( ☆∀☆)じーっ…
「冬木さん!!!赤池君、すみませんね、冬木さんはその、ちょっとおかしなテンションになることがありまして…。」
なんだ所長!失礼な物言いだな!
「は、はあ…。」
「じゃあ、サーキット案内するね?!行きましょう!行きましょう!!!」
あ、ちょっと緊張してるみたい。
なんだよー、せっかくのイケメンが台無しだよ!
これは緊張をほぐすためにも、頑張っちゃわないとね!!
堂々と、イケメンを盗み見る!
ああ、イケメンですね!超イケメンですね!ハンパなくイケメンですね!!!
誰だ!社員に見目を求めないって言った奴!
めっちゃ見目がいいと嬉しいやん!!
いい顔一つでこのテンションアップ!すげえなイケメン!!
階段をのぼり、荷物受取所の方へイケメンと連れ立って歩く。
「イケメンはおいくつですか?」
「赤池ですけど!」
少々剣呑な雰囲気で返されたぞ?
おかしいな。魔法が効いていない!!
遅効性か?
いつ効いてくるんだ!
「私25歳なんですよ、これでも新卒で入ってですね。」
「さっき所長から伺いました。…同期ですよね。」
マジで!!
これってマジで運命の出会い的な…?
「本社の合同入社式で、見かけましたよ?覚えてませんか?」
「全然!ごめん!」
おかしいな、こんなにイケメンだったら、絶対覚えてるはずなんだけど??
ま、いっか!
荷物受取所に行くと、ちょうどお昼のブザーが鳴った。
うちの事業所では、ブザーの音で一斉お昼休憩に入る。
で、食堂で、仕出し弁当を仲良くいただくのですよ。
「はーい!みなさあん!!新しいイケメンが来ましたよおおおお!!!こっち来て!!」
カートを駐車場に止めて、総勢30人が、集まってきた。
「イケメン?」
「おお、確かにイケメンだ!」
「そうか?」
「イケメンだろ」
「いいねえ、目の保養、まさにイケメン」
「ちょっと!!冬木さん!!名前!!名前で紹介してくれないと困ります!!!」
ざわつく荷物受取所でイケメンが半泣きになってるよ!
どうした!もっと面に自信を、持てい!!
「ええと、イケメンのお名前は、赤池さんです!!みんな、よろしくね!!」
「よろしくお願いします!!」
大きな声で、カッコよくあいさつしたイケメン、くー!チョーかっこいいー!!
「よろしくね!イケメン!」
「イケメンがんばろうね!」
「イケメン飯食った?」
「イケメンどっから来たの?」
あちらこちらからイケメンコールが!!!
さすがイケメンパワーは違うな!!
もはやこの事業所内で、イケメンの名を呼ぶものは皆無に等しかろう!
「そんなにイケメンか…?俺のがカッコ良くね!!」
いささか憤慨しているのは、20歳の若者、杉浦君。
あんたとはタイプの違うイケメンなんだってば。
この子いわゆる美少年顔で、パートさんたちの嬌声を日々、受けてるんだけども。
どうやらそのプライドが、傷ついた、模様。
「いや、君の場合はね、カッコイイよりも、かわいいだから。」
「ふん!飯行こ!行こ!」
私の手を取ろうとするが。
「ああごめん!カート操作のチェックするからさ!今日は一人で食べて!」
「なんだよ!ぶーす!!」
「うっせえ!ちび!!」
私と杉浦君は、ケンカ友達なのである!!
毎日華麗にケンカ、そしてげんこつタッチで仲直り。
おお、なんという、青春。
「ちょっと!イケメンはこっち来て!あ、ごはん食べた?」
パートさんたちにもみくちゃにされながら、イケメンがこっちにやってくる。
「いえ、食べてないですけど、注文してないんじゃないですかね、仕出し。」
「ああ、余分来てるからあるよ、あとで一緒に食べよう。ちょっとカートチェックしたいんだよ、いい?」
パートさんたちが抜けたサーキット内は、しんと静まり返っている。
カートを一つ、駐車場から持ち出して、操作チェックをする。
「じゃあ、イケメンの思うように、これ動かしてみてくれる?」
「赤池です。」
動かし方がね、地域によって違うことがあるんだよね。
カート事故は、はっきり言って命取りにもなるので、この辺りはちゃんとチェックしておかないと、まずい。
商品のは入ってる段ボールを一つカートにのせて、出発。
二人で、サーキットを回る。
「はい、ここで回ってください。」
「回りはいります」
「あ、ここは『回りまーす』でお願いします。」
「はい。」
ああ、やっぱり地域で多少違うなあ。
でもいい声だ、許す!しかし、間違いはしっかり正しますよ?
「入りますは、入りますでいいんですね?」
「はい、いい声ですね。」
しまった、口滑った!まいっか!
あ、変な顔された。
「あの。ええと。」
言い淀むイケメンもかっこいいじゃん!!
「バラマキ終わったら、荷物受取所で、『もらいまーす』ね!」
「わかりました。」
なんかさ、さっきから、チョー気になってるんだけど。
「同期だよね?なんでため口じゃないの?」
「そうですね、うん、そうだね。うん、わかった。」
こうして、私とイケメンは出会い、本日より恋に落ちることになったのである!!
ただし今のところ、一方的!!