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美少年の怒り

 今日は朝からバラマキ作業に入ることになった。


 イケメンとやよいが、二人仲良く配布係に入っていやがる。

 輝くような笑顔でハツラツと荷物をカートにのせるやよいに対し、相変わらずどんよりとしたオーラを背負いつつバレバレの作り笑顔で荷物を乗せる木偶の棒…、ついついやよいの所に荷物を取りに行きたくなるパートさんたちが増えるのは仕方がない。


 見えない拒絶の壁が、みんなの目に見えるようになってきているんだな、多分。最近では進んで木偶の棒に声をかける人が目に見えて減ってきた。せっかくのやよいのコミュニケーションフォローをホント無駄遣いしやがる…。


「うわー!イケメン、めっちゃセンスいいのせ方してる!これならパートさんたちもバラマキやすい!さっすがあ!!私が惚れただけのことある!!」

「ッ!!!あのね、早く荷物配った方が良いよ?!」


 こちらの洞察には微塵も気付かず、やよいのおかしなラブラブ大作戦は相変わらず恥ずかしげもなく決行されていてだな!正直イライラが止まんねー!!!


 この空気感の中、己の信念を微塵も曲げないという意味では、やよいと木偶の棒は似た者同士なのかもしれないぞ…。こんなこと、知りたくねー!


「やよい!!さっさとのせろよ!遊んでんじゃねーぞ!!」

「うっせー!人のラブラブ邪魔すんな!!ちびっこはあっち行け!」


 状況を判断したところで、荷物受取所でイチャイチャしながらバラマキアイテムを配布してるのを見るたびに、俺の機嫌がどんどん悪くなっていくわけで!!!


「…杉浦君、ガンバ!!」

「今度やよいちゃんの写真恵んであげるから、元気出してね?」


 サーキット内でパートさんたちとすれ違うたびに…めちゃめちゃ慰められるのが、ありがたいんだけど地味にぶっ刺さるっていうかさあ!!


「写真じゃなくて!!現物を抱きしめなきゃ意味ねーっての!!」


 誰かがケースの中に横置きしたカップ麺を直しつつ、本音をぶちまける。


 やよいに対する気持ちを恥ずかしがって隠したり誤魔化したりしたところで一ミリもバレないし伝わらない。それどころか、真実をドカンドカン口にしてもすべてスルー、微塵も恋に発展しないことが判明している。


 誤魔化している暇があるくらいなら、照れているくらいなら、正面からぶつかっていってもぎ取るしかない!!


 俺の本気を、やよい本人だけじゃなく、たくさんの人に知ってもらう必要性がある!!!どこから思わぬ展開になって、恋が動き始めるかわからないだろ?!


「男だねえ…、冬木はなんで気が付かないんだ、いくらなんでも幼すぎだろう。」

「こんなに男気ある杉浦君がいるのに、もう…やよいちゃんってば…ひどい…。」


 みっともなくてもいい、男だったら、好きな女を抱きしめるために、我武者羅にならなくてどうすんだよ!!!


 少しでもいいところを見せて、ホレてもらうために…仕事をきっちり仕上げて、やよいの元に舞い戻ると。


 げ!!!耳かき一本包装500本入りの箱持って…こっちを見て笑って、ちょ!!!のせやがった!!!


「やよい!!こっちの箱のせろよ!これ面倒だしバラマキたくねーよ!!」

「うっせー!やよいって呼ぶな!配られたらやり切れ!乙!!」


 一番めんどくさくて時間のかかるやつを回したって事は、俺に対する信頼感はあるということ…だよな。

 ほんの少しだけ、優越感のようなものが漂うが、へらへらとした顔を見せるわけには!!!


 ムカつく言葉をもらいつつ、会話できたことがうれしいとか…悟られるわけにも、いかない!!!どうせこの流れは、木偶の坊上げの俺下げ展開にしか成り得ないからな!


「くっそー!覚えてろよ!!出まーす!!!」


 怒りの言葉を吐きつつ、やや顔を斜め下に向けて出発した。


 ……くそ、なんか俺…子どもみたいじゃねえか!!あー、もっとこう、さらっと大人のセリフ?ってのが吐けないもん?!自己嫌悪をしつつ、綿棒を仕分けしていく。


 ……うん?なんだ、本数が足りねーぞ。


 クソ、集中しなきゃいけない作業だったのに、つまんねーこと考えてたらミスっちまった!!

 みっともないところをやよいに見せたくねえな、そう思って振り返ると…なんだよ!!!


 やよいと木偶の坊が…!めちゃめちゃ顔を近づけて…イチャイチャしてるじゃねえか!!!

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