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【超短編シリーズ】 男と女の関係

【超短編】今日の僕は明日の彼女

作者: 天音光人
掲載日:2017/05/20

 電車を降りると、僕は駅から自宅までの道を全力で走った。なんとしても十二時までには帰り着かなければならない。ぜいぜい息が切れる。しかし遅れるわけにはいかないのだ。

 やっとのことで自分の部屋までたどり着いた。十一時五十九分。ぎりぎり間に合った。ああ、よかった。僕はそのままベッドの上に転がった……


☆★☆


 朝目が覚めると、あたしは男物の服を着たままベッドに寝ていた。飲み過ぎたようで、ちょっと頭が痛い。そういえば、どうしても断れない飲み会があると言ってたわ。よほど急いで帰ってきたのね。ごめんなさい、あたしのために……


 一ヶ月前、あたしが交通事故に遭って臨死状態になっていたとき、あの人の声が聞こえてきた。

―― 神様、お願いします。僕の命を差し上げますから、彼女を助けてあげてください。

あたしは驚いて、必死で叫んだ。

「だめよ。あなたの命と引き替えにあたしが生きるなんてできないわ。あたしが死んでも、あなたは幸せになってね。お願いだから」

それでもあの人は、神様に向かって同じ願いを繰り返していた。何度も何度も……

 しばらくすると、どこからか不思議な声が聞こえてきた。

―― おまえたちの願いを半分ずつ叶えてやろう。おまえたちは一日交替でこの世に生きるのだ。夜中の十二時に入れ替わってもらうことにする。


 あたしの身体は火葬された。ところがその翌日の朝、あたしは同棲していた彼のマンションの部屋で目を覚ました。男物のパジャマを着ていた。それでようやく、臨死状態の中で聞いた声を思い出した。

 その日から、あたしとあの人は一日ずつ入れ替わって生きている。夜の間に身体もあの人からあたしへ、あたしからあの人へと変化する。


☆★☆


 朝目が覚めると、昨日の彼女のメッセージを録音したボイスレコーダーを再生した。昨日の彼女は今日の僕になり、今日の僕は明日の彼女になる。直接会えないのは寂しいし、生活も不便だが、それでも僕は満足している。

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― 新着の感想 ―
[一言]  短い小説ながら、彼氏と彼女の心境がよく現れた良作ですね。  2人の恋愛がどういう道筋を辿るのか、長編作品として読みたいと思いました。ただ、この展開を見る限り「2人」として結ばれることは無さ…
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