開戦のとき
僕は給食が嫌いだ。
かぴかぴのパン、よくわからない豆の入ったスープ、すっぱい野菜・・・。
どれも中学生の舌に合わない質素な味付け。
どうして的確に好みを外してこれるのか。甚だ疑問である。
フライドチキンやハンバーグ、パスタ、これらでも十分に栄養のある美味しい給食になり得るのに。
たとえば道端の葉っぱを並べられても同じ感想を言うだろう。
栄養?
そんなものよりカロリーだ。
それに牛乳なんて夏場には全然量が足りないし、なんならお茶でもコーラでもいいじゃないか。
また今日も一口も食べずすべて残飯となる。
ごめんなさい、農家のみなさま。給食センターのおばちゃん。
僕は・・・
僕は給食が嫌いだ。
ーーー
ーー
ー
『意識大1中学校』
中学2年生になった。
僕は給食が楽しみでしょうがない。
もちもちのパン、出汁のきいたスープ、箸休めの野菜・・・。
なんて素晴らしいのだろう。
なぜ僕は給食を嫌っていたのか。
いや、たしかに給食は嫌いだった。
でも今は違う。
給食に革命が起こったのだ。
新しい担任の名前は、森という。
おばさんと言うには申し訳ないのだが、小綺麗な身なりをした国語科の教師だ。
その教師が放った一言がこのクラス、いや、学校の給食を変えた。
「本日から、給食をバイキングにします。しかし、給食そのものに変わりはありません。食べるも食べないもあなたたち次第です。」
バイキング。
好きなものを好きにとって食べる。
またはビュッフェともいう。
はなから給食が嫌いだった僕には青天の霹靂だった。
食べたくないものは食べない。
食べたいものを食べる。
いいじゃないか。
残飯はなくなり、僕は給食という檻から解放される。
そもそも食べたいものなんてないんだ。受け取りに行く手間さえなくなる、なんとも画期的な仕組みだ。
その日の献立は、
コッペパン、野菜とリンゴのサラダ、ミネストローネ、牛乳。
バイキング導入初日はなんてことなく、ミネストローネと牛乳だけ完売し、あとはほとんど手を付けられずに返却となった。
やれやれ。
予想通り、みんな嫌いだったんだね、給食。
ちょっと濃い味で子供好みのミネストローネはさておき、他のものはほとんど手をつけられていない。
パンは半分ほどの生徒が食べていたが、半分にわって友達同士で食べるというバイキングならではの食べ方もあった。
僕は、ミネストローネと牛乳だけ食べ、残りは全く手をつけなかった。
こんなに気楽な食事なら毎日でもいい。
そう思っていた。
しかし僕は気付いていなかった。
このバイキングという形の給食の本性を。