表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

それは幸せなのか

作者: 楓

ざっぱとかいたなにか

ふうっと息を吐く。白い息。

世間はもうすぐクリスマスだ。陽気なBGMが流れ、街は明るくなっている。

そんな雰囲気なんて関係ない。と言うような感じの僕。

まあそれは当たり前。クリスマスって言うと、なんだかんだあってだいたい僕の周りで誰かが人が死ぬ。付いたあだ名がブラックサンタ。

サンタは何処から来たのか、まあそれは僕の名前を別の読み方にすればそうなるってやつ。

そんなくだらない事を考える、と言うか、それを説明した人物は、路地歌の怪しげなサンタ。

「そうか、つまりはそう言う事だからクリスマス楽しくねえ的な感じなのか」

街、サンタ、そこから連想されるものは、バイトでプラカードとチラシ持って、付け髭にサンタ帽にサンタ服を着た人物。

だけど目の前の人は、普通の服にサンタの着ぐるみの頭を付けただけの不審者。

「まあでもよ、お前さん、確か元刑事つったろ?刑事への恨みとかじゃねえの?」

「それもあるでしょうけどね。そうだとしても、偶然が重なると必然になるのですよ」

「うーん、よくわからねえや」

そもそも僕はなんでこの不審者と、街の路地裏で話しているのだろうか、そんな気分になってきた。

ちょっとタバコでも吸いに行こうかと思ったら、なんか変なのがいたから話しかけてみたらこれである。

クリスマスの不幸、今年はこれなのだろうか。

「まあでもきっといいことあるって。な!」、背中をバンと押されてもその頭はある種怖い。

「てか俺捕まるのか?ちょっと泥棒しに行くだけなんだけど」

ああ、これ本当に犯罪者だったのか。ただの不審者かと。

「なあ、ちょっとだけ!ちょっとそこのショッピングモールに爆弾置くだけだから!」と、指を指したのは、僕が今から夜ご飯を買いに行こうとした場所。

なるほど、クリスマスの死はこっちか。ならば今年はたくさん人が死ぬな。

27歳の時は、同僚と祝うはずで居酒屋に。そこが運悪く強盗団に入られて、まあなんやかんやあって同僚含めて大勢死んだ。

最初は4歳か5歳くらいだったかな。病気で祖母が死んだ。病気だから、僕は関係ないだろうって?でも今の僕は自分のせいだと思っている。

「それともあれか?!その前にお前さん元刑事つったから俺の事捕まえるか?」

「まあ捕まえるというか、現刑事さんに差し出すというか」

「じゃあなんで俺なんかと話してんだよ!」

もっともである。

「うーん、とりあえず話したかったんでしょうね。なんだか話し相手欲しい的な」

「俺みたいな不審者でいいのかよ!」

自覚はあるんだ、その姿が不審だと。

「どうせ捕まるならまあいいかなーって」

「捕まる事前提!ひでえ!」

「ひどいのはあなたのその恰好ですけど、何とかなりません?頭の巨大さに対して体が貧弱なんですけど」

「あー。これな。着ぐるみ使えるかなーと思ったらよ、1回着たはいいけどよ、頭のこれだけ抜けなくなったんだわ」

「……なるほど」と、大爆笑の男に冷静に返した。で、抜けなくなったからもうこれでいいや、と言う感じなんだ。きっと。

「お前のマフラーくらい貸してくれよ。な、いいだろ?」

「不審度が上がりますよ」

「じゃあコートも!」

「下は?」

「あー、さすがに下を貸してくれって言うのはあれだし…そこにあるゴミ袋着ればいいんじゃね!」

そのままゴミ捨て場に捨てて行きたくなる格好ですね。なんてツッコミを飲み込んだ。

トータルで考えると、頭にサンタの着ぐるみ(でかい)、首に青と白の縞々マフラー(僕の)、上半身に白のもふもふコート(僕の)、下半身にゴミ袋(道端の)。

……うん、更なる不審者だ。

「靴はこの着ぐるみのがあるけどでかくてよ…。今は俺自身の靴だわ」

「へー」

この不審者と仲良くなった?のは、きっと、『クリスマスには死が訪れる』と言う必然のためのフラグだろう。

爆弾を使えば僕自身も死ねるだろうけど、なぜかいつも死ねないんだよな。首を吊ろうとしても、手首を切るんじゃなく切り落とそうとしても、屋上から飛び降りても、なんやかんや生き残ってしまう。

ならば、この爆弾デパートの人たちが死ぬか、この不審者自体が死ぬか、それとも別の人なのか…。

「まあとりあえず行ってくるぜ!」

「いや、駄目ですよ」

「……やっぱり?」

「はい」と、僕は笑顔で防犯ブザーを作動させた。

「あっはは!!やっべえ!!」

大爆笑しながらも、彼は爆弾を大通りに向かって投げた。

もう、死には無関心なはずだったけど、刑事時代の名残なんだろうか、僕はそれを体で受け止めいた。

大丈夫。爆発しないさ。だって僕は…。

「……まじかよ」

僕は何をやっても死ねないのだから。

「何で爆発しねえんだ!」

「うーん、防犯ブザーは聞こえなかったみたいですね。偶然にも町内放送が…」

「俺は、俺は何をやっても幸運な男なのによ!!」

「……ん?」

…もしかして、この人。

「宝くじとかは当たらねえけどよ!こういう事なら少々の不幸はあるがいつだって成功したんだ!それなのになんで…!」

「……ふふっ」

「笑うなよ!」

「いや、その頭じゃ説得力ないなと思いまして」

「うるせえよ!」

「まあ、こんなとこで話もなんですから、僕の家来ませんか?」

「……飯食えるなら行く」

「じゃあどうぞ」

「おう」

とは言いつつ、上は着ぐるみは僕のコートで隠しつつ、裏路地から僕の家へ移動した。

……あ、ショッピングモール行き忘れた。




冷蔵庫にあるものでシチューを作った。あの着ぐるみは食事用にハサミでくりぬいてみた。

男はシチューをガツガツと食べている。お腹がすいていたのかな、

「食べながらでいいから、話聞かせてくれませんか?暇なんですよね」と、少しきつめの酒を飲む。

「……話したら、逮捕しねえ?」

「うーん、まあしないでおきましょうか」

「よし!つっても話す事か…」

「簡単でいいですよ」

「じゃあ簡単に」

「はい」

「俺は昔っからいろんな犯罪に巻き込まれるのと、何やっても死なねえ体質でよ」

…この人の場合は、周りが殺そうとしてもと言う意味だろうな。きっと、

「あと犯罪に関しては幸運体質ってのに17歳の時気付いてよ、親は俺の事殴るし無視するしだから犯罪で食っていけるんじゃね?つって」

すっと重い事言ったなこの人。

「そこからはずっと犯罪で生きてきた。つっても、俺の幸運体質は周りを巻き込むみたいでよ、やってきたのはほとんど盗み。殺人系とかさっきの爆弾とか、なーんかうまい事人が死なねえんだよな」

「でも犯罪は成立すると」

「そそ。例えば人質とっても、人質も俺も無傷で、俺は楽に金を奪って楽に逃げ出せるんだぜ」

「なるほど…」

「てかよ、お前の話も聞いてたけどよ、俺がいればお前さんの周りで誰もしなねえんじゃね?もちろん俺は死なねえよ」

「……たしかに、そうですね」

先ほどから考えていた。この人がいれば、諦めていたクリスマスパーティーが出来るのではないかと。もちろんこいつと恋愛するつもりではないけど。

「俺はさ、犯罪ってのは生きるためにやってんだよ。お前さんが俺を養ってくれるなら俺はきっぱり犯罪やめるぜ」

「……あなたは、やってみたいですか?」

「ん?」

「クリスマスパーティー」

「もちろんだとも!」

先ほどよりも少々大声を出し、ガッツポーズの男。

「うまい肉食って、シュワシュワの酒飲んで、でっかい木飾って、んでその上に星つけたりして、あとは綺麗な電球付けて。あとなんだ、ケーキ食ってクリスマスソング歌ってプレゼント交換か!」

「ですね」

「やりてえよ!俺は毎年クリスマスは犯罪パーティーだよ!」

「男2人だとなんかこう変な感じですけど、やりません?」

「やろうぜ!」

うんうん、と頷いて男と握手をする。

変な友情が生まれてしまった。

でも、悪くない。

「まあでも今年は今更無理ですし、来年ですね」

「じゃ、それまで俺はおとなしく反省してるぜ」

「なら犯罪をした分、内職をすればどうですか?」

「なるほど!」

「で、それを貯金して来年のクリスマスパーティー費用にすればいいんですよ」

「おお…頭いいなお前!」

何か犯罪を犯したら即警察へ突き出す。なんて考えは黙って笑顔を見せた。

そう、まるであれだ、ペットだ。中型犬のような。

「今日は普通のお酒ですが、乾杯しましょうか」

「え、俺酒飲めねえよ。そういう年だけど飲めねんだわ」

「……じゃ、今年は麦茶で、来年はシャンメリーにしましょうか」

「なんだそれ!船みたいでおしゃれでいいな!」

「ふふ。……メリークリスマス」

『人が死んでいるのに祝うなんて何事だ』。昔の言葉を思い出す。

もう僕にとって、クリスマスとは葬式。だけど僕は葬式でもはしゃげる人間だ。

クリスマスを楽しまないのは葬式だからじゃない。ただ、誰も死んでほしくないから。これ以上、誰も死んでほしくないからだ、

だけど、この人ならきっと…何も気にせずクリスマスパーティーが出来るだろう。

「おう、メリクリ」

こうして僕は、初めて誰も死なないクリスマスを過ごし、変な奴と友達になったんだ。

ただ1つ、この人の頭はいつまで抜けないままなんだろうか、と思った…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと 複雑な 感情に ・・・浸りまし た なんらかの悪い ハプニングに 巻き込まれる 人 絶対に 死なない人 が 出遇った事で 本来は 誰かのお葬式となる クリスマスが 初めて …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ