((・∀・)人(・∀・)ウフフ
次の日から、私とイケメンの関係が変わった。
私のイケメン愛に、イケメンが応えるようになったのですよ!!!
「おはよう!イケメン!今日もいい顔してるね!!」
「ありがとう!冬木さんもかわいいね!!」
イケメンは今までの感情のやり取りのなさが嘘のように、私の愛情あふれる言葉に、愛情あふれる言葉を返してくる。
そうね、こういう言葉の与え愛がね、人と人の間には、必要だと、思うのよ!!
ロッカールームですれ違って、声を掛けただけで、このおかえし。
イケメンもなんだかテンション高いみたい!
ロッカールームから出てきたパートさんたちが、みんな変な顔してるよ!!
…まあねえ、こんな明るいイケメン、なかなかお目にかかれなかったからねえ。
「おい!!やよい!!どうなってんだよ!!なんだよ!!これは!!」
ロッカーに自分の荷物を勢いよくぶち込んで、杉浦君が凸してきた。
おお、美少年、朝もはよからきっちり噛みついてきますね!!
あんたホント狂犬だな!!
そんなに噛みついてばかりで、犬歯が折れたらどうすんだ!!!
「うん!なんかね、イケメン私のことずっと昔からすごく好きだったんだって!だから恋人になった!」
「はあ?!」
おお、美少年よ、君、ものすごい顔になってるよ?
怒ってんのか、困惑してんのか、いずれにせよ、めっちゃ美少年顔だ!!
白川さんがチョー凝視してる!!そりゃ見るわ!!
これは新作のうっすい本、来るかも!!
始業のブザーが鳴った。
よーし!今日もサーキット、歩きまくるぞー
「回りまーす!!」
声高らかに、商品をばらまく。
今日の配布は、イケメンと杉浦君。
なんか、空気が、硬いな!
サーキットの端っこから、きっちりバラマキしながら、様子をうかがう。
「ちょっと冬木さん!あんた、本気なの…!!」
バラマキ待ちで後ろについた岸部さんが私に声をかける。
「え、本気も何も。イケメン狙ってるってずっと言ってたじゃん!」
「杉浦君は!!かわいそうだよ!!」
「だって、あの子は年下だし、ケンカ友達だもん。」
そうなんだよね、ここに入った時から、ずっとケンカしてる。
最初っからケンカしっぱなし。
『ねーねーこれ教えて!』
『人にもの聞く態度じゃねえな!』
『人に教える態度じゃねーな!教えろよ!ちび!!』
『ふざけんなよ?!ブース!!』
『あんためっちゃ男気あるな!いい仕事すんじゃん!』
『当たり前だろうが!ふざけたこと男がやれるかよ!!』
『ヤベえ!ミスった!ごめん!』
『謝り方も潔しだな!!!許す!次こっちやれ!!』
『やるから弁当の漬物よこせよ?!』
『若いくせにじじい嗜好だな!乙!!』
杉浦周という美少年。
ぱっと見、女子にしか見えないけどさ!
めっちゃ、男。すんごい、男。しかも、猛獣。だたし、ちび!!
いいところ、いっぱいある。
でも、この子は、そういう私のよかった探しを、ことごとく跳ね返して、来たような気がする。
いいとこを見つけて知らせなくても、自分で自分の道をどかどか歩いていくタイプ。
この子は、若い。
私の助けがいらない、自立した若い男の子だと、思う。
「美少年はさ、こんな年上のおかしなテンションのばばあなんかよりもさ、同世代の若い儚げな女の子の方がいいんだって!マジで!」
「…。冬木さん。…実は、なんか、あるんじゃないの?」
げげ!!
岸部さんの観察眼、侮れないんだよな…。
退職の話もあるし、ここは軽くスルーしておこ!!
「なんもないよ!まあ、軽く見守っといてよ!ははは!回り、まーす!!
あ、この箱、ボールペン入ってる。
ゲゲ!!250本入りじゃん!
数えるの大変だな…ま!私仕事早いし!きっちりやるけどね!!
ボールペンを数え始めた私を、岸部さんが何も言わずに、抜かしていった。
昼休憩のブザーが鳴ったので、食堂に行くと、杉浦君が待ち構えていた。
おお?なんだこれ、なんだか空気が、怖いんですけど!!
「おい!やよい!こっちにこい!!これは、命令だ!!」
「ちびが私に命令とかすんなよ!私はイケメンと…」
「あいつは他事業所に行ったんだよ!呼び出されてさ!!」
なにー!仕方がない、行くか…。
いつも端っこの席を分捕る杉浦君の隣に私。
杉浦君の前には岸部さん。
その横に白川さん。
その横に佐木さん。
その前に大崎さん。
みんな古株、仲良しこよし、っていうか、仲の悪い人なんて一人もいないんだけどね!
「おい。赤池と付き合うって本当なのか。」
「付き合うっていうか、私と恋をしてくれるって言質取った!」
目の前の白川さんと岸部さんが目を合わせてびっくりしてる。
佐木さんと大崎さんは、ただ、ごはんをもぐもぐ。
男は黙って、飯を食らう、と。
「オメーにあの木偶の坊は合わねえって言ってんだろうが!!俺にしろ!今すぐ乗り換えろ!」
「乗り換えってwww電車じゃあるまいし、おこちゃまは指くわえて大人の恋路を眺めときなよ!」
しまった、ちょっと買い言葉だったな。
「おこちゃまっていうな!!五歳しか違わねえだろ!!」
「五歳も違えば男の子としか思えんわ!!」
弟が同じ年ってのがさ、地味に影響でかいんだよね。
見てたアニメも違うし、ハマったゲームもずれてるし、まあ、最近の集まるゲームは一緒に楽しく遊んでるけど!
「ばっ!!俺だってオメーの知らない男の部分があるんだよ!!あんまテキトーなこと言ってるとオメーの膜ぶち破るぞ!!マジで!!」
「ふざけんな!!五歳も年下のくせに、ナニ人の強固な膜ぶち破ろうとしてんだよ!!おこちゃまはエロ本みて満足しとけよ!!バーカ!!!」
「ちょっとちょっと!!ここには枯れてるやつもいるんだからさ!自粛しろよ!お前ら!!!」
ちょっと図に乗った私達の物言いに、佐木さんが全力でツッコみいれてきたよ!!
ああ、うん、ごめん!!マジ反省してる!!
怒られた私たちは、若干おとなしめに、お弁当を食べた。
なんだかなあ、美少年の怒鳴り声が響かないと、ご飯がすすまないのは、気のせいかな…。




