朝雲暮雨
「双子には見えないってよく言われるんですよね」
黒髪の女は困ったように笑った。「困ったように」見えるのはハの字になった眉のせいだ。先ほど――見知らぬ男女が宿泊場所を求めて「ここ」に来てからずっと、彼女は笑顔を絶やさず話し続けていた。
「二卵性双生児だもん。似てなくとも無理はないわ」
黒髪の女に、茶髪の女が言う。金に近い茶色の髪は最近染めるのをやめたのか、根元の黒さがかなり目立ち始めていた。
二十分前に双子に出あったばかりの青年は、彼女らをまじまじと見た。
黒髪の女は女性の中でもかなりの小柄。垂れ目で唇が薄く、肌が白い。
茶髪の女は男性から見ても長身。釣り目で唇が厚く、肌は黒め。
身長差のせいか、二人が同じ二十四歳だとは思えない。服の好みも異なるのか、黒髪は白のブラウスにロングスカート、茶髪は黒のトップスにダメージジーンズをそれぞれあわせている。
……似ていないどころか正反対だ、と青年は思った。が、何も言わなかった。
「ちなみにおねーさんたち、お名前は?」
青年の同伴者――制服姿の女子高生が興味深そうに尋ねた。彼女の脳には「人見知り」という単語がないのか、と青年はいつも考える。数分前に出会ったような人とでも彼女は平気で世間話をするし、年上相手に敬語を使うこともほとんどない。しかし、双子は特に気を損ねなかったようだ。「名前」とどちらともなく呟いた後、
「旭日」と茶髪が言った。
「夕月」と黒髪が言った。
名前だけは双子っぽいでしょ、と二人は笑う。そーですねー、と女子高生は頷いた。
「んで。おねーさんたちは二人でこの小学校に住んでるんですか」
「まあねえ。あたしたちの母校なのよ、ここ」
「だからって私物化しちゃいけないとは思うんですけどね」
母校だと胸を張る旭日と、私物化しちゃいけないと猫背になる夕月。でこぼこだ、と青年は思った。
「教室は余るほどあるし、住み心地も思ったより悪くないし、大きな庭もあるし。案外いいわよー、『学校生活』って」
「大きな庭って……グラウンドのこと? ちょっとだけ覗いてきたけど、確かにここのグラウンドは整備されてて綺麗だよねー。おねーさんたち、スポーツかなにかするの?」
「いえいえ。ただ、大きな家と庭に憧れていただけです」
おっとりとした口調の夕月が、ふるふると首を振った。ふうん、と女子高生は双子を見比べる。どこか、納得のいっていない顔だ。
「おねーさんたちは、どうして自宅に帰んないの? 旅してるわけでもないんでしょ?」
「わたしも旭日も、現住所はQ県なんです。中学の時に引っ越して」
「……Q県か。船か飛行機がいるねー」
「理解してくれた? あたしら二人、マイホームには帰れないのよ」
旭日が肩をすくめる。公共の交通手段がすべてストップしている現在、自力で泳ぐか船の操縦でもしない限り、海を渡ることは不可能だ。青年は双子に同情した。しかし、女子高生の質問は終わらない。
「んじゃなんで、おねーさんたちはわざわざQ県からここまで来たの? 世界が終わる前に母校に行こうと思ったの?」
「ううん、幼馴染の家に行こうとしてたのよ。彼はずっと実家暮らしで、こっちに住んでたから……」
「おさななじみ! 素敵なキーワードだねー」
「でしょ? 彼、割とイケメンだったんだから」
旭日が、動きもしないスマホを女子高生に見せた。スマホカバーにこれでもかとプリクラが貼られている。青年は辟易したが、女子高生は顔も声色も変えずにそれを眺めている。
「なるほどイケメン。オーシャンズの亮くんにちょっと似てるかも」
「それよく言われるわ。本人も自覚はあったみたいだけど」
「わたしはどっちかと言えば、ファクトのボーカルに似てると思います」
「あー、確かにそっちにも似てる。切れ長っていうの? この目の形とか……」
女性三人がきゃっきゃとはしゃぐ。芸能に疎い青年は、その話題にまったくついていけていなかった。それに気づいたらしい女子高生がフォローするように
「とにかくイケメンなの。ワイルド系。神林君と全然違う感じ」
まったくフォローになっていない言葉を発した。青年は眉間に皺を寄せる。自分がイケメンでもワイルドでもないことは知っているが、もう少し言いようがあったのではないか。
女子高生はスマホを旭日に返却しながら、質問を重ねた。
「このイケメン幼馴染は、旭日さんの彼氏なの?」
「……いや。そうでもないというか、そう思っていたのはあたしだけだったというか」
ハキハキと話していた旭日が、初めて言葉を濁した。女子高生は不思議そうに首をかしげる。
「どゆこと?」
「……ね、夕月?」
「……そうですね」
夕月の顔がくにゃりと歪む。しかし、聞き取りやすい声で言い切った。
「その幼馴染……二股してたんです。交際相手は、旭日と夕月」
青年はぶるりと身震いした。二股自体どうかと思うが、その相手が双子とは。幼馴染なら当然、似ても似つかぬこの二人が双子だということも承知したうえでの行動だろう。尚更、どうかしているとしか思えない。
女子高生は「うわー」と伸びたラーメンのような声を出した。驚きすぎて間抜けな声が出たのか、どうでもよすぎて棒読みになったのか。青年には分かりかねた。
「二股されてるって気づいたの、いつだった?」
「わたしは……旭日のそのスマホを見た時。遠距離恋愛中の彼がいるとは聞いてましたけど、それがよりにもよって同じ相手だったなんて……」
「あーそうだ。盆休みに帰省した時、これが原因で喧嘩したんだったわ。それまでは『お互い遠距離で大変だねー』って仲良く会話してたのに」
男女二人がベタベタしている様子を貼り付けた薄い機械に、全員が同時に目をやった。旭日と夕月は忌々しげに、青年と女子高生は同情のまなざしで。
「んで、あたしら二人は大喧嘩して」
「お互い、『もうあの人に関わらないで!』って叫んだんですよね」
「えっ。どっちも引かなかったの?」
女子高生が目を丸くする。双子は首肯した。
「あたし、結構本気で付き合ってたんだよね」
「それを言うならわたしもです、旭日」
「なによ。夕月が彼と付き合い始めたの、あたしより二か月も遅かったでしょ。あたしは同窓会の時にライン交換して、そのまま付き合い始めたんだから」
「そんな偉そうに言える立場ですか? 旭日は彼と一度別れて、三か月後にヨリを戻したんでしょう? つまり、付き合っている日数は実質――」
「はいはーい、喧嘩しない喧嘩しなーい」
いがみあう双子を女子高生がたしなめる。ごちゃごちゃだ、と青年は思った。
双子は落ち着いたのか、あるいは何かを思い出したのか、長く大きな溜息をついた。
「……まあそんな感じでさ、あたしも夕月も彼のことが大好きで」
「お互い、『あの子とはもう別れて!』と彼に懇願したのですが」
「…………が?」
「彼、二股を続けたんですよね」
青年は引いた。女性の気持ちを考えて『その男は最低だ』と思ったし、男同士として『どうしてそんな面倒な状態を続けたんだ』とも思った。普段、他者に対してあまり引くことのない女子高生ですら「うわー」と声を漏らしている。相変わらず、緊迫感のない声ではあったが。
「おねーさんたちは、二股されたままってのには気づいてたの?」
「……まあ、気づいてはいたよね」
「でも、退くに退けないと言いますか……」
「夕月はさ、ふわふわしてるくせに頑固なんだよ」
「『くせに』とはなんですか。そういう旭日こそ――」
「はいはいストップストップ。そんで? おねーさんたちの恋の結果は?」
女子高生は気を使う様子もなく先を促す。双子は顔を見合わせ、二人同時に首を振った。
「どっちが好きなのかをきちんと訊く前に、彼、ゾンビになったのよね」
青年はぶるりと身震いした。日が傾き始めたせいか、それとも話題のせいなのか、教室の空気が冷えてきているように思う。髪を揺らすほどの隙間風が入り込んでいる気さえした。エアコンも使えない、だだっ広いだけの教室が宿として快適とは考え辛い。
しかし目の前の双子はこの部屋の温度に慣れているのか、特別何も言わなかった。
「……んーと」
色々と訊きたいことがあるのだろう、女子高生は斜め上を向いて何かを考えている。しかし、五秒も経たないうちに双子へと視線を戻した。
「順番に訊くね。なんで、彼はゾンビになったの?」
「それが分からないのよねえ。あいつ、結構モテてたし」
「彼、美容師だったんですけど。指名も多かったみたいで……お客さんの誰かにやられたのかも」
「ああー。このルックスなら、そりゃー指名もされるだろねー」
女子高生が納得したように頷く。青年は眉根を寄せた。
――その幼馴染とやらは、『二』以上の股をかけていたのではないか?
そう思ったが、当然言えなかった。
「で、いつか決着つけてやると思ってたあたしたちは、彼がゾンビになってるとも知らずにここまで会いにきたのね」
「船が動かなくなって、自宅に帰れなくなるとも知らずに」
その言葉に、女子高生は目を丸くした。
「……おねーさんがた、このパンデミックにも関わらず『決着つけてやる』とか思ってたんだねー」
「むしろこのパンデミックだから、です。『どちらが本気でどちらが遊び』なのか、知らないまま死ぬのは嫌だと思いまして……」
おしとやかに夕月。ふわふわしてるくせに頑固者、という旭日の意見はあながち間違いではないと青年は思った。しかし、今問題なのは二人の性格についてではない。
ゾンビになった男に会いに行ったにも関わらず、何故二人が生きているか、だ。
「……あたしら二人とも遊びで、別の女がまだいたんじゃない? って思ったでしょ神林君」
旭日の言葉に、青年はぎくりとした。女子高生が白い目を青年に向ける。神林君ひどーい、とでも言いたげな顔だ。
――朝倉さんだってそう考えただろう。『この最低男のことだ、三股四股してたんだろう』って三秒前までは考えていただろう?
青年はそう叫びたかった。が、こらえた。
「まあなんというか、『あたしら以外に好きな女がいた』ってのは当たってるわ」
「わたしたちが遊ばれていたというのも、嘘ではありません」
「……えーっと? それってつまり?」
困惑顔の女子高生を見、双子は「つまり」と息を揃えて答えた。
「彼が死後、噛みに行った相手は――彼のママだった」
青年はぶるりと身震いした。周囲が暗くなりはじめたせいか、怪談話でも聞かされている気分だった。そういう時に限って尿意を催す。しかし、このタイミングで席を立ってもいいいものか。
「ママを噛んだってのは……んーと。…………それって、あのー」
さすがの女子高生も言葉に詰まっている。双子は半ば真剣に、半ば笑いながら答えた。
「あなたが言わんとしてる、それで多分あってるわ」
「つまりはマザコンってやつです」
「それも極度の」
「実家暮らししてるのも、貯金しやすいからって言ってましたけど……今思えばあれは」
「母親から離れたくなかったんだわ、多分」
「わたしとデートしている時も、母親相手に『今どこにいる』とか『何時に帰る』とかいちいちと連絡していましたし」
「お母さんが料理中にちょっと指を切ったと知れば、家に帰ると騒ぐしねえ」
「どうして、付き合ってる時は『それ』に気づかなかったんでしょう……」
嘆くような大袈裟な口調で、二人。かと思えば青年の方を見た。
「神林君もやっぱり、お母さんが好きなの?」
「旭日ってば。この場でそうだとも言い辛いですよ、ねえ神林さん?」
双子がくすくすと笑う。青年は硬い笑みを返した。自分がマザーコンプレックスかどうかはともかく、一刻も早くトイレに行きたかった。尿意はもちろんのこと、この場の空気とその笑顔から離れたい。
「んーと、横から入ってごめんね」
助太刀するように、女子高生が発言する。
「おねーさんたちは、彼氏さんが母親を噛んでるところに遭遇したの?」
「いや、正確にはちょっと違うかな」
「ふらふらと歩いている『ゾンビの彼』をまず発見しまして」
「あたしと夕月、どっちを噛むのかとハラハラしてたら」
「彼はふらりとわたしたちを通り過ぎ、実家に向かい」
「母親を、がぶり!」
「そして、こちらには見向きもせず『人形』に……」
女子高生は、本日何度目か分からない「うわー」を発した。今度こそ、感情のこもった声で。
「……まあ、そのおかげであたしと夕月は仲直りできたんだけども」
「怪我の功名みたいなものよねえ」と双子は笑う。青年は疑いのまなざしを二人に向けた。和解した割に、口喧嘩が多い気もする。
「そんで、あんなマザコン野郎はほっといて、二人で生きてくことにしたのね」
「ええ。こんな世界ですから、女同士仲良くしようと」
「へー。色々大変だったんだね」
女子高生は、一時間近く聞かされた濃い話を『大変』の一言で纏めてしまった。青年はそれもどうかと思ったが、本人たちも「そうなのよねー」の一言で終わらせてしまった。「本当、マザコンには気を付けてね」と旭日が言い、「こんな世界だからこそ彼の本心も分かってしまいますから」と夕月が続けた。
「マリッジリングウイルスは『最愛』を選ぶから」
「『誰』を本気で想っていたのかも一目瞭然です」
そうしてようやく、話し終えたといった感じの息を吐いた。「なるほどねえ」と女子高生。何が「なるほど」なのか、青年にはやはり分かりかねた。
「おねーさんたちはもう、その彼のことはなんとも思ってないの?」
「ええ、ふっきれました」
「あんなマザコン、こっちから願い下げよ」
「へー。『新しい恋人を探そう』とかは?」
その言葉に、双子は顔を見合わせた。
「その時は、夕月には負けたくないわ」
「わたしだって。旭日には負けませんよ」
「あはは。おねーさんたちは『喧嘩するほど仲がいい双子』なのかな?」
それも違うのでは……と青年は思った。が、何も言わずに立ち上がった。そろそろ、尿意の我慢も限界に近い。
「すみません、ちょっと」
「あっ。もしかして神林君、トイレ?」
女子高生がにやりと笑った。トイレに行く直前に、怖い話を聞かせる子供のような意地の悪い顔で。青年はぎくりとする。終末世界を生きることになった現在も、怪談の類は得意ではない。
しかし、女子高生は低い声で話し始めるでもなく、すっくと立ちあがった。
「あたしも一緒に行く」
「えっ……」
「いやもちろん神林君は男子トイレだろうし、あたしは女子トイレだけど」
女子高生はわざとらしく、へらへらと笑った。二人のやりとりを聞いていた双子が口を挟む。
「トイレならどこの階にもあるわよ、なんせここは学校だから」
「幽霊は見たことないのでご安心ください」
「ありがとーございます。花子さんがいたらどうしようかと思った」
女子高生が軽い口調で言う。双子はこくりと頷き、続けた。
「今日、二人ともここに泊まるつもりよね? なんなら校舎を見て回ったら? 気に入ったところを宿として使えばいいわ」
「どの教室を使っていただいても結構ですよ。幸い、部屋だけは使い切れないほどあるので」
「ありがとーございます、そうします。んじゃ、行こうか神林君」
女子高生は、青年の背中をぐいぐいと押しながら礼を言う。
そして、あくまでも自然な動作で。
床に置いていた、自身と青年のリュックを肩にかけた。
「――神林君、トイレもうちょい我慢できる?」
「え?」
「ここ出るよ」
「えっ!?」
「あんまり大きな声出さないで。ここに泊まるのはやめにしよう。宿になりそうな建物は他にいくらでもあるし」
「え、でも、なんで……」
「ここ、幽霊出るから」
「……えっ」
「――ってのは半分冗談なんだけど」
「半分、なんだ……」
「あたしらさ、校舎に入る前にグラウンドをちょっと見て回ったじゃん?」
「え? うん」
「――グラウンドの端っこの土、なんかおかしいの気づかなかった?」
「……いや、ぜんぜん」
「気のせいだといいんだけどね」
「おかしいって、どういう……」
「ま、女の勘ってやつだよ。――あたしらを殺して所持品を盗るとか、そういう人達ではないと思う。ただ……なんか変だ」
「変って……」
「神林君はなんか感じなかった? あの二人」
「まあ……ダメ男でも必死に追いかけるタイプなんだなあとは。恋は盲目というか、恋に恋をしてそうというか……」
「それも違うと思う」
「え?」
「あの二人はね、恋愛は『恋人を動かすゲーム』だとしか思ってないよ」
双子は、先ほどまで青年の座っていた椅子を眺めていた。
「――あの神林って子、結構可愛かったわね」
「あら旭日。ああいう軟弱そうな子は嫌いなのでは?」
夕月の言葉に、旭日は口角をあげる。
「そういう夕月こそ、さっきから神林君の方ばかり見ちゃって。やらしいわ」
「はしたない旭日に、やらしいだなんて言われたくありません」
夕月は、青年が出ていった扉に目をやった。青年と女子高生の気配はない。
「神林さんのような大人しい子には、わたしのようなおしとやかな女子が似合うんです」
「はあ? 神林君のような弱々しい男子には、引っ張っていく力のあるあたしのような女子のがお似合いに決まってるわよ」
「なんですって」
「なによ」
睨みあう。そして沈黙。
しかしやがて、二人は破顔した。
「……賭ける? 夕月」
「もちろんです、旭日」
「どちらが神林君に『噛まれそうになる』か」
「――あんな子、一発で落としたげる。絶対にあたしを噛みにくるはずよ」
「いいえ。神林さんは色仕掛けでは動かないタイプでしょう。勝つのはわたし」
「どちらが彼を『本気』にさせるか」
「マリッジリングがどちらを選ぶか」
「面白い勝負になりそうね」
くすくすと。声を潜めて二人は笑う。
「……それじゃ、期間はとりあえず一か月」
「その間に彼を本気にさせましょう」
「その後は、ゾンビの多い場所にでも放り出してやればいいわ」
「誰かが彼を噛みにくるかもしれません」
「彼が噛まれたら、結果発表」
「ゾンビになった彼が、わたしの元へ来るか、旭日の元へ来るか――」
「楽しみね」
「ええ、とても」
挑戦的な目で、旭日は夕月を睨んだ。夕月もまた、旭日を睨み返す。
「……今のところ、『一勝一敗一分』。次は勝つわよ、夕月」
「受けて立ちます、旭日」
「神林君がどちらを愛していたか分かったら――」
「いつも通り。さっさと殺して『埋めて』しまいましょう」
そこまで話し終えてから、二人は同時に眉をひそめた。
「夕月。連れの女はどうしようか」
「あの二人の関係をちゃんと聞いてませんでしたね。神林さんの彼女でしょうか?」
「さあ……。ま、少なくともあんな馬鹿そうな女には負けないわ」
「当然。アレに負けるようなわたしたちではありません」
「けど……あの女の正体がなんにせよ」
「――わたしたちの二人の勝負には、邪魔ですね」
二人は笑う。いつも通り。
いつも通り、
「適当に」
「事故にでも見せかけて」
「「殺してしまいましょうか」」




