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第140話「子供プール」

「先生ひどーい、確かめもしないで私のせい?」

「違うのか~」

「あ、アンタが寝てるから悪いんだからね!」

「ああん、なんだゴラっ!」

 今回は千代ちゃんみどりが吉田先生やっつけちゃうんですよ、ええ!


 青い空。

 ギラギラ太陽。

 蝉しぐれ。

 輝く水面。

 弾ける水しぶき。

 そう、今日はプールなんですよ。

 みんな思い思いに楽しんでいます。

 今は自由時間なんですね。

「でもでも、自由時間、いつまで続くんでしょう」

「ポン、何が言いたいのじゃ」

「今は一応、『水泳』の授業なんですよ」

「ふむ」

 そう、今は水泳の授業時間になってます。

 でも……髭教師・吉田先生は日陰で横になっているの。

 わたしとコンちゃん、プールサイドでチャプチャプしてるんですが、吉田先生の寝息が聞こえてきます。

「ね、コンちゃん、吉田先生寝てますよね」

「ふむ、たしかにイビキが聞こえるのう」

「授業やる気があるんでしょうか?」

「ポン、おぬし、バカかの」

「え? わたしがバカなの?」

「あの髭教師がやる気ある筈ないであろう」

「そ、そりゃ、そうなんですが」

「それにポン、何故わらわ達が呼ばれたか、わかっておるのかの」

「え? どうして?」

「髭教師が寝る、わらわ達が子供の面倒を見る」

「え……そうなの?」

「わらわ達はその為に呼ばれたのじゃ」

「そうなんだ……」

 わたし、レッドの面倒を見るくらいは覚悟してたけど……

 プールではしゃいでいる子供全部の面倒を見るのはちょっと不安~

 まぁ、子供達はほっといても勝手に遊んでいるからいいです。

「ねぇねぇ、コンちゃん、わたし達はなにをしたらいいんでしょ?」

「だから、子供らが余計な事をせぬように見張るのが仕事なのじゃ」

「たとえば?」

「プールサイドを走ったりせぬように……じゃ」

 って、コンちゃんが言ってるそばから走り抜けるのがいます。

 コンちゃんため息一つ、ついてから、

「子供の面倒を見るなぞ……面倒なのじゃ」

「ですよね」

「大体子供の面倒をみるのは教師の仕事なのじゃ」

「吉田先生を起こしちゃいましょうか」

「ふふ、それはいいのう~」

 わたしとコンちゃん、ニヤニヤが止まりません。

「起したら、怒りますよね」

「怒るよのう」

「でも、人の嫌がる事ってワクワクしませんか?」

「これ、ポン、人の嫌がる事をしてはいかんのではないかの?」

「いいんです、吉田先生、教師の仕事を放棄してるから天誅です」

「おお、天誅、いい言葉じゃの」

 わたしとコンちゃん、そろって髭教師・吉田先生のもとへ。

 ふふ、スヤスヤ寝てますよ。

 正直、ムカつきますが……

 今から叩き起すと思えばワクワクです!

『コンちゃん、どうしますか?』

『ふふ、どうしたものよのう~』

『水をかけるとか、どうでしょう』

『バケツでかの?』

『ホースがよくないですか、ホース』

『おお、ホースで! 連射ではないか!』

『バケツだと、怒って追いかけてくるでしょ』

『それも鬼ごっこみたいで面白そうなのじゃが』

『捕まったら「髭ジョリ」されますよ』(115話)

『髭ジョリ?』

『吉田先生の必殺技です、捕まえて、あの髭で頬ずりするんですよ』

『こ、こわっ!』

『でしょ』

『しかし、どうしたものよのう』

『ともかくホースを持って来るね』

 わたしが行こうとしたら……

 みどりと千代ちゃんがバケツ水を持ってきました。

「?」

 みどりと千代ちゃん、躊躇なく吉田先生にぶちまけるんです。

 わたしもコンちゃんもびっくり。

「ぶわっ! 何しやがるっ!」

 吉田先生、もう頭から湯気たててます。

 真っ赤になって怒った顔。

「誰だゴラ、ブッ殺すっ!」

 教師なのに「ブッ殺す」ときた、田舎だからいいんでしょうか?

 って、吉田先生はすぐにみどりと千代ちゃんをにらみます。

 二人はニコニコ顔&後ろ手で立ってるんですが……

 吉田先生も殺意ある笑顔で……

「おう、千代、お前の差し金だな、みどりは率先してやらねーよな」

 そんな吉田先生の言葉に千代ちゃんが、

「先生ひどーい、確かめもしないで私のせい?」

「違うのか~」

 吉田先生の味方をするわけじゃないけど、みどりが率先するようには思えませんね。

 って、みどりはちょっと頬を赤くして、

「あ、アンタが寝てるから悪いんだからね!」

「ああん、なんだゴラっ!」

 おお、みどりも言いますね。

 でもでも、きっと千代ちゃんが台詞を考えてくれたんです。

 千代ちゃんは吉田先生をからかって平気みたいですが……

 みどりはちょっと腰が引けてますね、ええ。

 あ、吉田先生、グーを作って二人の方へ。

 ニコニコの千代ちゃん。

 ドキドキのみどり。

 でも、千代ちゃんがみどりを、みどりが千代ちゃんを見ます。

 そんな二人が吉田先生に向き直って……

 後ろ手に隠していた水鉄砲をかまえます。

 水鉄砲って両手で持つサイズの、タンク付き。

 水風船の回(122話)で登場した強力なヤツですよ。

 千代ちゃん喜々として、

「死ねーっ!」 

 みどりは慌てながら、

「きゃー!」

 二人の放った水、吉田先生に見事命中。

 あのタンク付き、結構痛いんですよ。

「ちょ、プールに何持ちこんでやがる」

「寝てる先生が悪いー!」

「お仕置きなんだからね!」

 二人、吉田先生を追いかける始末。

 って、そんな逃げる先に笑ってホースを構えているポン吉。

「来たなボンクラ教師、死ねーっ!」

 放水開始です。

 もう吉田先生ずぶ濡れなの。

 水、あびせられても濡れるだけなんですが……

 やっぱり逃げちゃいますよね、ね。

 でも、逃げ場、無くなっちゃいました。

「い、痛てぇ、やめねーかっ!」

 吉田先生、踊ってます。

「死ね死ねー!」

 千代ちゃん、ちょっとコワイ目になってます。

「アンタが悪いんだからね!」

 みどり、おどおどしながら、狙い外しません。

「ケケ、仕返しだー!」

 ポン吉、日頃の恨みをここぞとばかり。

 でもでも、千代ちゃんとみどりの水鉄砲、弾切れです。

 撤収する二人。

 ポン吉はまだ続けてますよ。

 あ、吉田先生とポン吉、目が合いました。

「てめ、いつまで続ける気だゴラっ!」

「うわ、何でオレだけ!」

 さっさと逃げないのがいけないんですよ。

 つかみかかる吉田先生。

 引きつるポン吉。

 でも、今日のポン吉、なんだかいつもと違います。

 手にしているホースを「グイッ」と引っ張りました。

 蛇口から外れたホースが鞭みたいに吉田先生の足に!

「どわっ!」

 転んじゃう吉田先生。

「やーい、バーカ、バーカ!」

「痛てぇ、この、ポン吉、後でコロスっ!」

 吉田先生、ホースが足に絡まってもがくばかり。

「クソー、ガキ共め、覚えてろーっ!」

 わたし、とりあえず救助に向かいます。

「吉田先生やられましたね」

「まさかポンちゃんの差し金か?」

「だったら絡んだホースほどきに来ませんよ」

「むむ……」

「寝てるから、カモられるんですよ」

「むむ……」

 吉田先生、ホースがほどけると自分のシャツをしぼりながら、

「大体なんでポンちゃんとコンちゃん呼んだと思ってるんだよっ!」

「え、そっち!」

「ポンちゃん達がしっかりしねーから、悪いんだろーっ!」

「ね、寝てる先生が悪いんじゃないんですか?」

「ポンちゃんコンちゃんが悪いに決まってる……」

 言いながら吉田先生、ポツンと残ってる水鉄砲を拾います。

 みどりが落としたみたいですよ。

 タンク付きの水鉄砲を見てから、厳しい視線をわたしに向けて来ます。

「こんな得物、田舎で手に入る筈がない……ポンちゃんか?」

「わたしだって知りませんよ……ってか」

 コンちゃんが吉田先生の手から水鉄砲を奪うと、

「わらわは一度これを使った事があるのじゃ」

「ふーん、じゃ、コンちゃんの仕業かよ」

 吉田先生は怒りをどこかにぶつけないと気が済まないんでしょうね。

「せんせー!」

 あ、レッドの声です。

 走って来ますよ、プールサイドで走ると危ないんですけどね。

「えいっ!」

 レッド、何か投げます。

 吉田先生の足元で弾ける水風船。

「えいっ! えいっ!」

 レッド、手にいっぱい水風船持ってますね。

 左手で抱えて、右手で投げて。

 でも、左手に抱えているからバランス悪いみたい。

 なかなか吉田先生に当たりません。

 あ、ようやくヒット、吉田先生のお腹のところで弾けました。

 全部水風船がなくなったところで、レッド逃げるどころか吉田先生に抱きつきます。

「かまってー!」

「……」

 吉田先生、そんなレッドをとりあえず抱っこしてますが……

 わたしとコンちゃんを見る目が冷たいです。

「本当にポンちゃん達の仕業じゃねーんだな?」

 わたしとコンちゃん、目を合わせて頷きます。

 吉田先生に詰め寄って、

『死の商人がいるんです!』

『はぁ?』

『そうなのじゃ』

『なんだそれ?』

『水鉄砲に水風船、犯人はあいつなんです』

『そうじゃそうじゃ!』

『コンちゃん、ゴット・サーチーです!』

 って、コンちゃんが術……って思ったけど、吉田先生の視線が動いています。

 ポン吉・みどり・千代ちゃんを目で追ってるみたい。

 そして3人が行き着く先には~

「いたーっ!」

 ポンプ室の陰に配達人発見。

「ゴット・アローッ」

 コンちゃん即発射、サクッと配達人に刺さって爆発。

 わたし達早速向かいます。

 千代ちゃん達はダッシュで逃げちゃいます。

 吉田先生舌打ちしながら、

「あいつらは後でお仕置きだ……で、配達人よう、なんて事しやがる」

 配達人、ゴット・アロー受けてススまみれなの。

 でもニコニコ顔で、

「いや、吉田先生寝てるから、ちょっと営業を」

「てめ、ガキになんて危険なモノ売るかな」

「水鉄砲だし」

「せんせー、かまってー!」

 吉田先生はカンカンなんですが、レッドを抱っこしていて本気が出せないみたい。

 レッドはしゃべってる先生の髭に自らスリスリしてる始末。

 そんな吉田先生、考える顔になりました。

 で、レッドをわたしに押しやってから、

「おい、配達人」

「?」

「子供プールとかないか? 子供プール」

「ありますけど?」


「いやー、吉田先生怒ってたねー」

 配達人、ヘラヘラ笑いながら足踏みポンプを踏んでます。

 今はお店のウッドデッキ。

 テーブルを片付けて、子供プールを広げているんです。

「子供プールってこれだったんですね」

「ポンちゃん知ってるの?」

「うーん、わたしがタヌキだった頃……」

「?」

「千代ちゃんの家にコレがあったんです」

「へぇ、千代ちゃんの家にね、ありそう」

「わたし、千代ちゃんに捕まって叩きこまれました」

「?」

「わたしは仔タヌキだったから死ぬかと思いました」

 そうです、わたしがまだタヌキだった頃、千代ちゃんにやられたんです。

 ってか、千代ちゃんはきっと遊び感覚だったとは思うの。

 でも、仔タヌキのわたしにとってはこのプールは深かったんですよ、ええ。

 って、プールに空気入りました。

 ホースで水を入れて完成です。

「プール! プール!」

 レッドはさっきからしっぽを振りまくり。

 もう獣耳だって出ちゃってるんです。

「ほら、入っていいですよー」

「わーい!」

 レッド、子供プールに満足みたい。

 奥から店長さんとミコちゃんも出てきます。

「店長さん!」

「ポンちゃん、学校でプールの監視って思ってたけど?」

「レッドを押しつけられました」

「そうなんだ」

 って、ミコちゃんしゃがんで、レッドとなにか話しています。

 そんな二人を見ながら店長さん考える顔。

「店長さん、どうしたんですか?」

「うん、レッドが店にいるって事は……」

 店長さん携帯を出してパシャ。

 ボタンを操作してメールを送信してるみたい。

「どこにメールを?」

「そりゃ、常連さん、すぐに来ると思う」

「レッドはサクラってヤツでしょうか?」

「客引きパンダともいうかな? キツネだけど」

 って、今度は水着コンちゃん登場です。

「わらわも子供プール……小さいのう」

「コンちゃん、どんなのを想像してたんですか?」

「もうちょっと大きいかと……」

「バカですか、モウ」

 でも、コンちゃん、水遊びしているレッドを見ているうちに、しっぽブンブン、獣耳発現なの。

 それを見てた配達人。

「もう一つ出そうか?」

 コンちゃん何度もうなずきまくり。

 すぐさま店長さん、携帯を出してパシャ。

 即メールを送信してるの。

「また常連さんですか?」

「うん、っても、デザイン学校の生徒さんね」

「男のお客さんには送信しなくていいんですか?」

「変な盛り上がりになりそうだから、それはまた今度」

「そうなんですか」

 って、1時間もしないうちにレッドスキーとデザイン学校の生徒さんが押し掛けてきました。

 パンも大売れですが、急遽配達人が準備したバーベキューセットでお食事会開催なの。

 配達人、ニコニコ顔で、

「いやー、最初レッドを押し付けられた時はどーなるかと思ったけど」

「ですよね、吉田先生絶対わたし達に押し付けてますよね」

「本当、でも、ここに来てレッド効果で嬉しい悲鳴」

 ですね、レッドと一緒に遊んでいるレッドスキーさん。

 そして、コンちゃんに水着を持って来たデザイン学校の生徒さん。

 なんていうか、水着ファッションショーやって、見てたレッドスキーさんが買っちゃってるみたい。

 一緒について来たお父さん達もファッションショーにちょっと赤くなって喜んでいます。

 バーベキューも盛況盛況。

「わたしもなにか出来ないでしょうか?」

「は?」

 配達人、キョトンとするの。

「コンちゃんもレッドも頑張ってます、ミコちゃんや店長さんも忙しいです」

「まぁ、お客さんたくさんだし」

「わたしも一肌脱ぐってどうでしょ、水着」

「えー!」

「なに? 配達人さん露骨に嫌な顔してませんか?」

「だってポンちゃんが脱いでもなぁ~」

「コロス!」

「こ・わーい」

 この男は、いつも一言多いですね。

 ポカポカ叩いちゃうんだからモウっ!


「ねぇねぇレッド、どうしたの」

「おお、ポン姉、あれあれ!」

「あれって?」

 コンちゃんもわたしに倣ってしゃがみます。

 二人してレッドの指さす方を見てみると……


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