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終わりの色

 今朝、ついにテレビがつかなくなった。

 びんぼーだから電気を止められたわけじゃない。いや、電気も水道もガスも通ってないけど、それはうちの家だけじゃない。みんなだ。

 あたしは溜息をついて、戸棚を漁った。パン粉と砂糖、カップ麺ふたつ、パスタの乾麺。……そうだな、カップ麺はもうちょっととっておこう。

 パン粉に砂糖を混ぜてひとくち。……乾燥したパンとしか言えない味だ。普段なら絶対にこんなの食べないけど、非常事態の時にはパン粉って結構役に立つんだなあと思う。日持ちするし。

 昨日もパン粉を食べながら、テレビを観ていた。

 新型のウイルスが蔓延している、政府が対策を練っている。一か月前と同じことを、アナウンサーが真面目な声色で繰り返していた。毎日毎日おんなじことばっかり。もしかしたら、一か月前と同じ原稿を読んでいるのかもしれない。

 けれど今から三か月前は、もう少し違う話だった。


「ゾンビは人間か。人間ならば人権は。死者に人権? ゾンビは死者?」


 くっだらねーって思った。少なくとも、あたしの中学ではくっだらねーって言ってた。

「ゾンビは殺して当たり前じゃん」みんな、口をそろえてそう言った。

 ――ウイルスに感染した奴はみんなさっさと殺せばいーんだよ。どうせゾンビになるんだし。

 あたしたちは勝手に結論を出して、うんうんと頷いた。だってそーじゃん。ゾンビってやっぱり死んでるよ。明らかに腐ってるじゃん。あんなのを生物としてカウントするほうがおかしい。お偉いさんって、大人って、たまにすんごく馬鹿になる。でも大人にそう言ったら、「遺族の気持ちにもなりなさい」って言われるんだ。

 国のお偉いさんと、遺族の意見はこんな感じだ。


「愛している人間のみを攻撃するところからして、記憶もあるし判断力もある。彼らはまだ生きているのではないか」

「無差別に攻撃対象を選ぶわけではない。すなわち感染力は低い」

「隔離してしまえば無害」

「私を見て、あの子は確かに反応したんです。息子は生きています」

「ゾンビの駆除はんたーい!」


 ……訳わかんねーって思った。少なくとも、あたしの中学では訳わかんねーって言ってた。やらなきゃやられるんだよ? 相手ゾンビだよ?

『あたし、もしも政府からマシンガンを支給されたら、ゾンビ相手に乱射するよ。ていうか本当にマシンガンほしいくらいだよ。レッツ・ゾンビ狩り。「脳漿のうしょう脳髄ぶちまけてやり隊」を結成しよーぜ!』

 みたいなことをどっかの中学生がツイッターで呟いて、自作の小型爆弾(スプレー缶とか使うらしいけどテレビではもちろん詳しくやってくれなかった)で数体のゾンビをふっ飛ばしたら、今度はそれが議論された。


「大量虐殺を考える……中学生の心の闇」

「ゲーム脳の恐ろしさ」

「R15→R18? 超人気ゾンビゲーム、レーティングの見直しか」

「人を撃つのは快感!? ゲームで育った子供の心理とは」

「ゾンビの虐殺、はんたーい!」


 バッカじゃねーのって思った。多分これはあたしのみならず全国の中学生たちが思っただろう。ゲームしてたからゾンビを殺す発想したんじゃなくて、生きてる人間を生かしたいからゾンビを殺す発想したんだよ。大人って馬鹿じゃないの。


 政府おとなの対応は遅れた。どんどん遅れた。


 駆除反対派を鎮静化させて、駆除するために必要な人と物を揃えて、科学者に研究させて、でも研究対象のゾンビが逃げだして、駆除反対派が自宅にゾンビを囲いだして、テレビの人がゾンビ屋敷の取材して、取材してたらゾンビに逃げられて被害者が増えて、腐乱死体に発生する細菌だかなんだかのせいで二次被害が出だして、ゾンビたちが『生前愛していた人』しか狙わないもんだから頭の良さそうなアホっぽい評論家たちが『愛の定義は』みたいなことを語りだし、かと思えば話がどんどん飛躍してしまいには『二次元の嫁を愛する人間オタクたちの脳科学』みたいな訳の分からん特番まで組まれ始めて、新型ウイルスもなんだかんだで感染力低いだろうとか言ってた割にはあっというまに広がって、どっか違う国が助けてくれるかなーと思ってたら違う国でも同じ新型ウイルスが蔓延してて、『それなら一度も行ったことのない国に逃げれば「自分のことを愛している人」はいないし襲われないはずだー』なんて考えた人たちが空港に殺到して、最初のうちは動いてた飛行機もそのうち飛ばなくなって、じゃあ国内逃亡だみたいな感じでみんなが一斉に土地を離れたりした。でも当然、高速道路は一センチ進むのに三時間はかかりそうな勢いで渋滞したし、新幹線も乗れる状態じゃなくなった。ゴールデンウィークの千倍は酷い。

 で、人間は寝るけど「あいつら」は寝ない。どんどん距離を詰められて、そのうち結局噛まれたり、知らない土地で一人生きることを嘆いたり、なんだかみんな忙しくなった。

 つまりはパニックだ。


 そんな中、あたしは地元にどすんと腰を据えて、日本――いや世界が終わる様子を見守っていた。ここから逃げるつもりなんて毛頭ない。


 逃げなくたって、誰からも噛まれやしないのだから。


 パパは、ママが病気で死んでから、男手ひとつであたしを育ててくれた。たまに喧嘩もしたけれど、パパのことを嫌いだって思ったことは一度もない。

 でも、新しいママは好きじゃない。

 二年前――あたしが十二歳の時にパパが再婚した相手は頭の悪そうな女だった。金髪で、化粧がめちゃくちゃに濃くて、声がでかい。笑い声は「ぎゃはは」。馬鹿女の典型みたいな人間だ。

 ちょっと料理が得意ってところ以外、その女のどこがいいのかさっぱり分からなかった。だからあたしは、そいつのことを「新しい母親」だと認めなかった。

 ――ケーキ買って来たんだけどぉ。一緒に食べない?

 ――今日、パパ帰り遅いんだって。二人で焼肉しちゃおっかぁ。

 ――見て見て、洋服買ってきたの。こういうの最近流行ってるって聞いたから。よかったらどう?

 何もいらないし鬱陶しいと、その都度言ってやった。あの人はその度にちょっと悲しそうな顔をして、そう、とだけ言った。


 ――あの子も難しい年ごろなんだよ。

 再婚して三か月経った頃、パパがそう言ってるのを聞いた。ムズカシートシゴロ。便利な言葉だ。

 つまりは全部、あたしのせいみたいじゃん。

 金髪女はその後も何かにつけてあたしに構ってきて、でもあたしはそれを全部スルーした。どーせ、あたしのことなんかどうでもいいと思ってるくせに。パパの手前、あたしをむげにできないから構ってるだけのくせに。

 ――あたしのママは、死んじゃったあの人だけだ。


 ムズカシートシゴロの娘を置いてパパが死んだのは今から半年前。交通事故だった。

 あたしと金髪女は赤の他人なのに、「パパ」という仲介があったために「家族」だった。だけどパパが死んじゃったら、あたしらは本当に赤の他人だ。お葬式の時、「私達は家族だからね」と金髪女が泣きながら言ったけどそんなの知らない。あたしは、金髪女を家族だと思ってないし思えない。大体、金髪女はまだ三十過ぎだ。再婚して子供をつくるかもしれない。そうなったら本当に、あたしになんて構ってられないだろう。「私達は家族」なんて、口が裂けても言えなくなる。どーせそのうち、あたしをポイっと捨てるに違いない。


 ……そんなことを考えてたら、このパンデミックだ。


 ニュースが同じことばかり繰り返すようになった頃。朝目が覚めたら、金髪女がいなくなっていた。あたしはすぐさまピンときて、たんすの引き出しを確認した。通帳の残高がいくらか減っていて、あーやっぱりって思った。

 あいつ、逃げたんだ。

 新幹線か飛行機かで、どこか遠い所に行くつもりだったのだろう。あるいは実家にでも帰るのか。いずれにせよあたしのことはどうでもよくなったのだろうし、あたしももう金髪女の行方を追うつもりはなかった。

 ――お金なんてくれてやる。どーせ、終末世界ではすぐに諭吉さんの価値もなくなるんだよ。そんなことも分かんないなんて、ほんとに馬鹿な女。


 馬鹿はほっといて、あたしは一人で生き延びるすべを考えるべきだ。


 パパも死んじゃったこの世界で、あたしを噛みにくるゾンビはまずいない。とすれば、これから先必要なのはサバイバーとしての知識だ。食べ物の調達とか、寝床の確保とか。幸いなことに、寝床はいくらでもあるしどこも安全だ。あとは食べ物。火のおこしかた。飲み水の確保。

 蛇口をひねったら飲める水が出て、ガスとかIHで調理できて、スイッチひとつで電気がついて、コンビニにいくらでも食べ物が置いてあった世界って本当に素晴らしかったんだなって思う。あの頃、世間にぐちぐち不満を言っていた自分が懐かしい。あたしって子供だったんだな。あの世界って平和だったんだなあ。

 パン粉を食べ終え、あたしは立ち上がった。近くのスーパーはほとんど何も残っていなかった。遠くに足を運ぶか、近所の家でも物色するか。家には侵入し放題だった。この近辺で、いまだにここら辺に住んでいる人間はあたしくらいだから。

 あとのみんなは逃げたか、ゾンビになったかのどっちか。

 ――今日は近所の家をまわるか、と決心する。トイレットペーパーもほしいし、役に立ちそうなものはぜんぶうちの家に集めよう。この家はあたしのお城だ。快適に暮らせる場所だ。

 あたしはここで生きて、ここで死ぬんだ。



 ご近所の噂話が大好きだった相沢さんちにお邪魔する。相沢さんは「子供ができなかったから」と大型犬を五頭も飼っていたリッチな夫婦だ。犬は逃げたのか、庭にはくすんだ色をした鎖が残っているだけだった。お城のような豪邸も、今では要塞のように見える。


「――うっわ、きっつー」


 家の中に入るやいなや、あたしは鼻をつまんだ。

 相沢さんちは近所で一番大きな家だけど……すんごい腐臭だった。多分、家のどこかで誰か死んでるな。それかゾンビ化してるか。

 リビングとキッチンをそろりと覗く。誰もいない。机の上に置かれてあるみかんは、面積の半分くらいが緑色でグニョグニョだった。もったいない、貴重なビタミンCが。

 イキイキしているけれど食べられそうにもない観葉植物を横目に、あたしは部屋を漁る。印鑑とかキャッシュカードとか、今となっては何の価値もないものばかりが出てくる。食べ物とか飲み物とかないのかな。非常食は置いていなかったのだろうか。

 二人暮らしにしてはやたらと大きい冷蔵庫を開けると、人間のそれとは違う腐臭が強くなった。野菜(主にモヤシ)から漏れた妙な液体のせいで、野菜室はほぼ全滅だ。そうじゃなくても食べ物がない。何に使うつもりだったのだと突っ込みたくなるような、ひからびたニンジンが奥から出てきた。……ほんと、使い道が考えられないくらいのしょうもない切れ端だ。なんでこれだけ残したのだろう。

 その他……いくら冬とはいえ卵は恐ろしくて使えない。ヨーグルトの消費期限は二か月前。自家製らしいたくあんは、ひときれ齧ってみたけど酸っぱすぎて吐き捨てた。

 冷蔵庫は収穫なしだったけど、流しの下からは未開封のマヨネーズが出てきた。高カロリーだしありがたくいただく。あとはみかんの缶詰と、あえるだけのカルボナーラソース。パスタソースは二人前だ。これを水で薄めてスープとして飲めば四日はもつんじゃないか。よし、いただこう。

 トイレで紙も調達し、あたしは意気揚々と二階へあがった。クローゼットかどこかに、非常食を置いている可能性があると思ったからだ。


 ところが一分後、あたしは二階に来たことを激しく後悔していた。


 寝室に、二体のゾンビがいた。扉を開ける前からなんとなく嫌な予感はしていたけれど、やっぱりというかいやがった。そしてそれは明らかに、相沢夫妻だった。


 ――ゾンビたちは、どこか幸せそうな顔をしていた。


 二人ともピクリとも動かない。ぐずぐずの身体でその場に立ち尽くしているだけ。綺麗に化粧してたのだろうおばさんの顔も、今じゃ人体模型みたいで相当不気味だ。

 けれど二人は笑ったような顔で、その場にいた。

 腐り具合からして、おじさんが先に感染したらしかった。おじさん、年の割にダンディだったからな。町内会でもモテてたからな。不倫してたのかは知らないけど、多分女性に噛まれたのだろう。

 で、ゾンビになったおじさんはおばさんを噛んだ。オシドリ夫婦って噂の二人だったからなあ。おじさんがおばさんを噛んで、それで完結したんだ。感染したおばさんはすぐに『人形』になった。そうして、おじさんと二人でずっとここにいる。

 相思相愛。見たところそんな感じだ。あたしは舌打ちした。


 ゾンビになったくせに、死んだくせに。

 愛されて幸せ、みたいなその顔。

 ――反吐が出る。


 いただく物だけしっかりいただいて、あたしは外に出た。生きてる人間より死んでる人間の方が色々充実してるみたいな、ゾンビになったほうがまだ幸せみたいなあの表情は本当に腹立たしい。

 近所の園児ガキが母親の近くでゾンビ化しているのを見て、蹴飛ばしたい衝動に駆られる。親の愛情を一身に受け、腐りはてたその身体。ちょっと殴れば胴体がふたつに割れそうだ。


 ――くそったれ、せーぜーみんな死んじまえっ!


 口が悪いと注意してくる人間もいないので、堂々と声に出す。本当にイライラした。なんだよ皆、新型ウイルスと聞いて怖がってたくせに。パニックになってたくせに。逃げようとしていたくせに。


 いざゾンビになってみたら、誰にも噛まれない人間は可哀想、みたいな顔しやがって。


 あたしは生き延びるんだ。こんな世界でも生きてやる。一人でたくましく生きて、腐ったやつらにざまーみろって言ってやるんだ。寂しくなんかない。あたしは死にたがりじゃない。ゾンビになんて、襲われない方が絶対にいいんだ。生き延びたやつの方が「勝ち」に決まってる。

 ……ああよかった、パンデミックの前にパパが死んで。金髪女が逃げ出して。あたし生きられる。ゾンビにもならずに。ああよかった。本当に、良かった。

 誰にも襲われる心配がなくて、よかった。



 帰宅し、昼食の準備をする。ほんとはできるかぎり食料を温存した方がいいのだろうけど、むしゃくしゃしていて何か頬張りたい気分だった。カップ麺の蓋をめくり、粉末スープを麺にふりかけそのまま齧る。ぼりぼり、ぼりぼり。ああ美味しい幸せだ。あたし生きてる。ゾンビと違って食事もできる。あたしは幸せだ。幸せなんだ。


 ――幸せって、なんだ。


 夢中で食事をしていたら、玄関から妙な音が聞こえた。

 がたん、がつん。

 ……扉に何かを打ち付けているような音だ。まさかあたしと同じように、空き巣をしているやつでもいるのだろうか。

 だとしたら追い出さなきゃ、とゴルフクラブを手に取った。パパの遺品だ。いつ捨てようかと思っていたけれど、今となっては役に立つ。食べかけの麺を残してクラブを握りしめ、足音を忍ばせて玄関まで移動した。

 玄関のすりガラスには、やっぱりというか人影があった。男、ではなさそうだ。顔はまったくうかがえないけれど、もしかしたらあたしと同い年くらいかも。

 ――生存者、だろうか。

 あたしはごくりと喉を鳴らし、ゆっくりと扉を開けた。そして、息をのんだ。


 まっさきに目に入ったのは、見覚えのある髪の色だった。


「……あ」


 二度と見たくなかった金髪。

 それはところどころが赤黒く、カピカピに乾いて頬にくっついていた。その頬も皮膚がべろりと剥がれ、筋肉が丸見えの状態である。

 それでも、目の前にいるゾンビの化粧の濃さはよくわかった。

 ……随分と前に、ゾンビ化したようだった。相沢さんとは比べ物にならないくらいにあちこち腐敗しているし、足の指は移動中にもげたのか、一部がなくなってしまっている。一瞬でそこまで観察して、あたしは急激に、様々なことを理解した。


 金髪女が、早々に誰かに噛まれたこと。

『自分が死んだら噛んでしまうだろう相手』と距離を置くべく、ここから逃げ出したこと。

 それでも死後、腐った身体を引きずってここに戻って来たこと。

 わざわざ、あたしを噛みにきたこと。


 ――彼女にとってあたしが、『生前愛した人間』のひとりであったこと。


「……あ」


 すべてを察して、ゴルフクラブを床に落とした。

 目の前の女が、大きく口を開く。

 腐ったみかんは緑色なのに、ゾンビの口は赤色に見えた。

 そこに並んだ白色と、ほんの少し被せられた銀。

 揺れる金色。

 ――……くそっ。なんで。

 あたしに噛みつこうとしている女を、呆然と眺めながら思う。


 もうすぐ死んじゃうのに、

 こんな女に殺されちゃうのに、


 なんであたしは、こんなに安心してるんだろう。





「――うわ」

「どしたの神林くん……ってうわあ」

「扉をあけたらゾンビって、やっぱり慣れないな。すりガラスごしに人影が見えたからもしやとは思ったけど」

「二人とも『人形』だからまた不気味。襲われたのは子供の方かな。腐り具合からして」


「朝倉さん、これ」

「おー、カルボナーラソースじゃん。貰おう貰おう」

「台所は妙に生活感があるね。パンデミックの後もここで暮らしてたのかな……」

「食べかけのカップ麺がそれを物語ってるよねー。でも、食べかけは一人分しかない」

「女の子が一人で暮らしていたのかな?」

「で、そこに母親が戻ってきたわけだ。……ゾンビって頭を破壊されたら動けなくなるらしいけど、いざ母親の顔を見たらやりにくいというか、頭を攻撃するのも難しくなるよねえ」

「それが、このウイルスの怖いところかもしれない」

「愛する者に攻撃されるからこそ、抵抗や反撃が難しくなる……ねえ」


「朝倉さん、そろそろおいとましよう。この家で一夜を過ごすのはちょっと」

「玄関先にゾンビが立ってる家とか、さすがに落ちつかないもんねー」

「さっき通り過ぎた大きな家もやっぱり行ってみようか。あいざわさん、だったかな」

「あそこ、なんか怪しい気配がするけどなー。家の中にゾンビがいそうで、……」

「朝倉さん?」

「静かにして」

「?」

「声が」


「…………何も聞こえないよ」

「ううん。今確かに言ったよ、こっちの子供のゾンビ」

「なんて?」

「多分、……『ママ』」


「ゾンビがそんな、発言したりするかな」

「分かんないけど……」

「けど?」


「この子、ママって言えてほっとしてるみたい」



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