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9/23

【9】

「いやいやそれはダメでしょう!」


 いきなり何を言うかと思ったら。美人と添い寝とか、普通ならご褒美だろうけど、僕はまだ高校生で、彼女もいたことないし。

 夏美さんと気軽に会話できるのはこの人がちょっとおかしいと思ってるから緊張しなくて済むんであって。


 どうして?

 なんて首を傾げて可愛さをアピールしてもダメです。


「だって、寝てる間に僕に何かするつもりでしょう?」


「……その手があったわね!」


「言わなきゃよかった!」


 天井を仰ぐ。あ、結構汚れてるな。天井までは掃除しなからなー。

 じゃない!

 寝てる間に怪しげな機械で僕から、その、精子を抜き取ろうとするに違いないんだ。

 どうやるかは、僕もわからないけど。


 あれ?

 僕の精子だけを持って帰るってことは、体外受精でもするのかな?

 未来だと技術も進んでて、培養液のカプセルの中で胎児が育っていくとかありそうだな。


 もしかしたら、夏美さんが明け透けに精子が欲しいとかいうのは、どうしたら子供がデキルとかわかってないからなのかな?

 なーんて考えても無駄だからこの辺で夏美さんには帰ってもらわないと。


「って、もう寝てるし!」


 夏美さんは僕のベッドで穏やかな寝息を立てている。しっかり毛布もかぶってむにゃむにゃ言ってる。


「なんだか、ホントに子供みたいな行動だなぁ」


「ソノ、トオリ」


 うぉ、源次郎がいた。

 すっかり存在を忘れてた。


「夏美さんをそっちの部屋に連れて返ってよ」


「オモクテ、デキ、ナイ」


「ロボットって力持ちじゃないの?」


「デラックス、AIは、ズノウ、ロウ、ドウ」


「役に立たないなぁ」


 まぁ、床を転がるボールじゃあ夏美さんは運べないか。

 かといってこのままベッドのど真ん中で寝てる夏美さんをどうにかしないと僕は寝られない。


「マスター、ガ、シナナイ、ヨウ、ニ、スルノ、ガ、ヤクメ。キョウイク、ハ、ハンチュウ、ガイ」


「んん? 教育してないの?」


「スデニ、オトナ、ガ、オラズ。オシエル、ニンゲン、ガ、イナ、カッタ」


 そういや最後の人類って設定だったっけ。

 教育って、過去のデータとかあるだろうに。


「ワレワレ、ガ、オヤ、ガワリ、ダッタ、ガ、シソン、ノ、ツクリ、カタ、ハ、オシエ、ラレ、ナイ」


「まー男がいなきゃ子供はできないし、その、やることやらないと、ね」


「コノ、ドウテイ、メ」


「余計な知識はあるじゃないか!」


 なんなんだよ、その知識の偏りは!

 教えるべきことを教えようよ!


「ユエニ、マスター、ガ、イッショニ、ネヨウ、ト、イッタ、ノハ、タンニ、サビシイ、カラ」


「他意はないってこと?」


「ダカラ、サキ、ニ、ネテ、シマッテ、イル」


「……逆に僕が襲うとか思わないの?」


「トウヤ、ハ、イクジ、ナシ、ダカラ、ダイ、ジョウブ」


「図星だけにむかつく!」


 そうさ、どうせ未経験な童貞男子さ!

 だからって、いくら美人だからって、無警戒で寝ちゃってる女性の寝こみを襲うなんて考えは毛頭ない。

 そこはわきまえてるつもり。


「ダカラ、アン、シン、シテ、イッショ、ニ、ネロ」


「言うだけ言ってそれかよ! ってか一緒には寝られないって!」


 まかり間違って胸を揉んじゃったらって、そっか、朝のごたごたでおっぱい揉んじゃたけど、夏美さんは怒らなかったのは、そんな感情がなかったからなのか?

 人間じゃなくってロボットに囲まれて生きてきたから、恥ずかしいって感情がないからなのか?

 だから臆面もなく腕にぎゅっとしがみついてきたりとか、恥ずかしがらないで精子欲しいとか、言えちゃうのか?


「……ねぇ源次郎。ひとつ聞いていい?」


「ナンダ、ドウテイ」


「ムカつくなぁ」


 口が悪いAIなんて最低だ!


「もし、僕の精子を持ち帰ったとして、どうやって子供をつくる気だったの?」


「ジンコウ、ジュセイ、デ、ジュセイラン、ヲ、タクサン、ツクル、ヨテイダ」


 まぁ、予想通りか。でもそれだと問題が起こるのが目に見えてるけど。


「その次の世代とか、考えてるの?」


「ソレガ、モンダイ、ダ」


「考えてないの?」


「モチロン、カンガ、エタ。フクスウ、ノ、イデンシガ、アレバ、イイガ、アイショウ、ト、イデンテキ、シッカン、ヲ、カンガ、エル、ト、タダ、フヤセバ、ヨイ、トハ、ナラナイ」


 遺伝的な病気か。

 でも遠い未来なんだから、病気を治す治療法だってあるだろうに。


「病気は治せるんだろ?」


「アマリ、ニモ、フルイ、ビョウキ、ハ、チリョウ、ホウ、ガ、ウシナワ、レテ、ヒサ、シイ」


「まさかのロストテクノロジー!?」


「ワクチン、ヲ、セイゾウ、スル、タメ、ノ、セイブツ、ガ、オラズ、ワクチン、ヲ、セイゾウ、デキ、ナイ」


 なんでも、ワクチンとか薬をつくるためには、他の生物の細胞株を用いて細胞培養が用いられていたとか。僕にはちんぷんかんぷんだ。 

 薬自体は元素変換で物質を創り出して対応してたらしいけど、有機的なワクチンとかは作れなかった、と源次郎が嘆いていた。

 AIなのに悔しそう呻く声を聴くと、実は人間じゃないのかと思っちゃうくらい、人間臭い。


「ヤセイ、ノ、ドウブツ、ガ、イナイ、ユエ、ビョウゲン、タイニ、カンセン、スル、オソレ、モ、ナカ、ッタ」


「へー。そうなんだ」


 もちろん僕はよくわかってない。世の中をうまく渡るための相槌という高等テクニックだ。


「コノ、ジダイ、ハ、ビョウゲン、キン、ガ、アフレテ、オリ、マスター、ニ、トッテ、ハ、キケン」


「……」


「タイコノ、ビョウキ、ノ、チリョウ、ホウ、ハ、ウシナ、ワレテ、イル」


「つまり、夏美さんは病気になりやすいってこと?」


 すーぴー寝ている夏目さんを見る。気持ちよさそうに寝る夏美さんには、そんな危機感は見られなかった。

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