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第136話「キノコ狩り」

「ポン吉のバカっ!」

「ポン姉、なに怒ってるんだよ!」

「なんで殺しちゃうんですか!」

「死なないよ、毒キノコじゃないもん」

「ポン太死んでますよ!」


 今日は……今日もお客さん、全然です。

 テレビの前のテーブルでコンちゃんがうつらうつら。

 わたしだって退屈してるの。

 トレイを拭いたりトングを拭いたりしていたら、窓の外にポン太とポン吉です。

 二人とも籠を持ってなにかな?

 カウベルがカラカラ鳴って二人が入って来ました。

「こんにちは~」

「来てやったぜ!」

 ポン太とポン吉がカウンターに来ます。

「どうしたんですか? お豆腐じゃなさそう」

 って、ポン太が籠を見せながら、

「花屋さんと待ち合わせです」

「花屋? 娘さん?」

 わたしが首を傾げると、今度はポン吉が、

「あの姉ちゃん、キノコ狩りに来いっていうんだ」

「キノコ狩り?」

 二人がコクコク頷きます。

 すぐに花屋の娘もやって来ましたよ。

「あ、二人とも来てたんだ」

「花屋さん、キノコ狩りってなんなんです?」

 わたしが聞くと、花屋の娘はニコニコ顔で、

「キノコ狩りはキノコ狩り……ポンちゃんは知らないの?」

「うーん……知らない」

 わたしが頭上に「?」マークを浮かべているとポン太が、

「ポン姉はキノコ食べますよね」

「キノコ……しいたけとか」

「あれを採りに行くんですよ」

「へぇ、キノコを採りに……しいたけを採りに行くんだ」

 わたしの頭の中ではしいたけ料理が浮かびます。

「しいたけ、おいしいですよね、えのきだけもいいですよね」

「ポン姉食いしんぼ」

「キノコ、おいしいよね~」

 わたし、ついつい笑みが浮かびます。

 って、食べる事ばっかりになってました。

 わたし、ポン太と花屋の娘を見て……結局花屋の娘に、

「キノコ狩りってなんなんです?」

「狩り」って言葉が気になるところです。

 むむ……コンちゃんとレッドが遊んでいるゲームに悪のキノコが現れます。

「も、もしかしてキノコって生き物なの! 狩るの!」

 わたしがマ●オのマネをすると花屋の娘は笑いを堪えながら、

「キノコは植物っぽいかな、菌だけど、ゲームみたいに襲って来ないよ」

「狩りって言うし」

 わたしが言うと、ポン吉が眉間にしわを作って、

「ポン姉、イチゴ狩りとか知らないのか?」

「ああ! なるほど!」

「バカだなぁ~」

 わたし、ポン吉のしっぽを捕まえると「しっぽブラーン」の刑です。

「今、バカって言ったな~」

「うわーん、ちぎれるー!」

「死ねーっ!」

「オニーっ!」

 さて、ポン吉をいたぶってスッキリしました。

 花屋の娘さんに再質問です。

「キノコ狩りってなんなんです?」

 って、花屋の娘はスマホを出して、

「こんな感じなの~」

 木がいっぱりあります……っても切っちゃってます。

 その木からたくさんのしいたけが生えているの。

「おお……しいたけはこうやって育てるんですね」

「そうなの、たくさん生えたから、ポン太くん達にね」

 スマホの写真、すごいしいたけですよ。

 今日はしいたけ祭りですね。

「わたしも行く!」

 どうせ退屈してたんです、今日は観光バスも来ないからいいでしょ。

 って、不満そうな顔をしているのはポン太。

 テーブルで寝ているコンちゃんを見て、

「ボクはコン姉の方が……」

 コンちゃんも連れて行く……ダメです。

 あんなの着いて来るだけで、きっとなにもしないんだから。

「ポン太ポン太」

「?」

「コンちゃんはこんなの好きじゃないよ」

「そうなんですか?」

「おしゃれさんですからね、キノコ狩りはちょっとは汚れそう」

「それはあるかも……」

「コンちゃん、しいたけ好きだから、それを持って来たほうがポイントになるよ」

「そうですね!」

 ポン太の顔がパッと明るくなりました。

 同時にポン吉の顔もパァ~ってなります。

「シロ姉もキノコ好きか?」

「シロちゃんも好きだよ、しいたけ」

「オレ、頑張るぜ!」

 むう、シロちゃんは働き者だから居た方がいいんだけどね。

 今、ここにいないからしょうがないか。

「じゃぁ、ポンちゃんも参加ね」

「ですです、いいですか?」

「まぁ、一人増えてもへっちゃらかな、たくさんあるし」

 花屋の娘、立ちあがると手をヒラヒラさせながら、

「じゃぁ、出発進行~」

 キノコ狩りに出発です!


 花屋さんに着いて行くわけなんですが……

 花屋さんの花畑に近付くにしたがって桃の香りがしてくるの。

「あの、花屋さん、ちょっといいですか?」

「うん? どうしたの? ポンちゃん?」

「さっきしいたけの写真を見せてもらったけど」

「うん? それが?」

「あの、ちょっといいですか?」

「しいたけって売れるんじゃないんです?」

「……」

 なんで花屋の娘さんは黙っちゃうんでしょ?

「ねぇねぇ、売れるんじゃないんです?」

「ポンちゃん!」

 花屋の娘さん、わたしを捕まえ……襟首捕まえてすごみます。

「何か文句あるの?」

「なんでかな~って」

 ふふ、わたしにすごんだってダメなんです。

 ダムを壊しちゃうコンちゃんと一緒なんですよ。

 こんな殺気だったオーラを背負ってる人は案外弱いんだから。

 花屋の娘さん、すごんでも無駄なのに気付いたみたいで、

「しいたけ作るのはよかったんだけど……」

「もしかして……さっきの写真はウソとか!」

「あれは本当よ、今から行けばわかるわ」

 で、問題のキノコの里に到着です。

 さっきの写真は本当みたいなんだけど……

 なんだか様子がちょっと微妙に変なんです。

 むむ、しっかり近付いて見てみますよ。

 普通に美味しそうなしいたけなんですが……

 なんだか違うキノコもありますね。

「ポンちゃん気付いた?」

「違うキノコがあるみたいですけど」

「そこなのよ~」

 花屋の娘さん、ポン太とポン吉を手招きするの。

「どうかしましたか?」

「なんだよー」

 二人が言いながらやって来るのに、花屋の娘さんはまずポン太に、

「ねぇねぇ、ポン太くんはニンジャ屋敷でニンジャやってるよね」

「はい」

「ニンジャ……本物なんだよね、長老さんに聞いたよ」

 そうです、ポン太とポン吉は人間を絶滅するために暗殺者・ニンジャとして育てられた……ついでに、平和な時はアトラクションとしてニンジャやってるんです。

「ニンジャはキノコの知識もあるよね」

「はい……それでボクを呼んだんです?」

「わかる?」

 ポン太、視線を泳がせてから、

「まぁ、しいたけ貰えるならいいですけど」

「見極められる?」

「しいたけと毒キノコを見分ければいいんですよね?」

「うん」

 ポン太、早速キノコを採り始めました。

 花屋の娘さん、ニコニコしながら小声で、

『最初は長老さんを呼べばいいかな~って思ってたの』

『ですね、長老が一番な気がしますよ』

『でも、長老さんは大人だから……』

『?』

『タダってわけにはいかないでしょ』

『ポン太とポン吉ならしいたけ渡して済ませるんですね』

『えへへ~』

『でも、ポン吉はいらないんじゃないです?』

『うーん、ポン吉は遊びの達人だから、余計に知識があるかも~って』

『なるほどー』

 見てるとポン太とポン吉、一緒になってキノコを、しいたけを見極めてます。

 ときどき二人して何か話してますよ。

 いろんなキノコがあるから、結構大変なのかもしれませんね。

 こうして見ているとポン太とポン吉、兄弟です。

 キノコを物色してるのはとても仲良さそう。

 あ、チラチラこっちを見てますよ。

 ポン吉がポン太の耳元でなにかささやいてます。

 一瞬ポン太は嫌そうな目をするけど……小さく頷いてこっちに来ました。

「花屋さん、こっちのキノコなんですけど……」

 言いながら籠のキノコを見せるの。

 なかなかいい「しいたけ」です。

 さすがポン太、見極めが……

「これは毒キノコです」

「「は?」」

 どう見ても立派なしいたけ。

 なのにポン太は「毒キノコ」って言います。

 ポン太、真面目な顔で、

「このキノコは『しいたけ』そっくりの毒キノコなんです」

 わたし、野良タヌキだったからその辺の知識はさっぱり。

 さすが、ポン太、よく知ってます。

「ニンジャの使う毒で、このキノコから作るのがあるんですよ」

 真剣な表情で説明するポン太。

 最後に、

「だからこのキノコはボクがニンジャ屋敷で使います」

「待たんか!」

 って、今までポン太ばっかり見てたから気付かなかったけど、花屋の娘さんムッとした顔でポン太の両肩を捕まえてるの。

「これ、絶対『しいたけ』だから、毒キノコなんかじゃないんだから!」

 花屋の娘さん、ポン太にキスしそうなところまで顔を近付けると、

「毒キノコって言って、ごっそり持って帰るつもりだったんでしょー!」

「!!」

 あ、ポン太、バツの悪そうな顔。

 花屋の娘がじっと見つめているのに、視線泳ぎまくりなの。

 ポン太もしたたかさんですね。

 でも……ポン太がそんな事考えるようには思えません。

 って、わたしと花屋の娘の頭上に「!」点灯。

 きっと考えている事は同じです。

 こーゆー余計な入れ知恵をする……悪い事を考えるのはポン吉しかいないんです。

『ねぇねぇポンちゃん!』

『おお、テレパシー、なんですか花屋さん!』

『これ、ポン吉のせいだよね』

『ええ、絶対です』

 花屋の娘さん、ポン太をギュっと抱きしめてポン吉の方を見ると、

「ポン吉ー、休憩にしようかー!」

「おお、もう休憩かー!」

 ああ、ポン吉、籠いっぱいのキノコを持ってこっちに来ます。

 花屋の娘さん、ポン太の口を塞ぐのを忘れていません。

 ポン太の耳元で、

『黙ってないと殺すよ』

 ふはは、『殺す』そーです、こわいですね。

『大体こんな悪い事に加担するポン太もどうかしてるっ!』

『むー!』

 わたしもそう思います。

 ポン太は真面目に生きていればいいんですよ、悪事は似合いません。

 で、悪童ポン吉が戻って来ました。

「休憩だぜー」

 ニコニコ顔です。

 花屋の娘さん、こめかみに「怒りマーク」を浮かべて、

「ポン吉、なにか言う事、ない?」

「毒キノコだらけだぜー、食えないから、もらってやるぜー」

 このウソつきが!

 まだ言ってます。

 って、ポン吉、ニヤリとするとキノコを一つ手にして、

「ほらほらー、ニュースで見たぜ、マジックマッシュルーム!」

「マジックマッシュルーム?」

 むむ、ポン吉が手にしているのはあからさまに毒々しいキノコ。

「アニキ、このキノコは毒キノコかな?」

「ポン吉、それは毒に決まって……」

「えいっ!」

 って、ポン吉、毒キノコをポン太の口に押し込んじゃいました。

 ポン太は思わず呑みこんじゃって真っ青。

 わたしも花屋の娘も呆然としちゃいます。

「ポン太、大丈夫!」

 わたしが声をかけた時には、ポン太はもう死んじゃいました。

「ちょ、ちょっとポン吉、なんて事をー!」

「ふふ、アニキが死ねばオレさまが一番」

 あ、それ、どっかで聞いた事がありますよ。

 そんな事はどーでもよくて、ポン太、ぐったりして花屋の娘さんの腕の中。

「ポン吉のバカっ!」

「ポン姉、なに怒ってるんだよ!」

「なんで殺しちゃうんですか!」

「死なないよ、毒キノコじゃないもん」

「ポン太死んでますよ!」

「気絶してるだけだって、これってマジックマッシュルームだし」

「そのマジックマッシュルームってなんなんですか?」

「うーん、『変身はっぱ』の親戚みたいなもの」

 わたしと花屋の娘さん、ポカンなの。

 って、ポン吉、さっきポン太の口に押し込んだのと同じキノコを手にして、

「このキノコは変身に使うんだぜ」

「変身に?」

「だぜ!」

 すると気絶しているポン太の体が「ドカン」と爆発!

 この爆発は「変身はっぱ」の時と同じです。

 爆発の煙が消えてしまうと……

 そこには「大きくなったポン太」が!

 むむむ、メガネでちょっとインテリ(?)っぽい青年ポン太ですよ。

「ポン太、大丈夫ですかっ!」

「う~ん、えっと、あれれ」

 ポン太、自分の体を確かめて……今、大きくなったのにようやく気付いたみたいです。

 自分の体を触って確認してるんですが、わたわたするばかりですね。

 うん? 花屋の娘さんになにかお願いしています。

 花屋の娘さん、スマホを出して写真を撮るとポン太に見せています。

「あわわ……大人になっちゃった!」

「ポン太、大人って程じゃないけど、わたしと同じくらいですよ」

「ポン姉の同じくらい……」

 ポン太、わたしをしげしげと見てから、またスマホの画面を見ています。

 そんなポン太の頭に裸電球が「ピカっ!」って光るの。

 急に駆け出すポン太。

「ちょ、ちょっとどこに行くんですかっ!」

「コン姉の所!」

「!!」

 なんだか嫌な予感がします。

 今のポン太とコンちゃんなら、いきなりアダルトモードもありえます。

 むー!

 なんだか阻止しないといけない気が。

「ポン太! コンちゃんの居場所わかるの?」

「ボクはタヌキなんですよ、ニオイでわかるんです」

「むー!」

 わたしも花屋の娘さんもポン吉も駆け出すの。

 ポン吉が、

「なんでポン姉追っかけるんだよ!」

「だって、ポン太とコンちゃんができちゃうかも!」

「できたらポン姉と店長に邪魔者いなくなるじゃねーか」

「でもでも! です!」

 って、わたし、花屋の娘さんを見て、

「なんで花屋さんも追っかけるんです?」

「面白そうだから!」

 ともかくポン太を追っかけて行くんです。

 むむ……どうやらポン太の向かう先はパン屋さんみたい。

 まぁ、ニオイどーこーじゃなくて、パン屋で待ち伏せすれば夕飯時にはコンちゃん帰って来るもんね。

 あ、またポン太の体が「ドカン」と爆発。

 今度はニンジャ姿に変身です。

 ニンジャになったポン太、加速しましたよ。

「は、速い~!」

 わたしもびっくりなスピードです。

 一緒に走ってるポン吉に、

「ねぇねぇ、ポン吉もよく着いていけるね」

「オレも修行してるから」

 むむ、そうですね、ぽんた王国のニンジャ屋敷のアトラクションでやってますもんね。

 びっくりなのは花屋の娘さんもちゃんと着いて来てます。

「ねぇねぇ、花屋さんもよく着いていけてますね」

「面白そうだから!」

 花屋の娘はコレばっかりです。

 でもでも、パン屋さんまではすぐ。

 わたし達もポン太にちょっと遅れて到着なの。

「待ってっ!」

 花屋の娘さんがわたしとポン吉を捕まえます。

 そしてお店に入らないで、窓から中を覗き込みますよ。

「ちょ、なんでお店に入ら……」

「しーっ!」

 花屋の娘さん、わたしのポン吉の口を押さえて、視線で合図をくれます。

 わたしとポン吉、合図のままに中を覗き込むの。

 中では……コンちゃんがぼんやりとテレビを見てますね。

 ポン太が印を結んで「ドカン」。

 コンちゃんそんなポン太に目をやりますよ。

「ドカン」と変身したポン太……おお、タキシード・ポン太になってます。

 手に持った花束をコンちゃんに差し出しながら、

「コン姉、結婚してくださいっ!」

 おお、いきなりなプロポーズ。

 でも、コンちゃんは表情ピクリともしないの。

 沈黙。

 ポン太と視線とコンちゃんの視線がぶつかってるのがわかるわかる。

 コンちゃんの顔は、ちょうどこっちを見てわかるの。

 いつもと一緒で「ぽやん」とした顔ですね。

 ポン太の顔は見えませんが、告白してから微かに肩が震えてますね。

 なんとなく、その気持ちはわかりますよ。

「ポン太よ……」

 おお、コンちゃんが言います。

「おぬしが大人になったら、考えてやらんでもないのう」

 って、途端にポン太の体が「ドカン」。

 大人の体から子供の体に戻りました。

「キノコの効果が切れたようじゃの」

 ああ、ポン太、がっくり肩を落としてます。


「コンコン」

 レッドの咳は収まりませんね。

 おでこを触ってみても……そんなに熱くはないんです。

 でもでも、これから熱が出るかもしれません。

 早く帰ってミコちゃんの術で治してもらいましょう。


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