表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

001 神様のおわす所

『ーーーきろ。』


 うん?


『起きなさい。』

 柔らかく響く女性の声。


 なんだ……母か。少し声が若いように聞こえるが、どうしてだろう?


『起きなさい!起きろっつってんだろこの野郎!!』

 思いっきり鳩尾を蹴られた。踵で。


「ゲフッ!?」

 な、なんだ??


「ごほっごほっ…………。」

 俺は痛みをこらえるようにしながら、薄く目を開けた。


『やっと起きた……』

 目の前には男にも女にも……いや、どちらかと言うと女に見える、緑の髪に黄色の瞳の人が立っていた。


「えっと、どちらさん?」

 本当に誰?


 その人?は一瞬キョトンとしたあと、俯いた。


「あの?」

 な、なんか肩が震えてらっしゃるようなんですが?


『神に向かってその口のききかたはなんじゃこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』


 飛び膝落とし蹴り on Mi・Zo・O・Hi

 名前は知らん。とにかく膝が鳩尾にめり込んだ。クッソイタイ。U=mghを利用した酷いやつだった。


「ゲホッゲホッ。」吐血。


『お、やり過ぎたか。消滅しては困るし、このぐらいにしておくか。』



 消滅?

 ていうか、受験終わって、家に篭って………なんでこんなところに??記憶がないな。初対面の人に二回も鳩尾を抉られる覚えもない。

 そんなことを考えながら、なんとか体を起こした。

 辺りを見回すと、部屋のように見える。普通と違うのは鉄板で壁が覆われており、窓に鉄格子がはまっていることか。

 どこの刑務所だと思ったが、もしかすると刑務所より酷いかも。


 何より………めっさ散らかってる。

 ごみ屋敷ですか?と聞いてしまいそうなほど汚い。

 でも、自称w神の座ってるソファ周りだけ綺麗だ。


『……今、失礼なことを考えたか?』

「いえ、滅相もないことでございます。」

 流石自称神、勘がいいな。

『……まぁいい、話をするからな。ていうかサッサと終わらせるぞ。』

「はい。」

 そうだ、今の状況は?


『まず、始めに言っておくと………お前ダセェなw』

 ………この人、いやこいつ神とか言ってるけど威厳も糞もねえ。神聖さなんか地に落ちてぼろ雑巾になってるよ?大丈夫か?

 しかも、状況説明より先に人を駄目出しってあれか?

 私の言いたいことを言って、サッサと終わらせるって言う意味なのか?


『緊張し過ぎて、結果が出せないって一番駄目な奴だろw。』

 いやいや、まだ続くんかい。

 しかしこれが男の声なら殴り飛ばしてるが、女の可愛らしい声で言われるとね……


『そしてお前は死んだ。』

 あ、唐突に入った。気まぐれ過ぎるだろう。


「え、そうなんですか?さっきから体がないのにボコボコにされて、ダメージある気がするんですが?」

 真面目になんでダメージあるのか気になる。


『ああ、魂を直接ボコった。だからあんまりやると消滅する。分かったか?』

 うわー神ぽいやつきたー、厨二っぽいし。


『ドジでマヌケで不運な糞野郎のお前は人を殺したが、殆ど事故だったから、地獄送りは保留にした。』


「えっ?人を殺した?地獄送り?」

 思いっきり罵倒されてるのはスルーだ。

 真剣に受け止めると色々壊れる。主に精神が。

『うん?ああ、そうだなこっち来い。』

 神は窓の方に寄って、手招きしている。


 ?


「いったい何………は?」

 俺は窓の外を見て、固まった。


 外には黒い大地黒い空をバックに、土下座している人を片足で踏んづけ、高笑いしている山羊頭の悪魔がいた……


「ワッハッハッハッハァァァ!!」

「許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さいーーーー」


 うわぁ……


『おい、そこのお前。』

「ワッハ、はい?」

『ちょっとこいつに、地獄についての運営状況を簡潔に話せ』

「かしこまりました。」

 悪魔は礼儀正しく一礼して、語りだした。


「えー只今の運営は魂の回収は悪魔、選別は閻魔様、懲罰はサタン様を筆頭に悪魔と鬼が合同で行なっております。あ、もちろん魂は罪人のもので、閻魔様が犯した罪に従い、罰をお決めになります。」

「平常運転は地獄送りですが、特例として更生を目的とした転生送りがございます。」

「地獄送りについては、八熱地獄と八寒地獄を合わせた16種の地獄いずれかに送られます。」

「転生送りについては先程特例と申しましたが、決定権は閻魔様になく神様にございます。」


『わかったか?』


「は、はい。」

 オンオフ違い過ぎる……悪魔の豹変のほうが驚きだよ。


『あ、お前。仕事はもっと向こうでしろ。』

「かしこまりました。それでは失礼致します。おら、行くぞ。」

 悪魔は再び礼をして、足を持って人を引き摺りながら去っていった。


 啞然としながら、遠ざかる悪魔の背中を凝視していると、

『おい、五月蝿いから窓閉めるぞ。』

「あ、はい。」

 他にも悲鳴が聞こえる…送られなくて良かった。マジで悪魔じゃねえか。

 それにしても俺も人を殺したのか……


『話の続きだが、お前は更生の余地有りと判断して転生送りが決まった。地獄には話を通してる、喜べ。』

「はい……」

 軽そうな罰になったのは正直有難いけど、その90°上から目線は止めて欲しい。

『喜べ。』

「はい。」言っても無駄か……


『ありがとうございますは?』

「……ありがとうございます……」

 有り難みが消え失せるよ。……まぁ助けてくれるみたいだし、感謝しよう。


『ただ、転生先で一つのノルマをこなしなさい。転生送りには必ず一つノルマが課せられる。』

 はい、ですよね。罰は変わったけど、人を殺したのには変わりない。あの男の人に申し訳なく思っている。しっかり償わねば。


『しかも、今回は私のために働いてもらう事になってるから、精々頑張れ。』

「いったい何を?」

 こいつのため?変なことにならないだろうな?今迄把握したこいつの気まぐれな性格だと、嫌な感じがするんだが?


『簡単に言うと生きとし生けるもの救済、だな。』

 あ、思ったよりまとも。ただ、人を救うなんて難しいこと俺にできるかな?

『まずは、[女神の代行者オルタネイティブゴッデス]の称号を与える。』


【称号[女神の代行者]を取得しました。】

「何ですか?この声?」

『あ?ああ、私の心の一部を世界のシステムに組み込んでるから、それだろう。自我はないようにしているから、あくまで通達だけだ応答はない。』

 あー所謂神の声ってやつ?すげぇな。神様に悪魔に神の声、そしてステータス。ゲームじゃねえか。

『あ、[女神の代行者]は声と構造似てるけど、自我のブロックはそんなにきつくしてないから、話しかけたら目覚めるかもよ?』

 うん?今、一瞬だけ邪悪に笑ったような?第一、能力と語らう?一体どこの引きこもりだ?


『もう少し、便利な能力をやろう。餞別だ。』

 うん、もらえるものは貰っておこう。


【ユニークスキル[改造オルタレイション】を取得しました。】


【スキル[念話]を取得しました。】


【スキル[感知]を取得しました。】


【耐性[火耐性]を取得しました。】


「うん?[改造]というのは?」

『それはな、私の大好きなスキルだ。』

 なんか、寒気が……これ以上説明してくれなさそうだ。

「他のスキルは?特に念話はなぜ?」

『あ〜、生きとし生けるものって言ったろ?人以外もよろしくな。お前の世界で言うところのファンタジーの世界だから楽しめ。な?』

 ほー、生きてる時にはのめり込まない程度にしっかり嗜んでいたけど、そんなこと言われると期待しちゃうよ?


『まあ、詳しい説明は代行者に任せた。転生させるぞ〜。』

 ああ、やっぱり説明投げるんだ……

 そう思っていると、神が俺の肩に手を置いた。

 そして視界が暗転した。


 次に意識が戻ったのは、闇の中だった。



 ………神っていうのは嘘じゃなかったのな、性格はマジでアレだけど……



 こうして、千歳慎也の魂は転生する。







 名前 : 彷徨う魂(仮)

 種族 : 霊

 組成 : 元素0、魔素0、霊素100

 種族スキル : 無し

スキル : ユニークスキル[改造オルタレイション

  スキル[念話][感知]

 魔法 : 無し

 称号 :[女神の代行者オルタネイティブゴッデス]Lv.1

 耐性 :[火耐性]









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ