006 森を守る
明けましておめでとうございます。
今年も読んでいただければ幸いです。
今思えば、あの代行者の提案する口振り。
彼女を救えるのは契約の実だけだと確信していたような?
……考え過ぎか。
光が収まった。
えーとですね。はい、生命って素晴らしいっ!
まず、エルムさん。
身長170程度だったのに180に!いやー力強い!
鋭い目!引き締まった顔!迸るパワー!
老人から初老ときて最盛期に若返った!みたいな?!
次にエルラさん。
身長140程度から150に成長!こちらは子供っぽさがなくなりつつある顔付きに!しっかり女性らしさも出てるし!
あんまり見ると変な人になるからやめときます!
ただもう一度だけ言うと、女性らしさが出ています!!
終わりっ!!
ふう。美男美少女エルフにいきなりなったからびっくりしたー。
ナニコレ、少女なんか助かるどころかパワーアップしてますやん。
今は2人共、目の前で跪いてるし。
と、取り敢えず解析。
ーー〈解析〉ーー
名前 : エルム=ワルド
種族 : 高位樹木耳長族
組成 : 元素70、魔素10、霊素20
種族スキル : [精霊の声]
スキル : ユニークスキル [刀心一体]
スキル[属性剣][指揮][魔素感知][霊素感知][念話][感知][夜目][感覚共有][意思伝達]
魔法 : [水魔法][土魔法][樹木魔法]
霊法 : [樹木霊法]
称号 : [森の剣士][樹木の眷族]
耐性 : [物理耐性][魔法耐性][火耐性][熱耐性][水耐性][氷耐性][毒耐性][精神異常耐性][真空耐性]
名前 : エルラ=ワルド
種族 : 高位樹木耳長族
組成 : 元素70、魔素10、霊素20
種族スキル : [精霊の声]
スキル : ユニークスキル [憑霊]
スキル[作法][調理][裁縫][魔素感知][霊素感知][念話][感知][夜目][感覚共有][意思伝達]
魔法 : [火魔法][風魔法][光魔法][樹木魔法]
霊法 : [風霊法][樹木霊法]
称号 : [森の降霊者][樹木の眷族]
耐性 : [風耐性][魔法耐性][火耐性][熱耐性][水耐性][氷耐性][毒耐性][精神異常耐性][物理耐性][真空耐性]
こえーよ。
種族の欄まで変わるとか…別の生物になってんな。
エルラは助かったけど、変わり過ぎた自分をどう思っているだろうか?ショックだろうか?
もっと酷いのは。
助かったように見えるけど、実は意識は戻らず傀儡みたいになってるとか。
意識を抑えつけられて、無理矢理従わされてるとかだな。
従順になるように強要されてるかどうか、ゴタゴタが片付いたら確認してみよう。
さてさて、どうしようか。
まず、エルフを集めて人間を押し返すか、
それともエルフを逃がすか。
なんかこいつら見てたら前者もいけそうな気がしてきたぞ?
〔エルム〕
「はっ!」
うーん、張り切ってるねー。
エルラまで体を強張らせてる。……なんか話しにくい。
〔エルム達が仲間から離れた時のでいいから、戦力とかの状況を詳しく教えてくれ。〕
「はい。まずーーーー」
……エルフ1人に対して4人で向かってくるとか……
相手は前衛2人と後衛回復の2人の編成で、木などの障害物を盾に接近してくるらしい。
相手は飛び道具をメインに魔法も使ってくる。
対してエルムの息子、エルオがエルムから引き継いで率いている集団は20人前後。
攻撃は風魔法がメインであまり武器は使わないそうだ。
基本的にエルフは木の上から攻撃するし、魔素の保有量が多くて魔法を使い慣れてるからだと。
只でさえそうなのに、エルムのように近接戦用の武器で戦うのは極稀らしい。
この近くに集落はなく、人間が80人前後も来るのは国が動いてる可能性が高いらしい。というかそうだろう。
しっかし、明らかにエルフが抵抗するのを想定してるし厄介だなー。
「奴ら村人のような格好をしているから堅気ではないかもしれん。」
なんかエルムの呟きが不穏なんだが?
大手を振って来れないから、村人に変装か……
俺も何されるか分かったもんじゃないな。
もっとこう、穏やか〜な出会いがしたいし、一方的にして来る奴等と交流するのは遠慮したい。
〔まず、エルフたちに治癒の実を供給して士気を底上げする。〕
「人間を追い出すのですね?」
〔ああ。ただし、こちらはあくまで森を守る方針で行く。森から出たら攻撃はしないし、これからを考えると死者も出したくない。〕
まあ、相手に負傷者をだすなとか、そんな難しいことは言わないけどな。
「ではそのように。ただ、治癒の実を大量に運ぶには手持ちの袋では効率が良くないかと。」
あーそうか。いや…まてよ?裁縫ってスキルがあったな。
〔2人共、布と針って持ってる?〕
「残念ですが、どちらも持っておりません。」
「同じく。」
〔そうか。〕
うーむ……即席でやってみるか。
代行者、軟体を起動させて。
【スキル[軟体]を起動、代行者の制御により覚醒しました。】
どれどれ、
スキル[軟体]<ex>
「全体軟化」・魔素の容量に比例して効果が増大する。
「部分軟化」・全体軟化より魔素の消費が少なく効果が大きいが、部分的にしか作用しない。
うん、代行者、2人に向いている面の表面だけ長〜い長辺の長方形に部分軟化。布の強度のイメージで頼む。
〔2人共、目の前の部分を剥がしてみて。〕
急に言われて2人は驚いたようだが、近づいてそっと引っ張った。
ペリペリペリーーーー
2人は目を丸くしている。皮っぽいな。
良さそうだ。だんだんいい仕事してきたな代行者。
代行者の制御の使い方がわかってきた気がする。
次は、
〔エルムって俺の枝に届くか?〕
俺は今、若いけど大木と言っても違和感ないくら高くなってるからなー。
「…今の体なら恐らく可能です。」
まあ、無理だったら土魔法で階段を作るだけなんだけどな。
まずはエルムに登らせて、細〜い枝を見つける。
後は、それを部分硬化!
〔その枝折って降りて来てくれ。〕
あ、勿論折る部分は軟化させてるから簡単にできると思う。
これで針もできた。
よし。
軟化したら柔らかいまま、硬化したら固いままだな。
あとは俺の糸。
スキル[糸]<ex>
「鉄糸」・硬糸より強いが鋼糸ほどではない。子供を支える程度。
「執糸」・粘糸より粘り強いが怨糸ほどではない。小型の鳥類が抜け出せない程度。
これを使う。無論鉄糸で、だ。
仕上げにエルラのスキル、裁縫をしてもらう。
袋の目処はついた。
出来次第、治癒の実を運んでもらうが……
このままじゃ心もとない。
〔エルム、2人は武器を持っていないがどうしたんだ?〕
「私の刀は折れてしまいました。エルラは魔法専門だったので、武器は持っておりません。」
〔そうか。分かった。〕
やはり壊れてたか。エルムに武器がいるよな。
出来たらエルラにも何かあったらなー。
………実験だな。
木削って作るのは面倒だし、形が悪くなりそうだからやめておいて。
代行者、厚さ5㎝ほどの柔らかい粘土板を二枚頼む。
刀は森の中で振り回すから縦と横は短めに。
〔エルム。刀の形って覚えてる?〕
「失礼ながら、私は刀と共に生きてきた者です。
今も、物はないが感覚ははっきり刀を感じております。」
〔愚問だったな。じゃあ、エルムのイメージを土魔法に乗せて粘土板を刀の鋳型に変形してみてくれ。〕
トーテムポール作った時には、まだ土魔法を使いこなせてなかったみたいだ。
今なら更にトーテムポールを精巧に……いや今はどうでもいいか。
「難易度が高いな…わかりました。」
まあ代行者の制御だからできることなのかもしれないな。
2人共作業に入った。
エルムは敬語を言い慣れてないようだけど、別にどっちでもいいんだよな。
正直、俺は気軽に話して欲しいから3人?の間では敬語を無しにしたい。後で話してみよう。
やる事はないからスキルでも確認するか。
ーー〈解析〉ーー
名前 : ヘリス=ワルド
種族 : 木
組成 : 元素80、魔素10、霊素10
種族スキル : 「〈ex〉[吸収][光合成][硬化]」
スキル : ユニークスキル[改造]
スキル「〈ex〉[毒毒][糸][潜伏][再生][魔素感知][霊素感知][抗虫][果実][念話][感知][軟体]」
[絶叫][超音波][夜目][降霊][作法][調理][裁縫][居合斬り][精神統一][指揮][感覚共有][意思伝達]
魔法 :[火魔法][水魔法][土魔法][風魔法][光魔法]
霊法 :[風霊法]
称号 :[女神の代行者]Lv.3、[エルフの庇護者]
耐性 :[火耐性][熱耐性][水耐性][氷耐性][毒耐性][精神異常耐性][物理耐性][真空耐性][魔法耐性]
凄いな。
エルムとエルラのスキルが増えてたから予想してたけど、思いのほか多い。
地味に代行者がLv.3になってるし。スキルの制御がし易くなったのはそのおかげか。
………あれ?感覚共有と意思伝達があるな。
さっきは容姿の変わりようが衝撃的過ぎて見落としてたけど、エルムとエルラも持ってるな。
これがあればもっとスムーズに事が進んだんじゃ?
兎に角、感覚共有と思念伝達を起動。
【スキル[感覚共有][意思伝達]を起動、代行者の制御により覚醒しました。】
〔エルム、エルラ。試しに俺と感覚共有、意思伝達を使ってみてくれ。〕
おぉ、エルム、エルラの主観的な情報が来る!
五感と2人の考えてるイメージとかがわかる……これは凄い、凄過ぎる。感動だ。
人間の町の偵察とかさせてみたいが、エルム達の意思を尊重してからだな。
読み取れるのは浅い部分で、意思が抑えつけられてるかどうかはわからないな。
「すまん、少し頭が痛い。」
「同じく。」
〔す、すまん。〕
そうか、感知系の範囲に俺と誤差があるなと思ったら、処理能力の差か。
双方向みたいだから、相手に送ってもらうだけでこちらの感覚送信はカットだな。
「袋はこんな感じですか?」
〔良いね。〕
大きな巾着袋みたいだ。紐は布もどきをより合わせて作られている。
うん、少し荒いのは後々材料を加工したり道具を揃えたら改善されるかな?
エルラの思い描いてたイメージよりは粗末だから、妥協したんだろうな。今は緊急時だし。
刀の方は……こっちも形になっている。模様も何もないし、荒削りだけど許容範囲内。
でもイメージは貰ったから、代行者に処理させたらもっと良くなりそうだ。
〔エルム、ちょっと俺がやってみていいか?〕
「はい。」
代行者Go!
…………………いやーやり過ぎ。
東洋風の刀だね〜。俺の日本刀のイメージも混ざってないか?
エルムなんか、え?俺の努力は?みたいな顔してるよ。
マジでごめん。代行者の制御が思ったより凄いみたい
。
〔……鋳型はこんな感じか?〕
「……後は材料ですが…」
よかった、流石エルム。立ち直りが早い。
材料ね、勿論考えてるよ?
〔エルム、もう一回登って鋳型の刀より一回り大きい枝を選んでくれ。〕
「……わかりました。」
ある程度上でウロウロしていたが、エルムが選んだ枝を蒟蒻ぐらいの固さに部分軟化!
〔その枝を千切って持ってきて。〕
軟化させてるから簡単だったみたいだ。もう驚かないな。
「これをどうすれば?」
〔鋳型の上に置いて挟んでくれ。〕
上と下がズレないように、土魔法で6本の柱の補助をしてと。
よし、後は
その枝を軟化最大!魔素を大量投入!
ぐにゃあ。
うわー、鋳型からはみ出してる木がゲル通り超してゾルだな。もう液体に近い、 茶色の液体な。
次は上から均等に軽く抑えてから枝を蒟蒻の固さに硬化で戻し、上の鋳型を外す。
うん、刀の形からビロンビロン伸びて気持ち悪いなー。
いらない所は切り取って、細かい所はエルムに任せる。
仕上げに、これでもかと言うぐらい魔素を練り上げて硬化最大!
はい、魔素をふんだんに使用した刀もどき完成!斬れ味は知らん。
〔まあ、木刀みたいなのが出来たから使ってくれ。〕
「はっ。ありがとうございます。」
エルラには……枝を少し加工して、杖もどきに。
「ありがとうございます。」
心苦しいな。
実を言うと、エルラには本当にすまないが何も思いつかなかったんだ。
さて、治癒の実を巾着袋に入れたし。
〔エルム、エルラ。感覚共有と意思伝達で随時報告できるか?〕
「問題ございません。」
〔そうか、では行って来い!〕
「「はっ!」」
2人は軽々と木から木へと素早く移って、見えなくなった。
頼むぞー。さてさて、上手くいくかな?
お読みいただきありがとうございました。