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 そして繋がる物語(2)


 雪と見間違えるくらいに真っ白な砂漠。

 絵の具を流し込んだみたいに、笑っちゃうくらいピンク色の湖。

 真っ赤に色づいた森。空との境目がわからなくなるくらい真っ青な海。わーってさけんで走りたくなる気持ちのいい草原。満開の黄色い花畑。透き通った泉や小川。


 思い出して、また同じ景色を見たくなることもあった。そんな時は、おんなじところに何回も行ったりした。


 アテル王国はどこもきれいな国だ。

 何年も時間をかけてあちこちを見て、この湖のあるお屋敷帰ってくるたびに、そして旅に出るのを繰り返す度にだんだんと強く思うようになった。


 アタシはこのお屋敷の庭にある、この湖が一番好きだ。


 芝桜が一年中咲いてて、むこうの木陰にはスミレ、あっちの茂みの向こうにはひまわり。

 季節感なんて無視した花畑。

 そして、ふと思う。


 ……アタシは、一回向こうの世界で思う存分生きて、それからこっちに居つくことを決めた。

 向こうから、明らかに異世界!!て感じの変わった世界に落っこちたから、スパッと気持ちの切り替えができた。けど……たぶん、テオはそうじゃないんだよねぇ。


 カモミールのお茶を飲みながら、月を映した湖面をアタシは眺めてる。

 アタシにとって、家のいろいろなことや、庭いじりみたいなことをするのはけっこ楽しい。ついでにテオが当たり前のように一緒にいろいろやってくれるから、早く家事が終わる。

 そうしてたっぷり空いた時間はひなたぼっこしたり、水浴びしたりできる。今のアタシにとって、ここは天国だ。


 だから、気になっちゃう。

 ……この世界に知り合いがもともと少ないアタシと、テオは違う。

 これだけアタシが自由を満喫しきってるとさ、気づかないうちに、テオになにか、ツラい思いさせちゃってないかな?……って。そんな時はカモミールとか、ラベンダーとかのお茶でほっこりしたくなる。現実逃避ってやつかもしれない。

 ほっこりしてから、テオにアタシは酷いことしちゃってないか、ゆっくり考えるの。


「だから、旅に出たいだなんて言い出したのかな」


 テオがそれで心の整理をつけてるなら、こうやってあちこち行けたし、テオにとっては良かったことなのかも。


 そこまで考えて、アタシは息を吐いた。


 実は、気になってることはそれだけじゃない。けっこう深刻なのをあと、もう一個考えないと。


「そろそろ寝ようか」


 テオに声をかけられて、考えるのをサボってぼーっと湖を見ちゃってたんだってハッとする。……そうだ、考え事、するはずだったんだった。


 だってさぁ……テオの魔力があふれた湖は、キレイで、魅力的すぎて、見慣れたハズの景色なのにぜんぜん飽きないんだもん。

 優しい手が椅子に座ってたアタシの肩に触れたから、アタシはその先の腕に頬ずりをした。


 もう、ずっと前からアタシは睡眠なんてほとんど必要なくなってる。でもテオにはまだ睡眠が必要みたい。だから、一緒に寝室に向かうことにしてるんだ。一晩中、アタシはテオのそばでごろごろしてたり、窓から湖を眺めて時間を過ごす。

 そして朝はおはようのキスをする。


「何か、心配なことでもあるのかな?」


 寝る支度を済ませて、おやすみ前のキスをした。テオの腕に包まれると胸があったかくなる。

 誰よりもキレイな顔をアタシは見上げた。この距離を平気で耐えられるようになるまで、すっごい時間がかかった。けど、今はあたりまえのようにできるのがうれしい。


「アタシ、未来の自分に助けてもらったことがあるんだよね」


 優しく髪を撫でてくれる手が、アタシを離すつもりのないこの人が大好きだと、今なら素直に言える。いつまでも、こうしていられたらいいなって思う。


 なのに、こうして幸せを満喫してここにいるアタシは、どうやったら過去の自分を助けたりできるかがさっぱりわからない。

 このままじゃ、アタシが助けるべき過去のアタシはどうなるんだろう?


 今日はちょっと強い夜の風が吹いてる。さぁって、木々の葉がすれる音だって、こんなに気持のいいBGMみたいだ。前より伸びたテオの髪。アタシも手を伸ばして、その髪に指を絡ませた。

 やわらかな髪の毛。宝石みたいな瞳。


 綺麗な景色、素敵なお屋敷、大好きなテオ。



「こうしてここにアタシがここにいられるのは、アタシがアタシに助けてもらったからじゃないのかなって思うんだけど」

「……そうだね」


 次の日から、テオはアタシと一緒にいっぱい考えてくれて、そして、いろいろ試した。

 結果、アタシは『この世界』じゃ過去に行けないってことがはっきりした。けど、そのおかげで『向こうの世界』に移動するときになら、時間の移動ができそうなこともわかったんだ。


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