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彼女と別れて半年が経ちました。

作者: 御宮ゆう
掲載日:2017/10/08

 三年間付き合った彼女と別れて半年が経った。


 あれから調子はどうですか。元気にしてますか。

 そんな言葉さえ、もう僕はかけることができない。


「あなたといるのが一番落ち着くわ」と彼女は言った。


「私のことを分かってくれる人なんてあなただけよ」と彼女は言った。


 半年が経った今、僕の隣には誰もいない。

 畳の部屋で、一人で座る。

 朝起きて仕事に行き、八時間ほど働き、寝る。


 君と別れてから、僕の生活は驚くほど単調なものとなってしまった。


 君がいない生活が、こんなにも色の無い世界になるなんて。


 付き合っている時によく行った、あんなにキラキラと輝いてた海も、もう僕には見ることができない。


 世界は信じられないくらいモノクロで、まるで埃っぽい密室に閉じ込められたかのように。

 まるで狭苦しい密室に閉じ込められたかのように。


 僕の世界はストンと小さくなってしまった。



「好きよ」


 そんな言葉が脳裏をよぎる。


「私にはあなたしかいないわ」


 そんな言葉が脳裏をよぎる。


「愛してる」


 そんな言葉が脳裏をよぎる。


 付き合っていた頃の幸せな言葉。

 彼女の柔らかい声、表情、手触り、何もかも。

 もう全て、過去の話。


 ああ、もっと大事にしたら良かった。

 失って気付くことがある、なんて有り触れた言葉。

でも心にこんな穴が空くなんて、誰も教えてくれなかった。



 僕の何がいけなかったんだろう。簡単な仕事をこなしながら、いつも頭の中はそのことで一杯だ。


 顔か、性格か、それとも金か。


 彼女は僕の何が嫌いになったんだろう。


「別にあなたのことが嫌いになったわけではないの」と彼女は言った。


「ただ、もうこの関係を終わりにしたいだけなの」と彼女は言った。


 僕は言われた時、頭が真っ白になった。

 大事な話って、そんなことなの。

 僕と別れたいって、そんなことを言うために家へ呼んだの。


「ちゃんと直接、言いたかったから」


 そんなの、余計辛かった。

 いつも僕に優しい微笑みを見せていたその顔が、いつもとは違う表情で。

 喉まで出かかっている言葉を、なんとか絞り出そうとしている、そんな表情で。


「私、仕事で遠くに行かなきゃならなくなったの」


 何も、聞こえなかった。


「あなたと別れるのは寂しいわ。でもね」


 聞きたくなかった。


 彼女が僕から離れていってしまう。重要なことはそれだけで。


「この仕事が終わったら、私ねーー」


 釈明弁明、聞きたくなかった。




 彼女が僕の元から離れていって、半年経った今でも。


 あの時の言葉が僕の頭を支配する。


 半年経ったのにこんなことをずっと考えてるなんて、どうかしているだろうか。


 僕はもう、彼女と手を繋ぐことはできないのだろう。

 僕はもう、彼女に笑いかけてもらうことはできないのだろう。

 僕はもう、彼女に会うことすらできないのだろう。


 ううん、最後は違うかもしれない。

 僕はそろそろ、多分彼女に会いに行ける。


 あの分厚い扉が、そろそろ開く頃だ。


 カツン、カツン、と足音が聞こえる。


「十八番、時間だ」


 僕の名前が呼ばれる。


「被害者に、何か想うことはないか」


 これが最後になるであろう質問に、僕はいつものように答えた。




「僕は彼女を、愛しています」






 



 さあ、今から逢いに逝くよ。















「私、この仕事が終わったらねーー」










 あなたとずっと、一緒にいたいわ。

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― 新着の感想 ―
それは誤解を招く発言をした彼女が悪いわ。
[一言] 事件から逮捕、裁判、執行までが半年か〜早いねぇ 日本も事故以外の殺人はこれくらい早く殺処分しても良いのにw
[一言] ハッピーエンドの場合も書いて欲しい
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