をかけてきやがった。いつもだったら黙って荷物を載せているだけのくせに、珍しい。
…ああ、なんだ、荷物受け取りの人の波が去って、やることがないから声をかけてきたのか……つか、話すくらいなら後ろの段ボール潰せよな!!こいつは何気に、やよいや所長の居ないところでは、手抜きをしたりサボったりしやがるんだよ!
「別に。あんただって若いしデケーんだから力ぐらいあるだろ?」
イラつきながら段ボールを潰し始めた俺に倣って、小さい段ボールを几帳面にたたみ始めた木偶の棒…明らかに何か言いたそうな雰囲気だ。完全に上から見下ろしているくせに、こちらを見上げて不平不満を訴えかけるような表情を向けて黙り込む。…こういうのがさらに俺の気持ちを逆なでしやがるんだよ!!
こいつのムカつくところだ。言いたいことは言わない、察してくれないと困る、常に受身の文句の多い人間なんだろう、たぶん。いつも他人の事を恨みがましい目で見てるし。四六時中腹に据えかねてるものを抱えてるのがマルバレっていうかさ、常に自分が被害者ってツラしてさ、人嫌いにもほどがあるっていうか!!
俺だってはじめは人間不信の人嫌いだったから、多少同情してやろうという気持ちはある。だがこいつは…俺みたいに不満を自分の中に閉じ込めるタイプじゃないから始末が悪い。
パートさんたちは、がさつで細かい事に気が付かないやよいみたいな人達ばかりじゃない。
人のミスを受け止める器のでかさも無けりゃ責め立てる強さもないくせに、きっちり不満を表情やため息で外に出しやがって、それを見て不安を感じている人は少なくない。
社員なんだから、そういう気遣いってのが必要なんじゃねーの?!嫌々フォローしてても人間関係なんかうまくいくわけねーだろうが!!
本当になんて言うんだろうな、厭味ったらしくちょっとずつ漏らす感じで…女々しいったりゃありゃしねー!!
しかもこう、なにかにつけて、しっかりやり返す的な感じがとにかくムカつくんだよな…。お礼を言った人と言わなかった人に対する格差みたいなのがものすごくて、人間としてのケツの穴の小ささを感じざるを得ない。ある意味嘘が付けない正直者なのかもしれないけどさ、もっと大人になれねえの?!どこの社会人が朝の挨拶をしたのに返事をしてくれなかったからって理由で、おばちゃんの事しっかり無視し返したりとかするんだよ!!
どう考えても俺よりこいつの方がお子様だと思うんだが、やよいはそうは思ってくれねえし!!くっそー、なんでだよ!!!
「…そういう、意味じゃ…ない。」
「ぁんだよ!!言いたいことがあるならはっきり言ってくれないとわかんないんだけど?!」
つい、苛立ちが抑えきれずに怒りをぶつけちまった。ムカつくとはいえ、相手は社員、しかも年上。今までそれなりに気を使っていた部分もあった。一瞬、木偶の棒がひるんだ表情を見せた後、目を逸らして、吐き捨てた。
「思っていることを口に出せるほど…僕は幼くない。正直、君がうらやましいよ。」
これ見よがしに、でっけえため息をつきながら!!!
なんだこいつ!!!
こんなひねくれ者のかまって野郎のネガティブ属性ヘタレ被害者妄想の塊のイヤミ神経質倍返し至上主義の盗人猛々しいクソド陰キャコミュ障が……やよいの思い人?!
思ってることを口に出せないような奴の方が幼いに決まってんだろうが!!
オメーに幼いと言われる筋合いは・・・ない!!!ふざけんな!!!
こいつは100%やよいをダメにする!!!百害あって一利なしの、排除すべき対象だ!!!こんなのと付き合ってたらやよいの良さが…今はいいけど、いずれ絶対に消滅してしまう!!!
俄然、庇護欲と言う奴が湧いた。やよいは…俺が守る!!こんなクソみてえな奴に絶対渡すわけには…いかねえ!!!




