005 遭遇
主人公の耐性を訂正しました。
状態異常耐性→精神異常耐性
とうとう生き物と出会います。
あ↓ーあ↑ーはってし↓な↑い↓ー♪
絶賛熱唱中。
いやー暇のなんの。
目の前には遊びで作ったトーテムポールがあります。
ここまで作るのに苦労したなぁ。
朝昼晩とここ数日頑張った。
風魔法を駆使して、削っては失敗削っては失敗。
そして出来たのが!
高さ25m、幅30㎝ぐらいのトーテムポール!
今度はしっかりイラスト彫りました!
……何をやっとるんだ俺は。
魔法の練習になるからこれはこれでいいんだけどさ。
あーひまだひまだ、ひますぎて溶けそうだ。
いっそのこと[軟体]で本当に溶けてしまおうか?
移動する手段があったらなぁ。
ゲームとかに出て来る樹木人ってどうやって動いてんだよ。
あれか?生命の神秘か?
あいつらみたいなのがいたら即吸収だな。もちろん襲うタイプの奴で。
おい代行者。
何か暇つぶしになりそうなことないか?
【ユニークスキル[改造]を起動しますか?】
それはおまえがやりたいことだ。却下。
改造ってギャンブルみたいなものだよな、どっかに運上げのスキルってねーの?
そんなのあったらやってみてもいいぞ?
【今の権限レベルでアクセスし、解析した情報「四つ葉のクローバー」:スキル[微幸運]】
お。解析でこんなことも出来るのか。
というか、自分がやりたいことは積極的だなおい。
……幸運の四つ葉か。いいね、夢があるねー。
でも低級スキルみたいだから効果が弱いんだろうな。
あまり期待できないな。
それにしても、俺の周り殺風景だなー。
いや、俺が言う資格ないんだけどさ。
回復するのに任せるって言ったけど、良く考えたら俺がでかくなり過ぎて日光当たらねーわ。
生えねえ。生えねえの。
……もう俺の周り、池で良くね?
よし、もうそうしよう。できによっては動物が来てくれるかもしれない。
水魔法と吸収の出番だぜ!
まずは吸収で半径10mの土をごっそり。
次に水魔法で、スプラァァッシュッ!!
足りない水は吸収した土に含まれてた水で補いました。
……そんなこんなで魔素とか霊素を吸収しまくってるから結構強力になってんだよなー。
数分で立派な湖完成!
あとは土魔法で俺の所に来れる足場を作って終わりだ。
あー思い付きでやったけど、なかなか良くね?
何かこう、神秘的な感じに仕上がってるな。
よしよし、これなら動物とか寄って来そうだ。
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あれから何日か経ったけど全然来ねえ。
何?ハミゴですか?イビリですか?放置ですか?
水飲みにすらこねーの。
【スキル[吸収]の効果範囲が広がりました。養分吸収を行いますか?】
へー、今更だけど。対象をスキルだけに出来ない?
【養分吸収の対象をスキルに設定、発動します。】
出来るんかぁーーい!
もういいや、念仏でも唱えとこう。
吽ーーーー
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ーーーーーーーー
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ーーーーー
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悟りを開きました。
ただあるのみでございます。
カーンカーンカーンカーン バキッ パキパキ ズゥン
うん?遠くから何か嫌な音がする。
東からだな。
カーンカーンカーンカーン バキッ パキパキ ズゥン
段々近づいている、どうしよう?
明らかに木を切り倒す音だよな。
ーーーーガサガサ……ガサッ!
………人間…………………じゃねえ?!
姿を現したのは、老人のエルフだった。
えぇぇぇぇぇぇぇぇえ?いきなり?
森で一番会いたかったエルフさんだよ!
ヒャッホーーーーー!
………あれ?何か様子がおかしい。
エルフの服はボロボロ、怪我をして出血してる。
大分衰弱してるけど大丈夫か?
しかも、誰か抱き抱えている。
……………女の子のエルフみたいだ。
おい、おいおいおいグッタリしてる!
意識不明の重態じゃねーか?
老人は一瞬湖に驚いたようだが、恐る恐る近づいて水を飲んだ。
飲んでまたびっくり、途端に物凄い勢いで飲み始めた。
おいおい一体何がどうなってんの?聞いてみるか?
念話があるから問題ないだろうけど、面倒な匂いがプンプンする。
見捨てたくはないが、自分に対処できるかな?
ひとまず調べてみるか。まずはお爺さん。
ーー〈解析〉ーー
名前 : エルム
種族 : 耳長族
組成 : 元素80、魔素10、霊素10
種族スキル : [精霊の声]
スキル : [居合斬り][精神統一][指揮]
魔法 : [水魔法][土魔法]
称号 : [剣士]
耐性 : [物理耐性]
ふむふむ、エルフの剣士か。
カッケェ、メッサカッケェ。
でも残念だ刀が無い、というか壊れたのか?
とにかく女の子のエルフの治療で手一杯って感じだな。
………さっきから傷口に水かけてるけど意味あるのか?
…………………は?傷が塞がってきてる?
いやいや、エルフってそこまで凄かったか?
これは聞くしかないな。
一応、女の子のエルフも見てみるか。
ーー〈解析〉ーー
名前 : エルラ
種族 : 耳長族
組成 : 元素80、魔素10、霊素10
種族スキル : [精霊の声]
スキル : [降霊][作法][調理][裁縫]
魔法 : [火魔法][風魔法][光魔法]
霊法 : [風霊法]
称号 : [降霊者]
耐性 : [風耐性]
おー巫女、シャーマンか。エルフのお嬢様って感じ?
いいね。それじゃ念話使うか。
【代行者の制御下で念話を使うことを推奨。】
……翻訳機能がついたりするってこと?
【付きます。】
じゃ、それで。
ついでに感知も入れられるか?制御に問題無かったら頼む。
【了解。】
さて、
〔そこの君。〕
老人は驚き飛び上がって、臨戦態勢をとった。
だが、辺りを警戒するだけで全然こっちに気付いてない。
そりゃな、木が話し掛けてくるって、立場逆だったら俺だって信じられねーよ。
〔待て待て、落ち着け。
見た所、怪我をしているようだが何があった?〕
老人は気を張り詰めたまま、
「私の名はエルム!貴様は何者か?!姿を現し、名乗りでるがよい!」
なるほど、それはそうか。
〔失礼。俺の名はヘリス=ワルドという。
そして何処にいるかというと、君の目の前だ。〕
エルムはこちらを凝視する。まるで見えないものを見ようとして。
うーむ、これは戦術的に奇襲はありだな。
いや、それは置いといて。
〔違う違う、目の前にある木だよ。池の真ん中にある。〕
「貴様!私はやるべきことがある!ふざけとらんと姿を見せい!」
いやーそう言われても、隠れるどころか動けませんから。
〔いや、ふざけてないよ。俺は木さ。
そんなことより、彼女は大丈夫なのか?〕
「貴様に言われる筋合いはない。運良く、この池は高濃度の魔素を含んでおったから傷は塞がりつつあるわ!」
へー。この池作ったの俺ね。辿り着いたのは確かに運が良かったんだろうけどな。
〔魔素の濃度が高いとどうなるんだ?〕
「はっ、まず普通の動物は近寄れんじゃろ。魔素と共に生きる者にとっては恵みだがな。」
はい。動物が来ない理由が分かりました。
せっかく作ったのに凹むわ〜。
「だが、モンスターがおらんのが不思議じゃ。
もしや、そこにある奇怪な柱の所為か?」
老人が指差す先には、俺が作ったトーテムポールが。
え?まさかのトーテムポールの意外な効果?
モンスター除け?すげえなトーテムポール。
良くは知らんが、土魔法のポールの形みてアメリカのトーテムポール思い出したから作ってみただけなんだよなー。後で検証するから覚えとこう。
〔まあ、いいじゃないか。
急いでたみたいだけど、ここに居ていいのか?〕
「問題ない。人間共も、この濃度の魔素の中には入れまい。それに孫の治療が目的だったからの。」
人間?!
〔いや、本当に何があった?〕
「ふん。孫の目が覚めるまで応じてやるわ。」
あ、お孫さんですか。
エルムは少女の治療に戻り、警戒しながらも語りだした。
曰く、元々この森はエルフが守ってきた大事な森だそうだ。
エルフは御神木と呼ばれる木を大切にし、少し離れて囲むように集落を作っていたらしい。
過去形なのは御神木の力がここ何週間かで急激に弱まってしまい、聖域が崩壊。混乱で集落もバラバラになったからだという。
うん?御神木ってあの立派な木か?
「ここに来るまでに見てきたが、もう何の変哲もないただの大木じゃった。
少し前から加護が弱まり、人間共が近づけるようになってしまっていたんじゃがの。」
多分あってるか。
……おーい?代行者?お前何かした?
【衰退には関わっておりません。スキルの残滓は吸収しましたが。】
スキルの残滓、ね。それは後で聞くとして。
〔木を切り倒しているのは人間だよな?〕
「ああ、御神木とエルフという、奴等にとっての森の開拓の障害が2つ無くなったから、嬉々として乗り出してきよった。樹棲霊の棲家は森の西だしの。」
〔なるほど。で、バラバラになってもエルフ。
お前達は森を守るために戦って、ボロボロになったと?〕
「そうじゃ。だが、エルフは元々少数民族。
いくら森でこちらに分があると言っても限界がある。」
そうか。確かに人口の多い奴等に人海戦術をやられると、たまったもんじゃないよな。
「そして私は戦局が不利になったとわかったとき、早々に退却したのじゃ。戦線を変え、立て直す為にな。」
〔じゃあ、何で2人だけなんだ?〕
「先に言った重傷のエルラ、孫の治療をするために御神木を目指して進んでおったのじゃ。
しかし人間に見つかり、二手に分かれたのだ。」
解析の中にあった、光魔法というのがおそらく治癒魔法なんだろうな。
しかも、話しを聞いた限りでは治癒魔法では回復できない怪我を御神木は治すことができると。
御神木凄いのな。でも……
「御神木の力は失われてしまった。孫の傷は何とか癒えたが、目を閉じたままじゃ。
孫の目が覚めるまでと言ったが、本当はわかっとるんじゃ。
脳のダメージを治さぬ限り、2度と目覚めることはないと…」
エルムは静かに涙を流した。
しばらく、沈黙が辺りを覆った。
エルムは突然顔を強張らせて、
「じゃが、人間共には一矢報いてやろうと思う。この老い先短い命に変えても。」
おいおい、おいおいおい!お前も弱ってんのに!
〔勝算はあるのか?〕
「バラバラになった集落の者達をかき集めれば、行けるかもしれん。例え勝算が無くてもやってやるわい。」
気持ちはわかる。わかるけど、命を投げ出すのは早計だ。
というか、エルフが居なくなると俺も悲しい。
せっかく、初めて会えた生きる者がすぐに居なくなるのはいやだ。
しかし、俺って回復系の魔法ないよなぁ。どうするか。
…そうだ代行者、再生を他者に使用することは可能か?
【不可能です。】
畜生、もしかしたらと思ったけど残念だ。
【ただし。】
はい?
【相手の願いを叶える形ならば可能な方法があります。】
?
どう言うことだ?
【相手の承諾があれば可能です。】
なんと!
〔エルム、もし孫が助かるとすればどうする?〕
「ふん!そんなことある訳無かろう。
もしあったなら、悪魔に魂を売ってでもやってやるわい!
こんな命で救えるなら儲けものじゃ!」
なんか承諾してくれそうだ。
代行者、どうすればいい?
【スキル[果実]を起動しますか?】
……それが答えか?
もしや御神木のスキルの残滓ってそれか?
【……】
女神のノルマに沿った行為だから変なことにはならないよな?
信じるぞ?
【スキル[果実]を起動、代行者の制御により覚醒しました。】
スキル詳細を。
スキル[果実]〈ex〉
「治癒の実」・傷を癒す効果がある実。
「健心の実」・状態異常から回復させる効果がある実。
「契約の実」・契約者は主の能力の介入を受け、主は契約者の能力で強化される。*
*[女神の代行者]の信仰強化と併用可能。
なるほど。これならいけそうだ。
まずは治癒の実を試そう。
ーー〈果実・治癒の実〉ーー
実を完熟させ、
エルムに目の前に落とした。
〔まずはこれを試してみろ。〕
「これは?」
〔回復する実だ。〕
エルムは疑いつつも、恐る恐る手を伸ばした。
「これは……どことなく御神木の実に似ている……」
エルムは実を囓った。
すると、ハリのある肌、力強い魔素の活性化。
著しく元気を取り戻していった。
「おお…。」
おおう。エルムはびっくりしてるけど、これやった自分の方が驚いてるよ。若干若返ってないか?
「ヘリス様。是非、御助力賜りたい。」
いやいや、跪くのはやめて。あと様付けも。
さっきまで疑ってたのに、信じるの早いな。
まあ、この効果じゃ当然か。
〔問題はエルラさんに効くかどうか、だな。〕
これが駄目なら怪しい名前の実を試す必要がある。
大変気が進まないが。
「はい。」
エルムは実の果汁を口から注いだ。
するとエルムと同じく活性化し目を覚ました。
が。
「おお…エルラ。気分どうじゃ?大丈夫か?
皆が心配しとる早く戻ろうぞ。…………エルラ?」
反応がない。目の焦点が合ってないな。
この実。外傷には効果覿面だが、脳とかの損傷は苦手か。
治癒魔法よりは大分効果が凄いようではあるが、ね。
望み薄だけど、こっちも試すか。
ーー〈果実・健心の実〉ーー
……駄目だ。食べさせてみたが。
状態異常とは異なる、特殊な状態みたいだ。
くっそー……最後のあれを使うか?
「へ、ヘリス様。いったいどうすればよい、どうすればエルラは……?」
仕方がない、見捨てるという選択肢は俺にはない。
例え、死ぬより酷いことになったとしても。
ーー〈果実・契約の実〉ーー
「ヘリス様、これは?」
〔俺と契約をすることで、俺が直接相手を治せるようになるらしい。〕
「これならば、エルラを助けることが…」
〔ただし、何を誓うかは自由に決めるらしい。
しかもぶっつけ本番だから何が起こるかわからない。
それでもやるか?〕
「はっ。もとより覚悟はできております。」
〔決まりだな。次は、契約の内容はどうするか…〕
「恐れながら、私がヘリス様に忠誠を誓う。というのは?」
うーん、いけるか?
【……完治するには契約者に本人を含める必要があります。】
そうか。でも本人の意思確認がなぁ。
〔治すには本人とする必要があるみたいだ。〕
「そうですか……エルラ1人を……」
うん?
〔ああ、言い方が悪かった。
契約者に本人がいる必要があるけど、1人じゃなくて複数人でしてもいいみたいだ。
ただし、もう一度いうが何が起こるかわからない。
助かったとしても、エルラさんの人生にどの程度影響するのかもわからない。〕
「………エルラが助かった後、本人が死を望むときは私が責任を。
ヘリス様はお気になさらず、どうかお願い致す。
私共々、あなたに忠誠を誓いまする。」
そう言ってエルムに実を囓り、エルラの口にも実を入れた。
【契約を確認。これより契約の実及び、信仰強化を発動します。】
2人は眩しい光に包まれた。
名前 : ヘリス=ワルド
種族 : 木
組成 : 元素80、魔素10、霊素10
種族スキル : 「〈ex〉[吸収][光合成][硬化]」
スキル : ユニークスキル[改造]
スキル「〈ex〉[毒毒][糸][潜伏][再生][魔素感知][霊素感知][抗虫][果実][念話][感知]」[絶叫][超音波][夜目][軟体]
魔法 :[水魔法][土魔法][風魔法]
称号 :[女神の代行者]Lv.1
耐性 :[火耐性][熱耐性][水耐性][氷耐性][毒耐性][精神異常耐性][物理耐性][真空耐性]
お読みいただきありがとうございました。